放課後の音符(キイノート) (新潮文庫)

著者 :
  • 新潮社
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  • Amazon.co.jp ・本 (224ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101036151

作品紹介・あらすじ

大人でも子供でもない、どっちつかずのもどかしい時間。まだ、恋の匂いにも揺れる17歳の日々-。背伸びした恋。心の中で発酵してきた甘い感情。片思いのまま終ってしまった憧れ。好きな人のいない放課後なんてつまらない。授業が終った放課後、17歳の感性がさまざまな音符となり、私たちだけにパステル調の旋律を奏でてくれる…。女子高生の心象を繊細に綴る8編の恋愛小説。

感想・レビュー・書評

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  • 最近ハマっている山田詠美さんの作品。
    放課後の女子高生を主人公にした短編集ですが、スウィートな雰囲気を感じながら、恋の素晴らしさを説くような素敵な作品でした。

    こうした女子高生視点の恋愛作品を読んでしまうと、自分が高校生の時、部活動をすることしか楽しみのなかった脳筋野郎だったことが思い起こされます。笑

    社会人となった今では、恋の繊細さや時にはドロっとしたカオスさなんかも感じられる年頃になっていると思ってはおりますが、多感な時期にこういう繊細でリアルな作品を読んで感受性を磨きたかったと反省します。

    さて、自分語りが多くなってしまいましたが、やっぱり山田詠美さんの比喩は素晴らしいです。身体に染み込むような表現力は時代を超えて、人々の心を魅了する、そんな風に思った一冊でした。

  • 何十年ぶりにか、再読しました。ケータイもインターネットもなかった、昭和の高校生たちの、様々な恋。あの頃意識されていた「ススんでる」か「オクレてる」か、ではなく、その子がその恋にどう向き合いたいのかが、ストーリーの軸に揺るぎなく据えられていることに、心を打たれたのでした。今読んでみて、それが全く私の中で変わっていないことにまた感動します。根源的な恋する思いが見事に語られているのです。

  • 私の恋が終わろうとしている、まさに今のタイミングで読んだからなんだろうけど凄く凄くひびいた。し、今の恋にあきらめがつきました。今、私のもやもやした言葉に出来なかった感情を全部言語化してあってすっきりした。中学生の時には、エロイなあってしか思わなかったんだけど・・・やっとこの本の登場人物たちに追いつけたかな。

  • 「恋をしたいと思っている人たちは、絶対に大人ぶる。ちゃんとした大人だって、自分を完璧な大人に見せようと思って、強がるだろう。けれど、恋をした人たちは違うのだ。お互いがお互いを子供に戻す。大人に包まれた子供になるのだ。でも、そんな素敵な恋の出来る人って、いったい世の中にどのくらいいるのだろう。」
    Red Zoneのこの部分が好き。分かるわ〜
    こんなにませた女子高生はいないと今では分かるけど、10代で出会っていたら間違いなくバイブルになっていた本だと思う。アンクレットや香水、つけちゃうだろうな…

  • 高校生の時に読んで、衝撃を受けた作品です。自分と同じ年齢の女の子達の物語なのに、全然境遇が違う。なのに、どっぷりはまってしまいました。カクテルが好きになったのもこの本のおかげだし、アンクレットや香水をつけたいと思ったのもこの本がきっかけでした。今でも読むとあの時のデパートの冷房の涼しさや売り場での場違い具合が思い出されます(笑)背伸びしてました。でも、全然黒歴史じゃなくで、あの時の私には必要な背伸びたったのだと懐かしく思えます。あの時の方が、いきいきとキラキラとしてたなぁ…。

    • workmaさん
      同感です。おんなじことして、妄想してました!
      同感です。おんなじことして、妄想してました!
      2021/03/14
  • 「トキメキがほしい。恋がしたい。」
    そう言った私に、会社の先輩が教えてくれた本。

    この物語の主人公たちが高校生だと考えると、
    なんとませた女の子たちなんだ、と思う人もいるかもしれない。
    実際、高校生だった自分自身が、こんなのあり得ない!と敬遠した記憶がある。

    ただ、なんてもったいないことをしたの!当時の私!と言いたい。

    ここに描かれているのは、
    とても素敵な女の子たちの物語。
    読んでいるだけで、甘い匂いが香ってくるよう。
    全8話。一話読み終わるごとに本を閉じ、物語を噛みしめながら読み進めた。

