ひざまずいて足をお舐め (新潮文庫)

著者 :
  • 新潮社
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  • Amazon.co.jp ・本 (320ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101036120

作品紹介・あらすじ

SMクラブの女王様が、新人賞受賞の注目作家になった。親友、忍お姉さんが語る主人公ちかの世界は、ストリップ嬢、黒人に群がる女達、SMクラブの女王様と奴隷たちと猥雑だけど、なぜか不思議に澄みきっている-。夜の世界をあっけらかんと遊泳しながら作家となったちかの本音と過去の記憶を、恋愛についての様々な真理をちりばめながら綴る著者の虚構的半自伝小説。

感想・レビュー・書評

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  • SMクラブの女王様が、新人賞受賞の注目作家となった。彼女の親友である忍が、ちかとの思い出を語る。

    SMクラブで女王様として働く忍が、同僚であり親友であるちかとの思い出を語る形式で進む小説。
    語り手は忍ですが、主人公はあくまでちか。少し調べてみた所、自分の体験をちかに置き換えた著者である山田詠美さんの半自伝的小説、のようです。どこまでがフィクションでどこまでがノンフィクションだかはわかりませんが、私は私というぱきっとした意志が見えて印象的。
    インパクトのあるタイトルと、女王様の作家が~なんていう紹介文で何だか淫猥・スキャンダラスに見えますが、どちらかと言えば愛とは? 創作とは? 生きるとは?  、と思索に耽るような内容で哲学的です。

    口語体でつらつら語り掛けるような、特徴的な文体で書いてあるので。自分がその場にいて忍お姉さんの話を聞いているような、不思議な気分になりますね。

  • 以前読んだ『僕は勉強ができない』の方が読みやすかったけど、好きなのは『ひざまずいて〜』の方。

    SM嬢の話で、山田詠美の自伝的小説らしいけど、それはただの枠組みというか舞台装置のようなもので、内容は『僕は勉強ができない』と共通してる。
    『放課後の音符(キイノート)』や『僕は勉強ができない』が高校時代の山田詠美なら、『ひざまずいて〜』はその後という感じ。
    社会通念や常識とされてるもの、あるいは「世間」というものがもつ上っ面の気持ち悪さ、仮面のようなものに対して、「本当にそれは正しく美しいことなのか?」と、作者の目を通して語ってます。読み手側のパラダイムシフトを促すちゅうかさ。
    だから、山田詠美とかは若いうちに読んだ方が絶対に良いと思う。

    そう、たぶん「美しいか否か」ということなんだと思う。山田詠美の言葉で言うと「上等」なのかな。

    『ひざまずいて〜』の方が好きなのは、こちらの方が作品づくりについて語ってるから。作品が褒められること、また嫉妬すること。
    自分が映画や本を読むのは、そこからヒントのようなもの、火種のようなものを拾いたいからなんです。
    映画で言うと、ハリウッド内幕もの…はまたちょっと違うけど、監督の描きたいものが枯渇してっていう話のフェリーニの『8 1/2』とか、あまり良い例えのが思いつかないけど、ものづくりに対してどうやっているのか?というものを観たり読んだりしたいのです。そしてそういうものが面白い。

  • ストリップ小屋やSMクラブで一緒に働いてきた忍お姉さんが語る、ちかと過ごしてきた思い出。
    ちかは自分の体験だけではなく、忍お姉さんから聞いた話まで小説に書いてしまう。ちかの小説は新人賞を取り、その後に書いた小説で大きな賞も取る。
    一般の人から見たらスキャンダラスな過去、留置所に入れられた恋人のこと。ちかはバッシングを受けながらも、彼女の特有の感覚で笑い話にしていく。

    ---------------------------------------

    ちかが話した、ユミちゃんと木村くんの婚約祝いパーティーをした帰り道、木村くんが女の子をひき逃げしてしまった、というエピソード。
    忍お姉さんが中学生の頃、隣の家のお兄ちゃんが電気コードで自殺した、という思い出話。
    どうしても自殺したいなら事故に見せかけなきゃ、と言うちか。

    ちかが死に想いを馳せる様子から、きっとちかはもう死んでいて、忍お姉さんが亡くなった彼女のことを偲んで語っているんだろうな、と思いながら読んだ。
    結果、その推測は完全に間違っていて、ちかは作家として活躍を続けていく感じで話は終わる。ハッピーエンドだった。

    忍お姉さんは遺書を書くちかに対して、こんなふうに思っている。
    ”失いたくないものを沢山抱えてるってことは、彼女にとって、それだけ沢山のことを愛してるってことだ。自分が失うのも恐いけど、相手に自分を失わせるのも恐い。そんなふうに思っている彼女にとっては、やっぱり自分がもし死んだらって思うことは、本当に愕然とすることなのかもしれない。”(P264より引用)

