野菊の墓 (新潮文庫)

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著者 : 伊藤左千夫
  • 新潮社 (1955年10月27日発売)
  • Amazon.co.jp ・本 (100ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101048017

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野菊の墓 (新潮文庫)の感想・レビュー・書評

  • 高校2年生の時に初めて読んで以来、私の中で『野菊の墓』は特別、心に深く刻まれている話である。こんなにも、切なくて悲しくて、心が痛くなるような初恋の物語というのはないと思う。民子の思いが、そして政夫の思いが読む人の胸に迫ってくる。人生はたった一度しかないのに、思い通りになることは少なくて、だからこそ自分の思いや他人の思いを大切にできる人になりたいと思う。

  • 「野菊の墓」伊藤左千夫。1906年の小説、新潮文庫。
    ドラマ「逃げるは恥だが役に立つ」も、真っ青な、ムズキュン恋愛ドラマです。
    ま、オチは楽しくはないですし、ダンスはありませんが。

    関東近郊の農村の、ちょいといいとこの、15歳のお坊っちゃん。
    親戚の女の子で、坊っちゃんの家に下働きに住み込みで来ている、17歳の女の子。
    このふたりが、子供の頃から仲良くて、だんだん初恋になっていって、両思いだったんだけど、女のほうが年上だし、周りが反対して引き裂かれ。女の子は病気で死んでしまった。
    と、いうだけの話なんです。
    コレが素敵な小説です。
    #
    あまりにも有名なンだけど、読んでないなあ、というよくある小説で。特に理由もありませんが、読んでみました。
    オモシロイ。
    読みやすい。
    もうほんと、冒頭に書いただけのお話なんです。

    若いふたりは、毎日のように仲良くしています。
    ただ、微妙に立ち位置は違います。
    お坊っちゃんの政夫くんはお坊っちゃんで、東京の学校に進むことが決まって。
    民子ちゃんは所詮、働きに来ている立場。家事に追われています。文章を書くこともできないんです。
    ちょっと農作業に一緒に行く、とかが、言ってみれば素敵なデートなんです。
    周りがだんだんと、「あのふたりはちょっと恋人みたいぢゃないの」と、心無い当てこすりを言うようになって。
    そのあたりのストレス感が、「ああ、田舎ってこうだよなあ」という妙なリアル感。
    民子のほうが年上だ、ということもあって。政夫が東京に進学して、帰省してみるともう民子は家にいなくなっています。
    実家に帰した。そして、嫁に行くことになった、と。
    そして会えないまま歳月が過ぎて、今度は連絡があって帰省してみたら。
    なんと民子さんは婚家で苦労した挙句、お産がうまくいかずに病死してしまった…と。
    なんともはや、なハナシなんです。
    #
    これがまた、とっても素敵にポエムのような心情豊かな中編小説なんです。
    どこまでいっても、ピュアなんです。プラトニックなんです。
    政夫くんと民子ちゃんにとっては、いっしょにいて、おしゃべりして、農作業とか行って、そんな日常のひとつひとつが、「いっしょにいると楽しいね」なんです。Hとか、そんなの考えもしていません。
    そして、そんな仲良しだったふたりが、恋になっていくステップというか、果実が熟すような温度が、ものすごくくっきりと心情、描かれます。ムズキュンなんてものぢゃないです(笑)。
    そこから先に、ふたりの仲は熟すことなく、ポッキリ終わってしまうんです。現実としては。
    でもだから、お互いに気持ちの中では、終わってないんですね。
    もともと肉体的に性的にどうこう、ということぢゃない訳で。
    誰と結婚しようがどうしようが、瞬間冷凍された「恋」は生きているんですねえ。
    ただもちろん、嫌なことをいわれて、陰口を言われ、親大人のプレッシャーで嫁いだ民子さんは、ほんとに哀れです。
    (ま、現代風に考えれば、結婚した夫のほうだって哀れなんですけれどね)
    そして、民子さんから、政夫さんに連絡できないんですね。文章書けないですから。携帯もメールもラインも無いし…。
    #
    民子さんが死んだあと、握りしめていたのが政夫くんからかつて貰った手紙だった、というラストは、思わず知らずグッと来ちゃいました。そこまでの語り口の素晴らしさ。
    #
    悲劇で、女々しいといえば女々しいのですが、あまりにも無垢な少年少女のお話なんですね。だからなんだか、辛いけど明るい不思議な物語。
    最後は無論、涙、ナミダなんだけど、なぜだか不思議に、いじけた味わいにならない。そういう、他者攻撃とか、恨み節になっていかないポエムな読後感。
    恥ずかしいと言えば実にハズカシイ小説なん... 続きを読む

  • 純愛物なのに、文章が情緒に欠けるなぁ…と思って読んでいたけれど、最後の三文は美しい。政夫と民子の想いを凝縮した文章。
    「号泣した」という感想をよく聞くが、わたしはそこまでではなかったかな…?

