仮面の告白 (新潮文庫)

著者 :
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  • Amazon.co.jp ・本 (288ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101050010

感想・レビュー・書評

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  • 難しいが、人には色々な側面がある。

  • これは、ツラい。
    今の時代なら未だしも50年以上前の時代に、女性を好きになれない自分と向き合わなくてはいけないなんて。
    感情なんて、簡単に停止できるものではない。試行錯誤して女性への気持ちを高めようとする行動がかわいそうでならない。その犠牲になる園子も知らされないまま振り回されて気の毒。
    もっと差別のない自由な世界が広がることを願うばかり。

  • 今迄読んだ三島作品の中で1番難解と感じました。
    同性に対する情欲に苦しむ自叙伝的小説と言われていますが、
    男が女を愛することが普通であり男が男を愛することは普通ではないと感じながらも、一般的な「普通」を装うことは彼にとっては普通であり女を全く愛していないという訳でもない。
    私個人、同性愛者などに特に批判的ではないのですが
    受け入れることなく彷徨い続ける精神状態というのは物凄く辛いのではと感じました。
    また、戦時中を生きた人間ならではと思いますがどこか頽廃的で人の死や爆撃などの恐怖が日常当然として描かれていますが、現代を生きる人間にとっては有り得ない事で、感情の麻痺からも「仮面」を被ることが皮肉にも得意となってしまう時代背景だったのかなと思いました。
    結局のところ、多面的な人間性のどの部分が仮面なのかという謎と、執筆した三島由紀夫自身が少しでも素面を曝け出して生きる辛さを軽減できていたらいいなと願ってしまいました。

  • 以前、読んだ「命売ります」とは全然違ったな。
    でも、読みにくさはないが……ちょっと重かったな。

    友人の姉に恋しているのだと信じこみ、同世代の初心な学生がするようなことをしてみたが、その不自然さに自分の心が気付いていて、抵抗する。
    女性とキスをしても、何も感じない。

    とある女性のために本を選んでいて、それが"月並みなことをやっているという嬉しさは、自分にとって格別のものだった"と言うところで、主人公の今までの気持ちを思うと、キューッとなってしまった。

    最後の暗示的な一文の意味は……

    色々と考えさせられる本だった。

  • 自意識が肥大化している!文章の世界があまりにも主観的で若さを感じた。解説にもあったけど詩に近い話。
    三島の作品ってプロットが弱いけど文章が綺麗だから読める。

  • 言葉というか言い回しというか
    そのせいで読みにくかったです
    作品は、主人公である男の告白
    小さい頃の出来事や思いから現在のものまで
    淡々と語られていました

  • 美しく深い日本語の文章を読みたくなって手に取った一冊。もちろんそれは期待通りでしたが、難解なところが多々ありいつもより集中力を要しました。

    正常ではないことで苦しむ主人公。今の時代はその頃よりもLGBTの理解は進んでいるけれど、現代でも当事者の方たちは、この主人公と同じように、正常にならなければと悩むこともあるのかも、と思いました。

  • 「どうして私たち結婚できなかったのかしら。あたくし兄に御返事をいただいた時から、世の中のことがわからなくなってしまったの。毎日考えて考えて暮らしたの。それでもわからなかったの。今でも、あたくし、どうしてあなたと結婚できなかったのか、わからなくてよ。……」
    園子は今の主人を愛しながらも、「私」とのプラトニックな逢瀬を続ける。園子は揺れている。二人は間違いなく惹かれあっているが、その心はすれ違っている。なぜなら「私」は異性に性の高まりを感じることができないから。戦争、死への憧れ、同性愛、テーマとしてはもっと凄惨になり得るものばかりだが、なぜか全体を通してそう暗い印象は持たなかった。
    三島由紀夫の中ではわかりやすい作品で初心者むけとの評価が多いようだ。今後同氏のほかの作品も読んでいきたいと思う。

  • 借りたもの。
    三島由紀夫の半生を描いた自伝的作品と言われる一冊。
    前半は子供のころの孤独とそれを紛らわす空想世界について、成長すると思春期特有の鬱々としたものや男子が自身の性的な関心が妄想や猥談で悶々としている様を、ヨーロッパ文学のような文体と、古典文学の造詣で彩っている。
    当時これだけ詳しいのはやっぱり凄く文学に精通している人物で、同時代の幻想文学に精通していた澁澤龍彦を思い出す。
    現代で読むと虐待に相当するようなこじれた家の環境や、従軍はしていないけれども戦時を体験したことで、
    現在の言葉でいえば自己肯定感が低い、劣等コンプレックスの塊になってしまった印象。
    ……メンタルすり減らしているのは文豪あるあるかも知れないが。

    内容は祖母に母親から離され隔離されて、身体が弱いことを理由に外で遊べず女の子の遊びで育ったとか、同級生への同性愛的な思慕とか、友人の妹との恋人以上結婚未満の話。

    この本を読んだ理由に、著者自身の体験だろうと言われている有名なエピソード、グイド・レーニが描いた《聖セバスティアヌスの殉教》の絵を見て勃起したというのが、この本のくだりらしい、というよこしま?な理由。
    もう一つのきっかけは、この本も基になっている映画 『Mishima: A Life In Four Chapters』( https://booklog.jp/item/1/B079VD5SGK )を観たため。

  • 青少年の悩みを格調高い美しい日本語で綴るまさに純文学
    書かれた時代を考えると主人公が同性にしか性欲を感じないという設定は相当勇気がいるものではないか。戦争を境に変わっていく日本の暮らしが背景に描かれ、その中で葛藤する姿は秀麗な表現をもってしても時に生々しく、心に刺さる。

著者プロフィール

本名平岡公威。東京四谷生まれ。学習院中等科在学中、〈三島由紀夫〉のペンネームで「花ざかりの森」を書き、早熟の才をうたわれる。東大法科を経て大蔵省に入るが、まもなく退職。『仮面の告白』によって文壇の地位を確立。以後、『愛の渇き』『金閣寺』『潮騒』『憂国』『豊饒の海』など、次々話題作を発表、たえずジャーナリズムの渦中にあった。ちくま文庫に『三島由紀夫レター教室』『命売ります』『肉体の学校』『反貞女大学』『恋の都』『私の遍歴時代』『文化防衛論』『三島由紀夫の美学講座』などがある。

「1998年 『命売ります』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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