野菊の墓 (新潮文庫)

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  • Amazon.co.jp ・本 (160ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101048017

感想・レビュー・書評

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  • 七月三十日 左千夫忌 伊藤左千夫命日ですね。懐かしい野菊の墓でも。

    「野菊の墓」1906年 初小説
    淡く切なく儚い、野菊の様な少女の初恋。
    少年は15歳、従姉妹の民子は17歳。二人は、幼い頃から仲良く、この頃から、お互いに清純な恋心を抱き始めていた。
    民子が2歳年上であること、ただそれだけで、母や義姉に二人の恋は認められず、とうとう民子は別の男性に嫁ぐことになる。民子は、精神的に肉体的に弱っていく。そして、流産の後、亡くなってしまう。
    少年は、たとえ誰と結婚しようとも民子の心は自分にあると信じていたが、彼女の死は受け入れがたいものだった。彼女の墓の周りを野菊でいっぱいにする。そして、二人への仕打ちに後悔する母親をも支えようとする。成就できなかった初恋に胸が詰まる。
    ストレートなストーリー。時には、心の浄化。

    「浜菊」
    これがなかなかの良作。
    友あり遠方より来るが、それをしっくりもてなさない友人。客人は、すこぶる居心地が悪い。年賀状では遊びに来いって書いてあったのに。去年は楽しく再会を楽しんだのに。
    客人の内心は謎と不安と不満でいっぱいになる。居た堪れず、翌日にはそそくさと旅立つ。
    なんか、もう、いつの時代もあるよね、こんな事。

    「姪子」
    うーん。働き者の姪子。

    「守の家」
    子供のお守りの“守”。子供が5歳になり、実家へ戻った“守”の女性。お別れの寂しさ。

    昭和の文庫で読んだから、収録短編が今と違うかもしれない。

    • おびのりさん
      アオちゃん、忙しいだろうけど、乗り越えてね。
      そして、まさか、松田誠子さんの野菊の墓知ってた⁈皆さん、そこそこいってるわね。笑
      アオちゃん、忙しいだろうけど、乗り越えてね。
      そして、まさか、松田誠子さんの野菊の墓知ってた⁈皆さん、そこそこいってるわね。笑
      2022/08/01
    • 松子さん
      ぶはっ! おびさん!笑笑!
      そうそう、けっこういってますよー(^^)

      そうそう、あおちゃん
      野菊の墓って朝ドラかと思ったら
      映画だったんだ...
      ぶはっ! おびさん!笑笑!
      そうそう、けっこういってますよー(^^)

      そうそう、あおちゃん
      野菊の墓って朝ドラかと思ったら
      映画だったんだねぇ
      野菊の墓イコール松田聖子だけは
      脳内インプットされてるんだよねぇ
      あぁ、みんなと懐かし話が出来て嬉しいー♪
      2022/08/01
    • aoi-soraさん
      おびさん、ありがとー!

      やっぱり映画?!
      観たことはないのだけど…

      みんな昭和時代??www
      なんだか楽しいわ(´ε` )
      おびさん、ありがとー!

      やっぱり映画?!
      観たことはないのだけど…

      みんな昭和時代??www
      なんだか楽しいわ(´ε` )
      2022/08/01
  • 「民さんは野菊のような人だ」この有名な一文は知っていましたが、小説をしっかりと読んだことがありませんでした。明治時代に発表された作品ですが、とても読みやすかったです。

    2歳年上の民子と政夫の恋はとても初々しく清らかなものでした。初恋になるんでしょうね。この時代はまだまだ封建的で年上のお嫁さんなんてもってのほかだし、好きな人と結婚することは難しいものでした。
    だからそばに愛する人がいなくても、心が繋がっていること。がとても大切なことだったんだと思います。2人は政夫の中学入学で離れ離れになっても、民子が余所へお嫁に行ってもお互いを想う気持ちはこれっぽっちも揺るがないものでした。
    想うだけの恋。嫉妬や疑心に苛まれるわけでもなく、ただただ相手のことを想うだけの恋。
    それがどれだけ美しく可憐なものなのか。