    「野菊の墓」「守の家」は切なく悲しく、「浜菊」は少し皮肉めいていて、「姪子」は暖かみがあったので、この一冊でいろいろな話を楽しめた。

  • 「好きの定義とは?」などと中学生じみたことを吐露していたら、涙なしでは読めないと本書を知人に紹介され読んでみました。涙なしでも読めました。小説に答えを求める月間9冊目。「貴方は野菊みたいな人です」→「私は野菊が好きです」。こんなこと言ってみたいわ!やっぱりひかれるからやめとくわ!一番泣きたいのは政夫の筈なのに、周りを思って気丈に(?)振る舞うのは優しさなのか。我を忘れて怒り狂っても、それはそれで深い愛情な気がするけども。こんな場面においても自分を殺すなよと思う。

  • なんて純粋な二人なのだろう。素晴らしい恋。
    「民子は嫁に往った。此一語を聞いた時の僕の心は自分ながら不思議と思うほどの平気であった。僕が民子を思っている感情に何等の動揺を起こさなかった。」
    政夫の民子を思う気持ち、民子の政夫を思う気持ちは、何があっても変わらないということがわかる一文。民子が政夫といるときの無邪気さ、嬉しさが、読んでいるこちらにまで伝わってきてつい微笑んでしまう。

  • 青空文庫さんにて。2人が本当に初々しくて、清らか。切なくて仕方がないけど、それがまた好き。当時の社会を如実に書き出している、ということで授業ですすめられた作品。

  • 当時の時代性がはっきり見えるほど台詞の中のカタカナ遣いと言い回しがいいなぁとひしひし…これは当時に生きている人じゃないと絶対に書けないものだと思う。同時代研究が実に楽しそうな作品。恋だの愛だの、考えずに一緒にいられたらいいのにという二人はとても清純で美しい。それに加えてその美しさは小説の中でしか美しくなりえないのだということも教えてくれる気がする。切ないなぁ…。

  • 受験真っ只中で読みふけっていた。読みやすく、こてこての純愛ながら心打たれた。

    -------
    2017/09/19
    この作品を手に取ると、鮮明に思い出す。
    高校卒業間近の3階の教室の窓際。冬ながら小春日和で日が暖かかったこと。中庭に眩しいくらいのハクモクレンが咲いていた事。冬休みの静かな校舎。先生の脚立。何を読んでるの?と聞かれて応えると、「お民さん、」と先生が言った。自分の名前を呼ばれたような気がして、頬が熱くなったこと。人生で一番美しい日だった。

  • 学校の宿題で呼んだのですが思わず涙がポロリ…
    かなわぬ恋に胸が締め付けられました。

  • とても若々しい小説だった覚えがあります。でも本人はかなりの頑固者だったとか。ずいぶんと年配になってから作家になった人です。

  • 言わずと知れた純愛物語。時代の持つ理不尽さもあるけれど、声に出して読みたくなるような綺麗な日本語。伊藤左千夫は歌人だからか言葉のリズムが心地よい。

  •  中学生の時以来50数年ぶりの再読。政夫や民子に近い年齢で読んだその時と、その母に近い年齢で読んだ今。卵的の恋はくすぐったくもあったが、そういう気持ちはいくつになってもあるもので、いくつになっても卵的の恋はできる。中学生の時にはその母の気持ちにどれだけ思いを寄せられたか。今はその母の気持ちがとてもよくわかってせつない。
     「野菊の墓」のほかに3編収録。作者の一本通った思いを感じる。朴訥としている。

  • 少年と少女は互いに対して淡い恋心を抱くものの、世間体を気にする大人たちの手により隔てられてしまいます。周囲の目を気にして別れの悲しみも口にはできず、涙をこぼすことさえもはばかって、二人は離ればなれに…

    「ねィ民さん…」という言葉づかいや、静まり返った山中で綿をつむ光景に、戻らない昔をたぐりよせるようなほろ苦さが胸中に満ちてくるよう。

  • 民さんは野菊のような人だ

    切ない切ない愛の話

    泣いたー

  • 恋愛小説をちょっと読みたいと思うなら、この切ない恋愛をおすすめしたいなと思いました。
    結婚する相手が年上の女性というのが嫌われる時代の男女の話。とても柔らかい雰囲気で二人の気持ちが素直でまっすぐだということが常に伝わってくる文章です。あまりにもまっすぐのため「恋」というものを初めて知った時を思い出します。
    また、見方によっては在り来たりな部分もあるかもしれませんが、素直に胸が熱くなったり、目頭が熱くなったりする場面もありました。

  • こういう作品は、アラサーになってから読んじゃだめ、絶対(悲壮感)。


    初恋は実らない。

    なんて使い古されて手垢の付いた至言でしょうか。初恋は実らない。実を結ばないからこそ、いつまでも瑞々しく、甘酸っぱい思い出として記憶に留められる初恋………。私の初恋の木下くん、元気かな………←

