夫婦善哉 (新潮文庫)

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  • Amazon.co.jp ・本 (243ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101037011

感想・レビュー・書評

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  • タイトルだけは知っていて未読だった「夫婦善哉」、たまたま古本屋で昭和25年発行平成元年四十刷の新潮文庫版を見つけて読んでみた(著者は 1947年没で現在は青空文庫でも読める)。夫婦の情愛を描く…と言えば月並だが、蓮葉で気風のいい蝶子と、蝶子と駆け落ちしたことを理由に勘当された実家への未練が抜けず、芸者遊びの癖も抜けない実に典型的なダメ男の日々の暮らしを当時の大阪の風俗を折り込みながら描く。商売をやっては失敗し、お金を溜めては(芸者遊びで)散財しの単調な繰り返しにも見えるが、何故か不思議な魅力があり、根強い人気を誇る作品というのはそういうものか。
    故郷と京都吉田の不思議な邂逅を描く「木の都」、出来の悪い弟がしかしそれなりに行きていく「 六白金星」、青春時代に好いた文子を追いかけて東京まで行った挙句に手酷くフラれて帰ってきた、その後の希有な人生流転物語「アド・バルーン」、著者自らがナレーターとなり大阪の街や阿部定事件に小説のネタを探す「世相」、最愛の妻の死と競馬の興奮を重ねた「競馬」の 6篇を収めるが、出色はやはり表題作か。
    戦中、戦後一貫して大阪の風俗を描き続けた著者は、それしか取り柄のないことに小説家としての限界を感じる(「世相」)が、しかし、世相を切り取り記録することも文学の重要な役割で、こうして今読み返してもいきいきとして魅力的だ。

  • 昔読んだときにはやっぱり古かったんだけど、今は違うかもしれないね。
    ドラマ化のおかげで再読する。織田作と言われ、庶民に愛された作家の作品だと言うのが手に取るようにわかるね。昭和初期の小説が最近どうも古さがなくなりつつあるのは、今が再び戦前だからなのか?やめてくれ~~~

  • 池田敏春の秋深きを観て、素敵だったので思わずぽちった。
    人気があるのは知っていたけれどやはり面白かった。
    デカダンとか放蕩とか出てくるけど、それよりも文中でも言う様に大阪の人々の風俗をとても愛していて、戦中戦後の大阪の空気や温度が手に触れる様に。
    私小説っぽいナルシーな感じもあまり無いし。短編で気軽に読める。すきです

  • 時代がまったく違うのに、大阪の風景がありあり見えるような。
    心斎橋界隈の様子、昔よく歩いたな。その様子が本当に浮かぶ。
    このころって、おめかけさんが当たり前だったのかしら? 普通の夫婦って何?と思わせるけども、それぞれの形があるのかも。とにかくいろんな描写が好きです。

  • オダサク節炸裂。大阪への惜愛が十分に感じられる。数字や地名、職業名が溢れかえった独特の作風はオダサクの目指した具体性を感じられる。

  • 地名や店名など固有名詞の行列でたしかに独特、最近の作家さんで似たような書き方の人もいた気がするがここまで溢れかえってないよね

  • 収録内容は以下の通り。

    夫婦善哉(昭和15年4月 発表)
    木の都(昭和19年3月 発表)
    六白金星(昭和21年3月 発表)
    アド・バルーン(昭和21年3月 発表)
    世相(昭和21年4月 発表)
    競馬(昭和21年4月 発表)
    青山光二: 解説(昭和48年11月 発表)

    「名短篇ほりだしもの」(北村薫、宮部みゆき 編集; ちくま文庫)で著者の短編3編を読んでから他の作品も読みたいと思っていた由、古書店で見つけ購入。
    およそ戦中から終戦直後までに書かれた作品で、著者自身も同様の趣旨を述べているが、当時の市井の生活が余り誇張されずに描かれているのがよい。

  • しょーもないダンナ、今では考えられませんね!

  • 1940年くらいの大阪周辺にいきている作者と
    その周囲にあるひとたちを描いた作品
    大衆のためでない大衆を描くという
    現代小説の流れ上流にある作品として価値があるかもしれないが
    現在としては技術的に素朴良いところあるけれども
    埋もれるつくりであり
    その舞台に価値を置く時代小説としてしか読めない

  • 感覚が合うような合わないような。。。テンポの良さは現代でも通ずるが、さりとて刺激的とまではいかないし。「競馬」はよく書けているし、どの短編も面白みはある。

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著者プロフィール

一九一三(大正二)年、大阪生まれ。小説家。主な作品に小説「夫婦善哉」「世相」「土曜夫人」、評論「可能性の文学」などのほか、『織田作之助全集』がある。一九四七(昭和二二)年没。

「2021年 『王将・坂田三吉』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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