    初恋は実らないというけれど、2人にも民子の死という悲しい結末が待っていました。
    茄子畑で見た立派な入日。入日を拝む民子のしおらしい姿。野菊が大好きだと言う民子。山畑で食べたお弁当。村を離れるときに見送りにきた民子……
    そんな民子がいつまでも政夫の心の中で生き続けるのでしょう。そして、政夫からの手紙を胸に亡くなった民子も政夫への想いを貫き通したのでしょう。

    ……民さんは自分の年の多いのを気にしているらしいが、僕はそんなことは何とも思わない。僕は民さんの思うとおりになるつもりですから、民さんもそう思っていて下さい。……

  • 表題作と浜菊、姪子、守の家。

    野菊の墓はいつ以来だろう…
    そもそも野菊という花をふんわりしか知らないかも。という事でいくつか野菊を調べその素朴で可憐な姿を物語に思い浮かべて読み進め、まさに野菊に民子を見て涙…

  • 「野菊の墓」伊藤左千夫。1906年の小説、新潮文庫。
    ドラマ「逃げるは恥だが役に立つ」も、真っ青な、ムズキュン恋愛ドラマです。
    ま、オチは楽しくはないですし、ダンスはありませんが。

    関東近郊の農村の、ちょいといいとこの、15歳のお坊っちゃん。
    親戚の女の子で、坊っちゃんの家に下働きに住み込みで来ている、17歳の女の子。
    このふたりが、子供の頃から仲良くて、だんだん初恋になっていって、両思いだったんだけど、女のほうが年上だし、周りが反対して引き裂かれ。女の子は病気で死んでしまった。
    と、いうだけの話なんです。
    コレが素敵な小説です。
    #
    あまりにも有名なンだけど、読んでないなあ、というよくある小説で。特に理由もありませんが、読んでみました。
    オモシロイ。
    読みやすい。
    もうほんと、冒頭に書いただけのお話なんです。

    若いふたりは、毎日のように仲良くしています。
    ただ、微妙に立ち位置は違います。
    お坊っちゃんの政夫くんはお坊っちゃんで、東京の学校に進むことが決まって。
    民子ちゃんは所詮、働きに来ている立場。家事に追われています。文章を書くこともできないんです。
    ちょっと農作業に一緒に行く、とかが、言ってみれば素敵なデートなんです。
    周りがだんだんと、「あのふたりはちょっと恋人みたいぢゃないの」と、心無い当てこすりを言うようになって。
    そのあたりのストレス感が、「ああ、田舎ってこうだよなあ」という妙なリアル感。
    民子のほうが年上だ、ということもあって。政夫が東京に進学して、帰省してみるともう民子は家にいなくなっています。
    実家に帰した。そして、嫁に行くことになった、と。
    そして会えないまま歳月が過ぎて、今度は連絡があって帰省してみたら。
    なんと民子さんは婚家で苦労した挙句、お産がうまくいかずに病死してしまった…と。
    なんともはや、なハナシなんです。
    #
    これがまた、とっても素敵にポエムのような心情豊かな中編小説なんです。
    どこまでいっても、ピュアなんです。プラトニックなんです。
    政夫くんと民子ちゃんにとっては、いっしょにいて、おしゃべりして、農作業とか行って、そんな日常のひとつひとつが、「いっしょにいると楽しいね」なんです。Hとか、そんなの考えもしていません。
    そして、そんな仲良しだったふたりが、恋になっていくステップというか、果実が熟すような温度が、ものすごくくっきりと心情、描かれます。ムズキュンなんてものぢゃないです(笑)。
    そこから先に、ふたりの仲は熟すことなく、ポッキリ終わってしまうんです。現実としては。
    でもだから、お互いに気持ちの中では、終わってないんですね。
    もともと肉体的に性的にどうこう、ということぢゃない訳で。
    誰と結婚しようがどうしようが、瞬間冷凍された「恋」は生きているんですねえ。
    ただもちろん、嫌なことをいわれて、陰口を言われ、親大人のプレッシャーで嫁いだ民子さんは、ほんとに哀れです。
    (ま、現代風に考えれば、結婚した夫のほうだって哀れなんですけれどね)
    そして、民子さんから、政夫さんに連絡できないんですね。文章書けないですから。携帯もメールもラインも無いし…。
    #
    民子さんが死んだあと、握りしめていたのが政夫くんからかつて貰った手紙だった、というラストは、思わず知らずグッと来ちゃいました。そこまでの語り口の素晴らしさ。
    #
    悲劇で、女々しいといえば女々しいのですが、あまりにも無垢な少年少女のお話なんですね。だからなんだか、辛いけど明るい不思議な物語。
    最後は無論、涙、ナミダなんだけど、なぜだか不思議に、いじけた味わいにならない。そういう、他者攻撃とか、恨み節になっていかないポエムな読後感。
    恥ずかしいと言えば実にハズカシイ小説なんですが、素敵な恋愛物語であることは間違いなく。
    奇跡のようなキラキラした少年少女ストーリー。
    #
    そして、このハナシ、伊藤左千夫さんの自伝的実話なんだそうです。
    伊藤左千夫さんにとって、これは処女小説だったそうで。どこかで読んだのですが、仲間の集まりで、作者本人が朗読して発表したそうです。
    そして、最後に自ら慟哭してしまったそう。
    #
    新潮文庫で読んだのですが、「野菊の墓」の他に「浜菊」「姪子」「守の家」の短編3つが入っていました。
    かつての親友の家を訪れたけど、あまり楽しくなかったという「浜菊」。これはちょっと面白かった。
    それから、野菊の墓と同じく自伝的風合いの強い「守の家」。
    これは、もっと少年だった頃のお話で、子守娘と坊っちゃん子供の愛惜のお話。
    10代くらいだろう、という子守娘の、男の子への愛情がこれまたピュアで、グッと来ました。
    どうやら伊藤左千夫さんはこっちに持っていくと強いんですかね。
    #
    「野菊の墓」は何度か映画にもなっています。
    なんと松田聖子さんが民子を演じたバージョンもあるはずです。それは未見。
    大昔に見た、木下恵介監督の「野菊の如き君なりき」(1955)が、なんにも覚えていないんですが、かなり泣けた、という記憶だけ残っています。
    またいつか、再見したいものです。