    ですが、古典文学の世界にあっては、初恋は悲劇と切っても切り離せるものではありません。

    ロミオとジュリエットしかり、ツルゲーネフしかり。

    実らないからこそ、
    悲劇として幕を閉じるからこそ、
    一瞬の強烈な輝きを永遠に留めることのできる初恋……………。

    うーーーーーーーーーん。
    可哀想だね?(@綿矢りさ)以上の感想出てこない←←←←←

    本作、野菊の墓の主人公・政夫と、二つ年長の従姉・民子が、世間体を気にする大人達のせいで離れ離れになり、そして取り返しのつかないあの結末にたどり着くんですが。

    うん……………可哀想だね??←←←

  • 中学時代に読んで、印象に強く残ってる作品です。僕は野菊が好きだ。民さんは野菊のようなひとだ。こんなラブコール、素朴でいいですね!(笑)

  • 純粋で、初々しく、そして悲しい恋を描いた表題作。民子との別れや民子の病死の場面はいかにも古典的な感じ。むしろ序盤から中盤、政夫と民子との日常の描写が秀逸。特に2人が山畑の綿を採りに行く道中、民子を野菊に、政夫を竜胆に例えて、互いの気持ちを伝えあうところがこそばゆい。燃え上がるような恋もよいけれど、抑圧された環境下での静かな恋もまたすばらしいものだ。
    表題作以外の『姪子』『守の家』も心が温まる佳作。

  • 若い頃は悲恋の印象しか残らなかった『野菊の墓』ですが、久しぶりに再読して、政夫の母と嫂の物語も見え隠れするように思いました。
    幼い恋を見守っていたはずの母親が二人を引き離した背景には、常日頃から意地悪な嫂に女主人の座を脅かされている苛立ちがあり、その鬱憤がか弱い民子へと向けられたのかもしれないと…。
    そうすると、最後の“余儀なき結婚”のくだりは、斎藤家の二人の女に対する政夫の恨み節にも聞こえるのです。

  • 悲恋もの。最後に民子が死んでしまうというありがちなパターンだった。
    現状をどうにかする勇気も知恵もなかった二人。

  • くらもちふさこの「ハリウッド・ゲーム」、岩館真理子の「ガラスの花束にして」の中でヒーローの男の子が松田聖子のファンであり、この野菊の墓について話題にするシーンがある。

    それゆえ私にとっては野菊の墓=松田聖子が出演した映画、悲恋を描いた物語という認識しかなかった。
    最近何の気なしに読んでみたが、予想に反して自然と涙が出た。

    確かに筋を大雑把にみれば、何のことはない思春期のすれ違いののちの悲恋話である。
    ただ一般的な悲恋という印象ではなく、遥かに純愛という面が強く印象に残り、胸の中に心地よい風を通してくれる。
    周囲からのさりげない牽制に抗う術なく、日々は淡々と流れてゆくが、互いの間にあるゆるぎない確信のようなものが気持ちを動じさせる材料にはなり得なかったという描写にはハッとさせられた。


    自分がそうであるように、相手も同じように確固たる気持ちを信じられるというのは何て単純で美しいんだろう。
    物事において、理由はなくとも確信を持って信じられるということがまれにある。
    そういうときは相手を信じているというよりは、確実に自分のことを信じている時だと思う。
    理由もなくなんて、不明瞭で脆いものに感じられるかもしれないが、確かにそういうときがある。


    政夫の台詞に思春期が言わせる、傲慢な想いだと感じなかったのはそういうところからだった。
    だからこそ美しさと切なさが自分の中で一層深く印象づけられたのかもしれない。

  • 短編四編。
    表題にもなっている野菊の墓は、哀しいの一言に尽きます。
    前半などはほのぼのとしていてかわいらしくもほほえましいのだけど、最後はただ哀しく、涙がこぼれそうになりました。
    主人公が子供の頃を回顧するところから始まるので、おおよそどのように終わるかは想像がつくのですが、それにしてもあんまりです、と非難したくなるほど胸に迫りませした。
    こんなにも短い文の中で、こんなにも入り込んでしまったのは久しぶりです。

    残り三編も、情景が浮かんでくるかのようで、地味な内容でありながら記憶に残る、とでも言うのか。昔の日本の暮らしがありありと浮かび上がるよう。
    とくに姪子は、宮本常一を読んでいるような錯覚を覚えました。

  • 特別文章が上手いとかきれいだとかではないのに、直接訴えかけてくるような何かがある。
    愛とか恋とかは単純で素朴なものであっていいのだと思わせてくれる。

  • 伊藤左千夫が1905年(明治38年)に発表した"野菊の墓"他3つの短編を収録。どの作品も、作者の素朴な感性がにじみ出ていて読んでいて清々しい文章です。"野菊の墓"は、100年前に書かれたとは思えないほど、現在の鑑賞にも耐える作品です。舞台設定などは古いのですが、そこに描かれる恋愛模様は、全然色あせてないです。締めの文章がなんかドキッときた。"浜菊"、"姪子"、"守の家"の3編は、それぞれの主人公のある日を切り取った話ですが、"浜菊"だけが毛色が違うというか他にこんな話を書く人はいないのではないでしょうか。

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