ぼくは勉強ができない (新潮文庫)

著者 :
  • 新潮社
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  • Amazon.co.jp ・本 (288ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101036168

感想・レビュー・書評

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  • 7月27日にコロナ陽性となりました。症状は非常に軽いので、コロナ療養期間を積読本解消週間としました。

    主人公は高校2年生の時田秀美。勉強はできないけど外見が良く女の子によくモテます。サッカー部に属していますが、学校では何となく居心地の悪さを感じています。恋人はショットバーで働く年上の女性。出版社に勤める母親と祖父と3人暮らし。2人は秀美の理解者ですが、母親の浪費がひどく家は貧乏。本書はそんな環境の中で秀実が日々の経験を通して、何に悩み、何を考え、何を拒絶し、何を受け入れていくかを描きます。
    この文庫は3年前のブックオフで108円で購入。題名と値段が気に入っての購入でしたが、読み始めると夢中になってしまいました。
    これは登場人物全員のキャラが立っていることと彼らのセリフがイケてることが大きいです。

    好きなセリフは
    (母親) 「過去は、どんな内容にせよ、笑うことが出来るものよ」
    (秀美) 「幸福に育って来た者は、何故、不幸を気取りたがるのだろうか。不幸と比較しなくては、自分の幸福が確認出来ないなんて、本当は見る目がないんじゃないのか」
    (祖父)「馬鹿者!!演歌のような台詞を口にするな。私は演歌が大嫌いなのだ。私は、貧乏という試練は甘んじて受けるが、貧乏臭いのはお断りなのだ」

    本書を読んで思ったのは、自分はなんとつまらない高校生活を送ってしまったんだろうということ。
    (秀美) 「ぼくは思うのだ。どんなに成績が良くて、りっぱな事を言えるような人物でも、その人が変な顔で女にもてなかったらずい分と虚しいような気がする」
    はいはい、そりゃそうでしょうよ(笑)。

    初めて読んだ山田詠美さんの本。期待以上の面白さでした。ブックオフの110円コーナーで見つけたらマストバイです。

  • 出だしは先生が異常だったけど、その後は主人公がひょうきんで面白かった。賢者の皮むきがお気に入り。山野舞子の生き方、考え方も好きだし、対立する時田秀美の考え方も好きだが、時田は年の割に達観しすぎだ。
    でも羨ましい。

  • 子供目線の二通りの教師像、大体どこの学校にもこういう先生いるのかな?
    何か違うって年とるとともに面と向かって言い出せなくなる

    結構夢中になって電車降りそびれました

  • 社会的価値観に囚われない高校男子が主人公、教師等大人に対して歯に衣着せぬ物言いが爽快!

  • ずっと積読だった本。教師ってエゴな仕事だよなって思ってた自分にとってめちゃくちゃ影響力のある本だった。教師、そして教師になりたい人、親になる人に絶対に読んでほしい。
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    秀美が読者好きになった理由がめっちゃよかった。
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    時代のまっただなかにいる者に、その時代を読み取ることは難しい。叙情は常に遅れて来た客観視の中に存在するし、自分の内なる倫理は過去の積木の隙間に潜むものではないだろうか。

    私はこの本で、決して進歩しない、そして、進歩しなくても良い領域を書きたかったのだと思う。大人になるとは、進歩することよりも、むしろ進歩させるべきでない領域を知ることだ。

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    お父さんがいないって思うために心が痛いってのと。先生、三角形の三つの角を足すと百八十度になるでしょ。まっすぐです。痛い角が三つ集まるとまっすぐになれるんです。六つ集まったら、三百六十度になるんだ。まん丸です。もう痛い角は失くなってしまうんです。ぼくとか赤間さんとかは、もう一個目の角を持ってるんだ。他の人よか早く、まっすぐやまん丸になれるんです。

  • 高校生の気持ちを描いた青春小説か〜うんうん、って読み始めたけれど、半分超えたあたりから21歳の自分の心を揺らす言葉が連続でやってきて読み終えるとふらふら。今読めて良かった。卑屈にならずに他人をその人として見ることができるようになりたい。
    〜〜〜
    「しかし、しかしだよ。こんなふうに、ぼんやりと電車に乗って、春が来たと思うのは、ささやかだけれど、やはり、楽しいことなんじゃないのか?微笑を口許に刻める瞬間てのは、やはり、必要なんじゃないのか?他愛のない喜び、それが日々のひずみを埋めて行く場合もあると、ぼくは思うのだ。」
    「ぼくは、媚や作為が嫌いだ。そのことは事実だ。しかし、それを遠ざけようとするあまり、それをおびき寄せていたのではないだろうか。人に対する媚ではなく、自分自身に対する媚を。」「その内、人の視線を綺麗に受け止めることができる時期が、きっと来る。その時に、皮を剥く必要のない自分を知れれば素敵よ」
    「秀美を通した当たり前のことは、みいんな当たり前じゃなくなってるんだよ」
    「死にたくなければ、冷たくって味のない奴になるな。いつも、生きてる血を体の中に流しておけ」
    「いいかい、他人に可哀相という言葉を使う時、それを相手が望んでるかどうかを見極めなきゃ。たいていの場合、それは、相手をくじけさせる」
    「自分が何者でもないと思い知るのは、何にも増して清々しいと感じたのだった。」
    「話をしよう、と彼は思った。自分を今さら変えることなど、もう出来ない。けれども、とりあえず話をしよう。彼は、そう思った。」

  • 世間一般で言ういわゆる「常識的」な考え方を持たない高校生の主人公が、「常識的」な大人や社会に色々不満を抱き、その不満とぶつかりながらも、共感できる人たちに支えもらいつつ、なんとか自分なりの社会の役割を探し求める様を描いた短編集。

    ちょっと本の題名に興味をそそられつつ読んでみた本。

    主人公がすんごいひねくれ者で、その考え方が面白い。思春期ならではの可愛いらしい悩みに対してだったり、今の自分でも到底考えられないような高尚な悩みに対してだったり。
    何を隠そう自分も相当なひねくれ者なんで、読んでて「これ考えたことある」とか「ちょっと自分と似てるかも」とか思いながら読みました。
    もっとも自分はこんな勝気にはなれませんが。

    明確な結論がないこういうタイプの小説は結構好きです。

  • 青春学園もののつもりで読んだが、意外に心に響く時がある。

  • 大学一年生の時に読んだ小説。

    多感な時期に読んだ方が面白いです。

  • 老若男女問わず、人生のどの時期においても、何かに悩んでる時に読むべき本だと強く感じた。物事の見方、価値観、考え方について深く考えさせられる名作。ユーモアもあり、読みやすい。

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著者プロフィール

1959年東京生まれ。85年『ベッドタイムアイズ』で文藝賞受賞。87年『ソウル・ミュージック・ラバーズ・オンリー』で直木賞、89年『風葬の教室』で平林たい子文学賞、91年『トラッシュ』で女流文学賞、96年『アニマル・ロジック』で泉鏡花文学賞、2000年『A2Z』で読売文学賞、05年『風味絶佳』で谷崎潤一郎賞、12年『ジェントルマン』で野間文芸賞、16年「生鮮てるてる坊主」で川端康成文学賞を受賞。他の著書『ぼくは勉強ができない』『姫君』『学問』『つみびと』『ファースト クラッシュ』『血も涙もある』他多数。



「2022年 『私のことだま漂流記』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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