蝶々の纏足・風葬の教室 (新潮文庫)

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  • 新潮社
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  • Amazon.co.jp ・本 (215ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101036182

作品紹介・あらすじ

私の心を束縛し、私の自由を許さない美しき親友のえり子。彼女の支配から逃れるため、私は麦生を愛し、彼の肉体を知ることで、少女期からの飛翔を遂げる「蝶々の纏足」。教室という牢獄の中で、生贄となり苛めをうける転校生の少女。少女は自分を辱めた同級生を、心の中でひとりずつ処刑し葬っていく「風葬の教室」。少女が女へと変身してゆく思春期の感性をリリカルに描いた3編を収録。

感想・レビュー・書評

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  • 初稿があまりにも古い作品。
    わたしがまだ2歳くらいの頃、当時の母と同じくらいの年齢の作者は、この作品を描いた。それは昭和62年頃。
    いじめの内容が古いのも納得。作品自体が古いのだ。

    山田詠美さんの作品を、初めて読んだ。
    わたしにはうまく説明できない。だから、この作品の感想を表現するために、解説の言葉を引用させていただく。

    P211「新鮮かつ独特な肉体的感覚表現(五感と全身の皮膚で感じ取った現実感)」「たとえば男の体のある部分―胸なり手なり足なり踵なり―に魅かれ、そこから愛情が膨らんで行く、のような感情の形である」
    誰かへの慕情を描くとして、それが「新鮮かつ独特な肉体的感覚表現」で描かれている。つまり、エロいのだ。「新鮮かつ独特」というのは、句読点の打ち方やひらがなの使い方、漢字の閉じ開き、比喩表現なんかを使って、感覚へと訴えかけてくる。
    最近はSNSの普及で、様々な言葉遣いが溢れかえっているけれど、この繊細で美しい言葉遣いは、紛れもなく「新鮮かつ独特」である。
    その美しさはまるで、好みの人と、ふ、とすれ違った時にハッとさせられるような、そんな美しさだ。
    そして、それで言うと、「蝶々の纏足」で描かれる麦生と、「風葬の教室」で描かれるアッコ。彼らはきっと、学年一の美男子というわけではなく、主人公の感性だからこそ、それを魅力と感じ取れる何かを持っている、そこはかとない色気を纏っている二人である。

    その主人公は。
    P214「『蝶々の纏足』も『風葬の教室』も、主人公の少女は大変似ていて、それはほかの作品の大人の主人公たちにも通じる。要するに年齢に関係なくみんな大人で、個人的で、独自的で、生意気で、戦闘的でナルシシストだ」
    「蝶々の纏足」の瞳美も、「風葬の教室」の杏も、自分自身の感覚をとても大切にしていて、どんなに周囲からの負の圧力が強くとも、絶対にぶらさない芯の強さがある。

    より印象に残った「風葬の教室」は一人称で語られる作品だ。いじめを一人称で描くことで、強烈な臨場感を持たせてくる。だからこそ、そこで描かれる苦痛には、リアルな痛みが伴う。思春期の、自立と痛み。

    そして今日は、刺すように痛い寒さ。
    メリークリスマス!

    • naonaonao16gさん
      bmakiさん

      こんばんは!
      コメントありがとうございます^^

      そのように言っていただけて嬉しいです!!
      でも、この作品をちゃんと理解し...
      bmakiさん

      こんばんは!
      コメントありがとうございます^^

      そのように言っていただけて嬉しいです!!
      でも、この作品をちゃんと理解したりとか、落とし込めたか、と言われると、なんとも言えません…

      今年もお世話になりました!!
      来年もよろしくお願いします\(^o^)/
      2021/12/28
    • workmaさん
      naonao16gさん

      山田詠美に興味を持っているようなので、そんなあなたにおすすめを紹介します。山田詠美作品は多分ほとんど既読なので、そ...
      naonao16gさん

      山田詠美に興味を持っているようなので、そんなあなたにおすすめを紹介します。山田詠美作品は多分ほとんど既読なので、そのなかから若い方向けに紹介いたします。
      「つみびと」は、正直、自分は読んでてつらくなったので…(´;ω;`)