  • 優しくて控えめな少女と、近所に住む2歳年下の少年の純粋な初恋の話。
    子供の幸せを願って、2人を離れ離れにする大人たちが、結局は子供たちを不幸にしてしまう。悲劇の中にあっても、親を責めずに慰めの言葉をかけ、自分自身が強くなろうと決意する少年の強さに感動した。
    大人から見ると子どもは未熟に見えるが、子どもなりに自分自身の感情を受け止めて、人生を決めていけるということを信じなければいけないタイミングがあるんだろうなと思った。

  • 情景描写の美しさや、若い二人の初々しい恋愛がとても素敵だった。
    ただ、政夫は恋に恋してるだけのような感じがしてしまった。本当に民子のことを思ってるんだったら会いに行ってやれよ!まあ、15歳だったらそんなもんかなとは思うけど。
    あと、民子も最後に握るのは写真と手紙は違うだろ。自分の死後にそれをみた母親達がどんな気持ちになるのか想像できない子じゃないと思うから、もしかしたら無理矢理結婚させられた腹いせとして、自分の死後に傷つけてやろうという魂胆があったのかもだけど、もしそうじゃないんだったら竜胆を握っておけばよかったのに。せっかく政夫=竜胆という2人だけの約束事があったんだから。

  • 北村薫著、秋の花より。
    再読するたびにいつか読もうと思っていたコチラをようやく手に取る。

    普段あまり遣わない漢字や言葉が多くて、そういえば私、小説たくさん読んできたつもりだったけど、いわゆるクラッシックな名作っていうやつはあんまり読んできてなかったな、ということに思い至った。