    明るく振る舞いながらも、死について考えてきたちかは自殺を選ばないってことだろうな。
    刺激的なタイトルからして、エッチな話なのかな、と思ってしまうところだけど、小説を書くことや死について思うことなど、考えさせられる内容だった。哲学を感じた。

  • 私の人生のバイブル。
    ただのSM物語ではない。
    線を引っ張りたい名言がたくさん。
    持ち歩きたい一冊。

  • 山田詠美節炸裂w自伝的小説らしい。普段あまり知られていないSM界の事が垣間見えてその点ではとても面白かった。本当にあったの!?と思わずギョッとするようなプレイ有。偏見の目で見られしまいがちな職業だが、どんな世界でも汗水流して肉体労働している人たちが、切なくも愛おしく思える。一種の職業本だと思って読むと、一層楽しめるかも・・・?

  • 高校~大学の、
    自分の軸や価値観が全く定まらない時期に読んで
    強く影響を受けた作品。

    世の中の既成概念をそのまま受け入れるのではなく
    自分の頭で考えて、
    自分の両足でしっかり立って生きていくこと
    を教えてくれた。

  • 私が山田詠美のとりこになった最初の一冊。
    彼女のこと共感できるわりに、ストーリー忘れてた。。。

    山田詠美がストリッパーになって、SMの女王になって、作家になっていくまでの
    人生を主人公『ちか』っていうのに置き換えて書いてる半自叙伝。

    ストリッパーにSMの女王?
    なんていうともろ水商売だけど、それを恥じずに胸を張ってるとこ。すっごい好き。
    誰が作家になろうと関係ない。
    そんな当たり前のことなのに、世間は何故か冷ややかな目でみるんだよね~。
    やっぱり日本って考え方が狭いよね。

    私なんか、SMの女王が作家もしかも文学賞受賞者なんてかっこいいと思うよ。
    隠された才能を持ってる人って憧れる。
    どんな考え方してるのか、すっごい興味あるんだよね~。

    初め、この本を買ったときは本の題名に惹かれて買ったんだけど、
    改めて読み返すと、奥が深いよね~。

    それに、ほとんどが会話なのに、「」がついてないの。
    だからかなのか、エッセイ系にも見える小説。
    文字がぎっしり詰まってて読み応えあったわ~。

    私も山田詠美に共感できるから
    やっぱり旦那は外国人なのか~???
    旦那が外国人を貰うような人間だから、こういうことに共感できるのか。。。???
    わからないけども、
    これだから、彼女の本は好きなのよね。

    • 猫丸(nyancomaru)さん
      「半自叙伝。」
      好きだけど、それほど読んでいない山田詠美。
      知らなかったです(そして過激な経歴だからこそ、なのかな?って思っています)、...
      「半自叙伝。」
      好きだけど、それほど読んでいない山田詠美。
      知らなかったです(そして過激な経歴だからこそ、なのかな?って思っています)、、、
      2014/07/07
    • み~こさん
      好きなのに、私も最近は山田詠美の本読んでません。。。
      すごいタイトルですが、ぜひ読んでみてください。
      私もこの夏、遠ざかってた詠美さんの...
      好きなのに、私も最近は山田詠美の本読んでません。。。
      すごいタイトルですが、ぜひ読んでみてください。
      私もこの夏、遠ざかってた詠美さんの本読んでみようと思います。
      2014/07/08
    • 猫丸(nyancomaru)さん
      「ぜひ読んでみてください。」
      はい!
      「ぜひ読んでみてください。」
      はい!
      2014/07/11
  • 教訓じゃないけど、はっとさせられることが多い本だと思う。
    よい子の世界でしか育ったことのない人に読んでもらいたい。

  • 小説をとったらただのあばずれ

  • SMクラブの女王様が作家デビューするという、私が大好きなシチュエーションなのだが、肝心のSMや風俗の話が段々薄くなるのが寂しい。
    もっと赤裸々なオトコの欲望を作家目線で切って欲しかった。

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著者プロフィール

1959年東京生まれ。85年『ベッドタイムアイズ』で文藝賞受賞。87年『ソウル・ミュージック・ラバーズ・オンリー』で直木賞、89年『風葬の教室』で平林たい子文学賞、91年『トラッシュ』で女流文学賞、96年『アニマル・ロジック』で泉鏡花文学賞、2000年『A2Z』で読売文学賞、05年『風味絶佳』で谷崎潤一郎賞、12年『ジェントルマン』で野間文芸賞、16年「生鮮てるてる坊主」で川端康成文学賞を受賞。他の著書『ぼくは勉強ができない』『姫君』『学問』『つみびと』『ファースト クラッシュ』『血も涙もある』他多数。



「2022年 『私のことだま漂流記』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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