      自分の本棚のブックリストにも紹介してある本のなかから………

      「ぼくは勉強ができない」

      高校生の男の子(ひろみ)が主人公で、彼と彼の周りの人々と物語。主人公も魅力的、かつ、周りの人々も魅力的。愛すべきひとびとの物語です。

      「放課後のキー・ノート」

      高校生の女の子が主人公(ぼくは勉強ができないよりあとに出版)

      主人公は、どちらかというと地味な女の子。周りの人々と関わるなかで化学反応が起きて…徐々に…彼女がちょっとだけ不良?に…そして、魅力的に、なっていく…

      今の子が読めば、昭和の時代を感じ、古く感じるかも?ですが、

      高校生くらいの子が、学校で感じている気持ちは、今も昭和も それほど大きくは違わないかも…?

      と思ったので、おせっかいながら紹介させてもらいました(^o^;)

      興味があれば、どうぞご自由に~

      おせっかい紹介文なので、返信不要です(^ー^)
      2021/12/29
    • naonaonao16gさん
      workmaさん

      あけましておめでとうございます!

      山田さん作品のご紹介、ありがとうございます!
      長く活動している作家さんなのでたくさん...
      workmaさん

      あけましておめでとうございます!

      山田さん作品のご紹介、ありがとうございます!
      長く活動している作家さんなのでたくさん作品があり、何を読めばいいのか分からなかったので助かります!!

      実は、今読んでいる村田沙耶香さんのエッセイ(村田さんはわたしが大好きな作家さんです)に、山田さんの作品がかなりあり、こんな偶然も存在するのか!これは2022年まじで読んでいかないと!と、うずうずしているところでございます!
      もちろん「つみびと」も読んでいきたいです!

      おすすめありがとうございます!
      本年もどうぞよろしくお願い致します!
      2022/01/02
  •  17歳のとき「放課後の音符」「僕は勉強ができない」と続けて読み、その後本書を読んだ。衝撃的だった。今までにこういう物語を読んだことがなかったから。
     「風葬の教室」で、主人公の杏が、自分をいたぶる奴らを、心の中でひとりひとり潰していく姿………が自分と重なった。
     物語を通じて、自分の状況が「こういうことだったんだ」と理解できた。でも、理解できても現実はつらすぎて死を思わない日はなかった。そんな日々は長くは続かないと、大人になった今ではわかるけど、こどもの世界は狭く、1日は長い。
     今、つらい思いをしている人にこそ、読んでほしい物語。

    「今はつらくても、生きていれば、今の黒歴史をネタにできる?日が、きっと来るよ、だから死なないでね、…私は恋して別れて恋して仕事して恋して友達と遊んでHappy」
    と、著者「山田詠美の声」が伝わってくる小説… 
    少なくとも自分はそう受け取った。

  • これも内容はあまり覚えていないが、この作品は言葉で世界を書き換える力を持ったものの一つといえる。人はそれを狂気というかもしれないが、何一つなしえないとき、人は言葉で世界を変えるしかないことがある。

  • 「風葬の教室」は、おそらく私が今のところ人生で一番好きな短編であり、再読をあまりしない自分が唯一何度も何度も読み返している一編。

    杏は「軽蔑」という、自分をいじめた者を殺す方法を見出し、自分の中で、相手を人間にも足らない動物に貶め、じわじわ殺していく。
    そして自分の中の墓地に殺した者を風葬していく。
    殺した者に土さえもかけず、野ざらしにしておく風葬という葬り方を選ぶところも面白い。
    これによって、いつでも殺人を犯せる能力を手に入れた杏は、同時に強さも手に入れる。
    自分なりの対処法を見つけて考え方を一変することで、自分なりの生き方を見つけることは、あらゆる場面で自分を助けてくれる一種の救済法だろう。

    しかし、それらを包む滑らかな文体、どこか色気の漂う世界観、これが何度読んでも、読むたびに震える。

    作品の解説をされていた吉本由美さんの言葉にとても共感を覚えたため一部借りると、山田詠美さんの作品は、普通の人では無意識のうちに感じて、気に留めず通りすぎてしまうような細かな感情、それらをクローズアップして魅惑的な世界が作り上げられている。山田詠美さんの作るその魅惑的な世界がとても好きだ。

