駅前旅館 (新潮文庫)

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著者 : 井伏鱒二
  • 新潮社 (1960年12月15日発売)
  • Amazon.co.jp ・本 (219ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101034058

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駅前旅館 (新潮文庫)の感想・レビュー・書評

  • 堅気な商売のようだが実は江戸前の粋な世界に浸りながら、駅前旅館の番頭におさまる主人公の、活き活きとした立ちまわりを回想体の文章により表現した著者ならではの面白小説。
    まず、その語り口が「古き良き」昭和の旅館とその周辺を再現していて面白い。べらんめい調だったのが、語り調になったり、旅館の隠語がみだり飛んだりと変幻自在だ。
    ひとつの話も脱線して別の話になっていきそれがまた面白く、実はさっきの話の前振り話だったのかと戻ってくることもしばしば。なかなかついていくのも大変です。(笑)
    番頭仲間でつるんだりとぼけたりする話や、旅館の泊まり客の様子も面白いが、主人公の派手だが結局はしぼむ淡い恋愛模様もそこはかとなく彩りを加えます。数々の与太話!も微に入り細に入る説明でついつい笑みがこぼれてしまいます。(笑)
    話が唐突に終わったような感じだったが、もっと続いていても良かったな。

  • 表紙のイラストを見て、ほのぼの系なのかと思ったら、思い切り寅さんの時代でした。

    昭和30年頃の、上野駅前の番頭さんの語りを元に、旅館の仕事や観光業界の裏の世界を興味深く描いたもの。
    映画にもなったことがあるらしいです。

    慣れた番頭さんたちの、客引きや、お客の値踏み(ふところ具合や出身地)、困ったお客のあしらい方や、夜の遊び場所の紹介の仕方やら…
    面白かったのは修学旅行の引率の先生たちで…
    番頭さん同士のお付き合いも、ライバルであり、友人でもある関係が面白い人間模様。
    まあ、根無し草でやくざな稼業な感じもしますが、語り手の生野次平さんは、一本筋の通ったお方でもありました。
    生野さんは能登の出身ですが、仲間の番頭さんたちの語り口など、江戸っ子のべらんめえ口調が残り、時代を感じました。

  • 戦後間もない上野にある柊元(くきもと)旅館に勤める番頭生野次平の視点で描いた作品。
    当時の世相や、旅館業界の裏事情的なものも盛り込まれ、次平に群がる面々のキャラも豊かでおもしろおかしく読めた。
    近頃はビジネスホテルに取って代わり、呼び込みではなくネット予約と化している。もし、表紙のような旅館が存在しているのならば、改札を抜けた瞬間ほっとしてしまうだろうと思った。

  • 今は少し懐かしいものとなってしまった駅前旅館。私たちの世代からすると、古き良き時代の旅館、というイメージです。
    そんな上野駅ちかくの旅館の番頭がこの物語の語り部。

    この主人公の番頭、めちゃくちゃ女たらしの助平みたいな行動ばかりしていながら、じつはちょっと肝心なところでヘタレ。でもそのキャラがいい。何より、幼い頃からずっと宿屋と親しみがあるだけあって、宿屋の規律不文律がすべてしっかりと身に付いている。そういう、けじめがきちんとあるところが、お客や同業者になめられず敬意をもって接してもらえるゆえんなのだと思う。

    この番頭を中心とする「慰安旅行会」のメンツがなかなかの個性派揃いで面白い。このメンバーが集まるとたいていろくなことがない…というよくある話の典型は、昔からあったものなんですね。

  • 適当に、その場しのぎに近い人生を送る、宿屋の帳場人の話。お客さんを春場に案内し、ご相伴に預かったり、宿屋同士の隠語が出てきたり、面白い人は面白いと感じるのかもしれないけれど、女性の扱いもなんだか軽く不愉快だし、いまいちユーモアがぴんと来なかった。