    と、いうことで読み慣れない古い言葉や漢字に悪戦苦闘…、
    短編で良かった。

    お話のスジは主人公政夫が、思春期の入口にいた頃、仲の良かった2つ年上の従姉妹とのその関係を周りにとやかく言われ始めたことから意識してしまい、お互いプラトニックな恋心を通わせたタイミングで親や親戚からその仲を引き裂かれ、従姉妹は望まぬ結婚をさせられ、失意のうちに若くして亡くなり…という思い出を振り返って語る、というもの。
    従姉妹…民子の亡くなった理由としては嫁に行き、身重になったものの、子どもはおりてしまい後の肥立ちの悪さゆえ、ということらしい。
    縁談を断る民子に、政夫の母が言い放つ言葉がなかなか厳しく、また、嫌がる彼女に強引に縁談を勧めた家族の圧も結構しんどかったことだろう。
    実際、民子の死に際して政夫の母も民子の家族も大きな責任を感じている。

    物語は過去の政夫の視点で進む。

    民子の死を伝えた時の、母の詫び言、
    墓に参った政夫を出迎えた民子の家族の詫び様に、1番感情を動かされた。
    政夫に民子との仲を引き裂いたことを涙ながらに詫びる。
    さらに政夫に民子の死、その一部始終を涙ながらに聞かせる。
    …いやいや、皆さん、
    それでその罪悪感から逃れようとしていませんか?
    …なんなんだ、この人たち、と。
    秋の花の正ちゃんは、政夫に随分ご立腹でしたが、私は民子が亡くなった後の政夫の母や、民子の家族の詫びようになんだかとてもイライラしてしまった。

    いやマジで、
    民子の嫁行った先のお家の方にもめちゃくちゃ失礼だろうよ。

    2人で茄子をもぐシーンや、綿の畑で過ごす時間、野菊と竜胆のやりとりなど、繊細で美しいところもあったけど、
    実はイマイチ政夫や民子にも共感できなかったんだよな。
    時代認識の差なのかなー…。

    共感ではないが、同情するとしたら、民子の嫁ぎ先の旦那さんに1番同情した。
    (おそらく待望のお子さんも亡くなってるわけだし)

    とは言え、読み慣れない文体にも関わらず、なんだかんだで感情を動かされる。
    美しい悲恋に感動で涙が流れる…という動かされ方ではないけど、集中が途切れず一気に読めたのも良かった。

    あ、ほかの3編もじわじわ面白かったです。

  • 『野菊の墓』
    過去に幾度となく映像化されたもののいくつかを見たことあれど原作は初めて。若すぎる2人の儚い恋心が美しく切なく表現されている。嫁いでもなお政夫への思いを持ち続けた民子の健気さもさることながら、悲しい結末に追い込んだ事を後悔し泣いて謝る大人に対し、悲しみを堪えて受け止める政夫の姿が、この物語を一層切なく美しいものにしている。
    明治の時代はかくもこのように恋愛には閉鎖的だったのでしょうが、世間体を気にする大人の身勝手さや醜さと言ったものはいつの時代にも当てはまるからこそ時代を超えて読み継がれ映像化もされるのでしょう。
    『浜菊』
    以前文学の道を志したがその道を諦め家庭を持った者が、今も文学の道を生きるかつての同志の訪問に対し、冷たいもてなしをする言うだけの短い話だが、その邪険な扱い方がちょっと面白く、そんな事あるだろうな、と思ってしまったw
    妹が年賀状で、また来てくださいと書いてくれたからと言ってのこのこ訪問してしまったが招かれざる客と悟った主人公。一つの時代が終わった、と感じる瞬間は誰しも経験する事だと思うし、夢を諦め堅実な生活を選んだ人にとって、今も自分の道を生きる友人にはやりきれない複雑な思いを抱く気持ちもわかる。
    『守の家』
    主人公が幼い時の、子守の娘との思い出。これまたとても短い話でしたがなかなか良かったです。

  • 「民さんは野菊のような人だ。」「政夫さんは野菊がお好きですか?」「僕、大好きさ。」このシーンが一番好きです。

  • 何度目だか忘れたけど、気持ちをピュアに戻したい時に好適な小品。いつまでも色褪せないでホントに古風だけれど 純粋で甘酸っぱくて もどかしくて切なくて、そうだ自分にもこんなのに近い気持ちの時が かつてあったよなぁ 等と大昔を回顧したり ね 笑。あっと言う間に読めるし。

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