    • workmaさん
      山田詠美さんの作品の書評、的確な表現で すごいなとおもいました。
      「軽蔑」という手法…子どもの頃よく使ってました…小学校で いじめに合い...
      山田詠美さんの作品の書評、的確な表現で すごいなとおもいました。
      「軽蔑」という手法…子どもの頃よく使ってました…小学校で いじめに合い、他者から攻撃されて傷ついた自分の心を守るために。(^o^;)
      教室では読書に「没頭していて暴言は聞こえない」ふりをしました。
      山田詠美さんも、親が転勤族だったため、転校が多く、そのなかで「いじめ」対処法を見つけていったんでしょうね。山田さんが死ななくてよかった!亡くなっていたら作品を読めません…
      何が言いたいかというと…辛い体験も作品に昇華できると、読者も救われる…読書って、いいな!こうやって見知らない人とも交流ができるって、すばらしいなぁ…と思った次第です。
      失礼しましたm(。-ω-。)m
      2023/03/21
  • 本書に拍手を送る読者は多いだろうから(特に女性)、また拍手を一つ付け加えるだけになるだろうけれど、思春期の少女を描いた小説として、これに勝る小説(集)をちょっと思い出せない。
    本書を一言で言い表すなら「孤高」。
    学校にすら漂う、いや、学校であるからこそ厳然としてある「世間」というものを軽蔑しながら、自分の好きな男を追い求める少女の超然とした態度が何よりもとうとい。
    「風葬の教室」での、死なないという選択をする少女に、身震いするほど感動した。

  • 少女が主人公の物語全3編。地の文多めの印象。
    繊細な心理描写やが読み手の感情を揺さぶる。
    古い作品とはいえ、一定数の「もと少女」の女性の心を鷲掴みにすると思われる一冊。

    蔦屋書店の企画で、辻村深月さんが愛読書として
    挙げられていたのをキッカケに読みました。
    まさに辻村深月さんの数々の作品の原液となって
    いるような、若い少女の感性が色濃く描かれた、
    とても粘性のある本でした。
    幼い頃特有のイジメは、本当に恐ろしいですね。

  • 蝶々の纏足
    纏足は、古代中国で女の子の足がこれ以上大きくならないように施されていた風習。当時は足が小さい子が可愛らしいとされていたらしい。
    纏足、の意味を調べてゾッとした。可愛い可愛いえり子の本当の心はどこにあったのか。えり子は瞳美のことが本当に好きだったんだと思う。幼少期から思春期に移り変わる時期の、自分でもコントロールできない自己顕示欲と羞恥心と、愛情と嫉妬と支配欲が大爆発した2人。瞳美はそのエネルギーが男に向いただけのこと。少女って、見た目以上に残酷な心を持っている。

    風葬の教室
    クラスの女子の嫉妬からいじめを受け出した転校生の杏が、心の中で1人ずつクラスメイトを殺していく。後半までほぼいじめ描写でキツかった。子供は残酷。杏の世界の捉え方が、大人びすぎて、だからこそ周りはそれが気に入らない。死のうとした時に、お母さんとお姉ちゃんがしてる明日杏にシュークリームを作ってあげようって会話を聞いて死ぬのをやめたの、尊い。少女にとってこの幸せがどれだけ重要か。女の子って嫉妬とか生理とかほんとにめんどくさい。でも女の子だからこそ、男に抱かれることの幸せを知れたり、意中じゃない人をドキっとさせたり、泣き真似をしくしくすることができる。

    こぎつねこん
    けっこう意味が分からなかったけど、本当ならこわいものが、世の中にはある。

    山田詠美、僕は勉強はできないとはひとあじ違って、少女の残酷さと美しさが山田詠美の語彙で見事に描かれててよかった。

  • 危うく、静かに、付き纏う。
    幼少期に初めて知る「人を好き」という気持ちは、
    実はとても不可解なものなのかもしれない。

  • 憎しみって感情はすごく魅力的。
    憎しみに突き動かされてどんどん魅力的に進化していく少女たちに魅せられてしまいます…

    「アンタ達とは違うのよ」と思った時に「女の子」から大人の「女」に変わるのかな。
    早熟な子は周りとタイミングがズレてるから余計に強くそう思うんだろうな。

    10代〜20代前半って「友達だよね」って言いつつも心の底では「負けたくない」って思ってたし、自分と違うタイプの子とかミーハーな子を馬鹿にしてたけど、
    20代後半からは色々と受け入れられるようになってきて「みんなちがってみんないい!」って心から思えるようになってきて、
    遂に30代になると若い女の子たちに対して「みんな可愛いなあ。がんばれ〜!」って思える…