  • 15/10/24、神保町・山陽堂書店で購入(古書)。

  • 主人公がいけすかなくて感情移入ゼロ

  • 昭和30年代頃を舞台に、駅前にある柊元(くきもと)旅館の番頭、生野次平が思い出話や番頭として旅館の裏話を独白するスタイルで進む小説。他の旅館から来るお客を伝える電報の符牒や、江の島の片瀬海岸での引き込みの様子など、人々の躍動感や当時の息吹を感じて面白い。また次平にかかわるよい関係の女性たちや、時に友人で時に好敵手となる他の旅館の番頭、団体旅行の添乗員とのやり取りも面白い。昔の芸者がやってくるときの色恋に発展しそうでしない様子や、番頭とのばかばかしいやりや剣呑なやりとりなど。

  • 初めての井伏作品。 教科書に出てくるような作家に気取って手を出す。 ルーキーズで川藤が号泣する山椒魚は読んだことない。

  • 駅前旅館の番頭が身の上話&その界隈を思い出すように語るスタイルとなっており、これが飄々としているというか、人間関係が感情的にもつれる旅館内抗争を俯瞰的に見つつ情緒的に描く様は、東海林さだおぽくもありますが、それ以上にレイ・デイヴィスに近い気がします。なぜなら少市民生活を語る本人もどこかうだつが上がらない風情を出しているからですかね。

  • 東宝「駅前シリーズ」の一作目となった原作、という興味だけで手にした一冊。堅いイメージの著者に似合わず、番頭さんの問わず語りに語られた業界独自の用語や裏話的エピソードが愉快。「東京オリンピック」以前の社会風俗を知る上での資料としても楽しく読める。

  • 最初 19771201

    観光業の可笑しさと面白さがギューッと詰まってます。
    その方面の方、
    仕事に疲れたら、これお薦めです。

  • (1966.03.31読了)(1966.03.31購入)
    (「BOOK」データベースより)
    昭和30年代初頭、東京は上野駅前の団体旅館。子供のころから女中部屋で寝起きし、長じて番頭に納まった主人公が語る宿屋稼業の舞台裏。業界の符牒に始まり、お国による客の性質の違い、呼込みの手練手管…。美人おかみの飲み屋に集まる番頭仲間の奇妙な生態や、修学旅行の学生らが巻き起こす珍騒動を交えつつ、時代の波に飲み込まれていく老舗旅館の番頭たちの哀歓を描いた傑作ユーモア小説。

  • タイムスリップした感じの読書体験が楽しい。

  • 市井の人と十把ひとからげで括るには難のある、灰汁のつよい人々を中心に、駅前旅館の番頭、女中の暮らしを描いたもの。
    前後して書かれた『珍品堂主人』でもお馴染みの、嘘か真か判然としない蘊蓄が並び、大真面目に読んでいると化かされたような心地になる。
    ペダンティックなお喋りが大好物という方にはお勧め。

  • 駅前旅館。見かけなくなりました。
    旅行の移動手段が鉄道中心だつた頃は、結構な数の駅前にあつたさうな。
    しかし中小の駅前は寂れ、一方大都市の駅前は大型ホテルが林立する時代になり、風情はなくなりました。
    駅前はビジネスホテルが全盛ではなからうか。ま、旅客が「旅館」より「ホテル」を好むやうになつてきたのでせう。実際ホテルは便利であります。

    またもや個人的な話。
    以前住んでゐた家の最寄り駅に、「F旅館」といふ駅前旅館がありました。外観を一瞥しますと、良く言へばまことに大衆的、悪く言へばぼつさい風体の建物です。
    北九州市小倉出身の英語教師であるK先生が、この土地へ来てまだアパートが見つからない間、このF旅館に投宿しました。先生が言ふには、部屋に座布団がなく、枕は破れてゐて、仕方がないので自分の枕を駆使したとのこと。
    数年後、この「F旅館」は、「ビジネスホテルF」と改称し、名称だけはビジネスホテルになりました。外観はまつたく変りません。しかし客は増えたみたい。
    一度ここで泊つてみたいと勘考してゐたのですが、何しろ自宅から徒歩15分ですから、その機会はありませんでした。そこへ、弟の友人が遊びに来るといふので、半ば騙すやうな形で一晩ビジネスホテルFを利用させました。結果は、K先生が泊つた時と全く同じ状態だつた...