    恥ずかしながら、今30代だけど、
    この小説を読んで、こう感じるようになれただけ、
    高校生の自分よりは成長できているのだろう。

    解説の堀田あけみさんの言葉にも、背中を押される。
    「この物語に心を震わせることのできる素敵な人である限り、順番は巡って来ると思います。」

    毎日を大切に生きていこう。
    今は、恋に落ちる準備をしよう。
    いつでも恋に落ちることができる、その自信をつける時間なんだ。
    そう思える作品です。

  •  同じ作者の「僕は勉強ができない」と対をなす物語。
     17歳の時読んで、自分との差に愕然としつつ、外国に憧れるように、主人公「わたし」をとりまく生活に憧れたことを、今でも思い出す。「わたし」も、大人びた同級生に憧れ、少しずつ大人の世界に入っていく… 「男女」の違いか、「僕は勉強ができない」と読みくらべてみるのもおもしろいと思う。「蝶々の纏足 風葬の教室」も、学校生活の描写にドキリとさせられ、ヒリヒリ痛むけどここちよい。

  • 鮮烈な小説だった。

    17歳の女子高生を主人公や語り手にした小説集。
    彼女たちは大人と子どもの間にいる。
    さらに語り手は、同調圧力が働くクラスの女子集団とその外部との境界に立って、大人の「女」、本物の恋に憧れる。

    わずかな出来事を機に変わっていくこの年代の人。
    その感性の鋭敏さにはっとする。
    文体は今となっては随分クラシカルに映る。
    でも、恋愛(性愛を含む)をロマンチックなものと捉える価値観は、むしろ古典的なスタイルがふさわしい。

    この作品には、離婚した父と暮らす娘が三篇で出てくる。
    Sweet BasiとKeynoteの語り手は同一人物。
    あと一篇はどうかわからない。

    二つの小説の父親は、本物の恋に憧れる娘に、「いつ恋に落ちても大丈夫っていう自信のない女は、むやみに人を好きになっちゃいけない」と教え、いま、すぐに「愛している男の前で服を脱ぐことができるか」と問いかける。
    両親自身も「男であること」、「女であること」を、娘として早くに理解せざるを得なかった環境とある。
    日本の家庭としては珍しく、脱性愛化していないのだが、母親が全く出てこないのが印象に残る。
    母親との葛藤は回避されているのか?
    母がこの作品の中に出てきたら、作品世界が崩壊するのかもしれない。

    • workmaさん
      そういう見方もあるんですね〜 なるほど!
      そういう見方もあるんですね〜 なるほど!
      2021/03/14
    • gaacoさん
      あたたかいコメント、ありがとうございます。
      好き勝手な解釈なので、自分でもどうかなあ…と思いながら書いています。
      あたたかいコメント、ありがとうございます。
      好き勝手な解釈なので、自分でもどうかなあ…と思いながら書いています。
      2021/03/14
  • 恋をしたことがない高校生が(内面的に)素敵な大人になっていく物語。ラブストーリーではなくクラスメイトを通じて、物語が進むところが面白かった。

  •  17歳の少女たちを主人公にした8篇の短編小説集である。大人でも子供でもない年齢の恋愛や性愛に関する不安定でありながらも純粋な気持ちが描かれている。
     はじめはモチーフを一緒にした別々の話のように思えて、実は統一感のある内容であり、人間関係も同一の世界にあることがわかった。どの話も語り手にあたる少女はまだ恋愛についてもセックスについてもよく知らないが、一つ突き抜けている周囲の友達がもたらすさまざまな感情とか恋愛観といったものに触れて人生観が変わり始める、といった内容になっている。
     青春というものをどのように描くのかは様々な方法がある。少女の目から少女を描くというこの小説の方法はその一つだ。登場する男があまり現実感がなく、多分に理想化されているのも気になった。やはり語り手の視点からみるとこんなことなのだろう。

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著者プロフィール

1959年東京生まれ。85年『ベッドタイムアイズ』で文藝賞受賞。87年『ソウル・ミュージック・ラバーズ・オンリー』で直木賞、89年『風葬の教室』で平林たい子文学賞、91年『トラッシュ』で女流文学賞、96年『アニマル・ロジック』で泉鏡花文学賞、2000年『A2Z』で読売文学賞、05年『風味絶佳』で谷崎潤一郎賞、12年『ジェントルマン』で野間文芸賞、16年「生鮮てるてる坊主」で川端康成文学賞を受賞。他の著書『ぼくは勉強ができない』『姫君』『学問』『つみびと』『ファースト クラッシュ』『血も涙もある』他多数。



「2022年 『私のことだま漂流記』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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