    個人的には、若いときの自分に戻りたいって全く思わない。気を張ってて疲れるし、痛々しくて…
    でも成熟途中のあの人生で最も(見た目が)美しい時期ってトゲがあるから美しいのかな〜なんて思ったり。
    憎しみが作り出す美しさって、愛情が作り出す美しさとまた別の美しさで、あやうい感じがするから余計惹かれちゃうのかも。

    女性って生理、出産、更年期、閉経とかで身体が分かりやすく変わるから、男性よりも余計にそういう進化段階みたいなのが意識させられちゃう。(男性ってどうなんだろう?永遠の少年みたいな人ってやっぱりいるのかな?)
    もう一段階前の自分には戻れない寂しさもあれば、進化していく喜びもあるし。
    どの段階の自分であっても今を楽しんでいたいなあとは思うし、そういう女性はやっぱり素敵だと思う!

    話がずれたけれど、「思春期の女子のあやうい魅力にやられた!」っていう話です。

    「蝶々の纏足」では主人公の瞳美がえり子への憎しみを糧に、女としての魅力を纏っていく話で、それだけでもう十分面白いのに、最後実はえり子は…っていうところで更に畳み掛けてくる…
    少女たち、闇抱えてる…

    「風葬の教室」はいじめられて自殺しようとしていた杏がふと聞いてしまった母と姉の何気ない会話によって「生きなきゃ」って思うシーンがすごく好きで、
    母と姉の会話もむしろ下品なレベルの会話なんだけど、そういうところにこそ自然と存在する家族への愛情みたいなのも良いし、
    それを聞いて「生きなきゃ」って「責任」に昇華できる杏もすごいし、
    そんなこと経験したらクラスのいじめっ子たちなんて屁でもないなって。
    杏が進化した瞬間は感動的でした。
    そしてお姉ちゃん…カッコいい…めっちゃ好き。

    • workmaさん
      ゆきのさん
      「風葬の教室」いいですよね!教科書に載せてほしい!ってくらい、いじめなど人間関係に悩める生徒さんに おすすめですね
      ゆきのさん
      「風葬の教室」いいですよね!教科書に載せてほしい!ってくらい、いじめなど人間関係に悩める生徒さんに おすすめですね
      2021/12/26
  • どこかで「同年齢の人たちとは違う」と感じている少女の、少女から大人へと変化していく思春期の物語。
    側から見たら自意識過剰でナルシストで、内面の欲求が渦巻いている感じ。
    多くの人が思春期に持っていたであろうその「人間の内側」を、色濃く描いていた。
    私にとって、衝撃的で忘れられない一冊となった。
    図書館でふらりとたまたま手に取った本だったが、改めて自分で購入したいと思う。

    『蝶々の纏足』
    読み終えてから、この物語をどう消化したらいいのか分からず、次を読み始めるまで時間がかかった。
    途中、気分が悪くなるような場面も所々あったが、それを上回るくらい瞳美の思考に引きずり込まれていった。
    えり子への黒い感情は、恋人・麦生の体に触れている時にだけ消えてくれる。
    そうやって瞳美が麦生の体や雰囲気に惹かれていく様子は、えり子よりも早く大人になっていく自分にうっとりと酔っているように見えた。
    自分のことを「早熟だ」と思っている瞳美を見ていると、逆に自意識にとらわれているように見えて、なんだか苦々しいような気持ちにもなる。
    瞳美が抱いていたえり子に対する憎しみや憐れみを本人に明かした場面が、とても印象的だった。
    人間が抱くぐちゃぐちゃな感情を目の当たりにしたような感じがして、心にざらざらとした傷痕をつけられたような心地だった。