    あ、この話に何の寓意も教訓もありません。

    東宝映画『駅前旅館』の原作といふことですが、もちろん森繁・伴淳・フランキーは登場しません。
    「柊元(くきもと)旅館」の番頭・生野次平による独白体で話が進められます。
    これといつた話の筋があるわけでもありませんが、魅力的な語り口で、戦後の駅前旅館を描写します。さまざまな隠語やしきたり、客扱ひの極意...哀愁を帯びながらもユウモワに満ちた作品ですね。
    とにかく読んでゐて幸福な気分になれる一冊であります。

    http://genjigawakusin.blog10.fc2.com/blog-entry-36.html

  • 駅前旅館の番頭さんが日常の風景を語る物語。

    ユーモラスでほんのりとしたお話です。
    文章も口語調で読みやすい。

  • 昭和の風俗を後世に軽い文章で伝える小説。

  • 軽快でテンポよいしゃべり口で、つまらなくはないと思うんだけど、『だからどうした?』そんな感想しか持ち合わせれない。
    ここでおわんの?と途中じゃねぇか?と思うような終わり方もあんましよくない。

    当時としても少し時代遅れであったろう感じがなんともいえずノスタルジーをかもし出している。そこが心地よい。

  • 昔風情の旅館の番頭が思い出話を独白調で語る。ドラマチックではないけどね、人生ってそんなものやろう、それでもなにもなかったわけじゃない。謙りつつも堂々と語れる生き方っていいと思う。

  • 戦後日本の風情と、登場人物たちのほのかな色気が詰まった一冊。
    駅前旅館の番頭さんを通して語られる世界は、あくまで彼の周りに起きたことや、旅館業界の風習がほとんどで、なんというか物語として細かい描写はあまりないのだけども、読んでいて風景が思い浮かぶようだった。
    特に何があるっていう話じゃないんだけども。こういうの好きだなあ。
    人間らしさ、日本人らしさを改めて感じて少し温かい気持ちになった。

  • とうとう我が愛する森繁久彌が逝ってしまいました。96歳で老衰といいますから大往生ですね。

    小さい頃から日本の古い映画も大好きでよく見ていましたが、ことに駅前シリーズ24本は、私にとっては寅さんや釣りバカ以上に親しみ深いものとして記憶の底にあります。

    駅前シリーズの森繁久彌と伴淳三郎とフランキー堺は、喜劇というものがどんなにすばらしいものかということを、骨の髄まで私に教えてくれた人たちでした。

    正直言って、その後、中学生で漫才に目覚め、高校で落語に開眼しと、お笑いの世界の拡張は著しいものがありましたが、これ以上のものにお目にかかったことがありません。

    あっ、それと、この本ですが、たまたま高校生の時に、原作が気になって手に入れてみると、それまで、どうも感じでは獅子文六っぽいと思っていたのが、意外や意外、なんと大作家・井伏鱒二ではありませんか、随分おどろいて、なんだか拍子抜けした覚えがあります。

    モリシゲは、私にとって最高の喜劇役者だったのですが、本人はシリアスな俳優を指向して、『夫婦善哉』や『警察日記』を境に、喜劇役者の名を返上してしまった感があります。

    あ、思い出しました、あと源氏鶏太原作の『三等重役』というサラリーマンものも面白かった記憶があります。

    ただ私は残念ながら、世評高い『屋根の上のバイオリン弾き』は、見苦しくて滑稽なだけだと思って、まったく評価しません。もっとも、あまたの有名無名の日本のミュージカルを見てきましたが、キャッツも宝塚もすべて失格、いまだ日本のミュージカル現われず、という気でいるのですからどうしようもありません。

    ともかく、モリシゲさん、お疲れさまでした、喜劇をどうもありがとう。

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