    『風葬の教室』
    転校の多い杏は、吉沢先生のことが好きな恵美子の言葉で、転校先でいじめにあってしまう。
    いじめの場面や、担任の先生までいじめに加担する姿はとても酷く、読んでいて胸が痛んだ。
    しかし杏は「軽蔑」という方法で、心の中でクラスメイトを殺していく。
    その姿は逞しくもあり、危うくもあった。
    教室の中でただ一人違う空気を持っていたアッコくんの存在が気になった。
    杏は小学生にしては大人びた思考をしており、文体の「です・ます」調によってそれをより強く感じた。
    読んでいて気持ちの良くなる物語というわけではなかったが、文章に引き込まれる魅力があった。
    衝撃的な作品だった。

    『こぎつねこん』
    幸福を感じる瞬間に恐怖が湧き出て、わあと叫びたくなったり涙が出たりする主人公の気持ちは、私にも分かる気がした。
    もしこの幸せな時間が失われてしまったら、もし幸せな時間から自分がいなくなってしまったら……。
    そう考えると、恐怖と不安に押し潰されそうになるのだと思う。
    一度愛情に包まれることを知ってしまったら、そのあとにやって来る孤独はさらに大きく深くなってしまうのだろう。

  • 憎しみを結晶化させる。
    引き出しの中で行ったり来たりしてカラカラと音を立てる。

    中高生の時に読んでいたら、どんな学生生活を送っていただろう。あの時、あの感情を山田詠美さんの言葉と共に過ごしてみたかった。

  • 著者の根底に流れる、呑気な家族への愛。
    安全基地があるっていいよなあ。
    性愛だけでなく、子どもを書くのも上手い。

  • 最初に読んだのは確か中学の頃。当時衝撃を受けて、大人になった今でも一番好きな作品の一つ。読書好きの同級生にお勧めの本として貸したものの、たぶん楽しいお話を期待していた同級生の心を抉ってしまった1冊。

    表題の話はどちらもとても良くできていて甲乙つけがたい。無駄な文章が一つもない。
    蝶々の纏足は両方の人物に共感できる部分がある。カタルシスがあるのでエンタメ小説としても楽しめる。読むたびにこれはこれの比喩になってるんだと新たに気付かされる。
    風葬の教室は小学校の狭い人間関係の中でいじめが発生する過程を丁寧に書いている。吉沢先生は最初読んだ時めちゃくちゃ腹がたった記憶があるが、今あらためて読むと逆に好感を持った。
    心に刺さるのは 風葬の教室>蝶々の纏足

  • 蝶々の纏足
    女子同士の依存関係が生々しかった。
    幼馴染で学生という狭い世界での共依存。
    成長するにつれて、人間関係は変わっていくから、その関係からの別離もあるよねと再認識。

    風葬の教室
    クライマックスが清々しい。
    こんな事言うのは学生のセリフだろうけど、
    先生って何にもわかってない!!笑

  • 少女から女へかわっていく、サナギが蝶々になる瞬間をとらえたような三編。
    こういう大人びてませた少女の話大好きです。
    パーツから欲情していく描写がたまらない。

    【蝶々の纏足】
    処女のうちから男の熱を知っている少女。
    はやく大人になりたいと願う彼女を自分の引き立て役のように扱い、彼女が大人になることを阻止せんとする美しいえり子。
    蝶々の纏足というタイトルがとても甘美で素晴らしい。
    麦生をみつけ、誘惑するかのように視線をおくり彼の指を下の上に置く瞳美の立派な女としての振る舞いには、嘆息するほどドキドキした。
    ラストの大人になった瞳美と叔父との会話で、しかしこの物語は一変する。
    瞳美の物語から、えり子の物語となった。
    幼かったえり子の不器用な愛情。えり子に強いられていた、それはどこまでも純粋な纏足だった。

    【風葬の教室】
    家庭の事情で転校をくりかえす杏。
    その整った容姿と可憐な存在感は人気の体育教師をも虜にし、望まぬひいきをされるようになる。
    妬んだ学級委員の恵美子がクラスメイトを誘引し、杏は虐げられ孤立していく。
    子供でいることの窮屈さを思い出した。単純で、くだらない、子供。
    そういう存在が許されてしまう教室という檻。
    もどかしくてならなかったけれど、そこにひとつ、よりどころのように存在するアッコという少年がいた。アッコと杏は教室にいるたった二人だけの大人だ。
    たくましく凛とした彼らの手で、教室なんてどんどん風葬にしてしまえばいい。

    【こぎつねこん】
    孤独、という言葉を知る前から、孤独とはどんなものなのか肌で知っていた。
    幼い頃から母がうたってくれていた「こぎつねこん」の子守唄。
    愛情の証であるようなその子守唄からは、いつも孤独が見え隠れして、彼女の孤独を刺激した。
    彼女は、いつどれほど幸福であっても、彼女だけの孤独を永遠に大切にしていける。

  • 少女が女になる、この時期の複雑で湿っぽくてナルシストっぽい感性が描かれている。すっごく好き、こういうの!
    登場してくる少女はみな幼くて賢い。でも、誰もが一度は考えて、悩んだ経験のあるものばかり。私も同じようなことを考えていたが、それは中学生だったころだ。
    「みんなはキャッキャはしゃいでて、何にも考えてない。私は違う。私はみんなより全く大人。私みたいに考えたり、感じたりする同級生はいない。みんな子供。早く大人の世界に行きたい。」みたいなこと思ってて(笑)、ナルシストっすね~。今はもう、似たようなことを皆考えてきて、今も同じようなこと考えてるって分かったから、変に気取ったり、軽蔑したりしなくなった。成長したなぁ~(笑)。
    女の子なら必ず通る道だから、読んでて共感しっぱなし。なんか嬉しくなった。

  • 風葬の教室。
    いじめられている主人公が、遺書を書いたあとに母と姉が自分のためにシュークリームを焼こうかと話している会話を聞いて思いとどまった場面が印象的だった。周りの人の日常に自分が当たり前に組み込まれていて、自分がいなくなるとそれが回らなくなるということに気づいた瞬間。

    自分の心の中で相手を殺すという一つの対処法、小学生が会得するには悲しい方法だけど、彼女が乗り越えるために必要な手段だったのだ。
    この作品を通して救われる人も少なからずいるだろう。

  • 「蝶々と纏足」
    えり子の母親は、きっと姉なのだろう。
    歪んだ家庭で生きてきたえり子。そこに瞳美が現れる。小川の遊び場は、えり子にとって唯一息ができる場所だったのではないだろうか。
    それが小学生になっていくと、瞳美が離れていってしまうことに気づく。それに強烈な羨望と嫉妬があったはず。えり子もきっと瞳美を憎んでいた。
    でも、憎む裏側には、瞳美にどうしようもなく惹かれる自分がいることにも気づいていた。
    瞳美もきっと、どうしようもなく惹かれていたのではないだろうか。最後に叔父から知らされて、立っていられなくなるほどに。

  • 「蝶々の纏足」
    センスある都会的な親の描写絶妙すぎる。黒や紺のセーターに赤い靴下、サルトルなど、、
    冒頭良すぎて家かえりたくなった!

    「風葬の教室」
    最後ちょっと「10月はふたつある」ぽさもある
    若いから、とかそんな単純な理由だけではなくて、
    いまの現実は、逃げることの出来ない世界であることが描かれている感じ。。
    「逃げられない」と思える理由がやっぱり愚直で、少女って感じ

  • 「蝶々の纏足」
    えり子ひどい。
    でも最後の最後で、えり子は瞳美のことを本当に友達だと思っていたんじゃないかな?と感じた。
    どうなんだろう…。
    麦生に対する表現がさすが山田詠美。所々痺れる。

    「風葬の教室」
    恵美子みたいな女子いたなー。
    杏ちゃんかっこいいよ。
    軽蔑っていう殺し方もあるんだな、なるほど。
    辛いことがあってどうしようもない時に読み直したいと思った。

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著者プロフィール

1959年東京生まれ。85年『ベッドタイムアイズ』で文藝賞受賞。87年『ソウル・ミュージック・ラバーズ・オンリー』で直木賞、89年『風葬の教室』で平林たい子文学賞、91年『トラッシュ』で女流文学賞、96年『アニマル・ロジック』で泉鏡花文学賞、2000年『A2Z』で読売文学賞、05年『風味絶佳』で谷崎潤一郎賞、12年『ジェントルマン』で野間文芸賞、16年「生鮮てるてる坊主」で川端康成文学賞を受賞。他の著書『ぼくは勉強ができない』『姫君』『学問』『つみびと』『ファースト クラッシュ』『血も涙もある』他多数。



「2022年 『私のことだま漂流記』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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