- Amazon.co.jp ・本 (286ページ)
- / ISBN・EAN: 9784101050027
感想・レビュー・書評
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『卵』と『月』のユーモアがとても好きだった。そのほか『牡丹』にある歌舞伎の女形へ心を寄せる付き人と、その女形が心を寄せる演出家の三角関係みたいな物語もそれぞれのエゴがあって面白かったし、そりゃあ思想的には『憂国』みたいにちょーーーっと極端なところがあるからもしれないけれど、やっぱりたいへんに、文章がお上手でウイットにも富んでて、結局はユーモアに生きた人で、人の好い方だったんじゃないかと思うんだよね。まだまだ読みたいと思える作品だった。
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「詩を書く少年」「海と夕焼」のためだけに星をひとつプラスした。三島氏が解説で自ら書いている通り、かれの作品の中では初期にあたる、『表現の若い』作品群なのだろうと思う(併読している『豊饒の海』から鑑みるに)。ただ短編というのは一行一語一句に意味や警句を込めた表現の凝縮(アフォリズムという横文字はどうも私に馴染まない)と私は考えていて、そうした意見の者のひとりからすると、氏のこれらの作品群は、『海と夕焼』を除けば、短編としても熟していない気がする。泉鏡花、芥川龍之介、久生十蘭、日影丈吉諸氏の作品を読んでいればなおさら。だからかれ自身の解説には笑ってしまう、そして笑いながらかなしくもなる。前者はまだ幼くも感じられるかれの若々しさを感じるゆえに、後者はかれの最期を知ってしまっているゆえに。
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短編集。いろんな雰囲気の短編がある。三島由紀夫自身の解説つき。印象に残ったのはやはり『憂国』。死を扱ってるのに、なんだか美しいと思ってしまった。ありきたりな感想だけど、圧倒された。
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憂国 エロスと死の対比
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憂国の、画面的な美しさと堪えがたい痛みが凄まじく、一番印象に残る。
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再読
平成5年版のでもう黄ばんでるし捨てる前の読み直し。
前は花ざかりの森に対して難解耽美だな……
という感想だったのだけど、
確かにクォリティーの高い厨二かもwという。
中世に於ける一殺人常用者のー
も。後書きで三島自身が前者はイマイチ後者は良しとしてるけど。
憂国も凄いけど、私はやはり詩を書く少年が好き。
自分にも覚えがある「あっ、この気持ち、これ本に書いてあったやつ。
なんだ、そうか、私にとってはすごい事に感じるけど、皆が通ってきた事なのかぁ。」
と自分が凡人である事に対しての安堵感と落胆と納得。
女方の密やかな感情の交錯、百万円煎餅のアイロニー。
完成度の高い短編集。
多分いつかまた買うのだろうなぁ -
三島最初の作だからか、よくわからない。挑戦的な物言い、展開は、圧巻。そこここに三島らしさを感じることはできる。よく若い年齢でこんなわからんものを書けるものだ。憂国も読んだ。読みたくなかったが、一度は読まなきゃかなと思って。やはり辛かった。作品評価は、…おいおいでないと考えられません。
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花ざかりの森のみの感想。単語を象徴として・隠喩として頻繁に用いていると思います。詩作品の中に単語を象徴・隠喩として使っている作品があります。花ざかりの森は、それら詩作品との類似点が多いと思います。花ざかりの森を読んで、(単語を象徴・隠喩としてよく使う意味での)詩作品を読んでいる様に思いました。
この作品は、作者が古典の範疇に入った作品達から、学んで書いた作品だと思います。観察者・認識者・評論家の様な視点から書かれた作品、もしくはそのような性格の人物を作中に登場させるのが、作者の作品の一番の特徴だと思いますが、この作品ではその傾向が薄いと思います。古典の作品達の共通の骨格(文学の王道のようなモノ?)を用いてこの作品を造ったと思います。作者は比喩が巧みだと思いますが、比喩の巧みさはこの作品にも見られると思います。
この作品から、美しさ・純粋さへの憧れ・希求を感じました。この作品が書かれた時代、この作品を書いた作者の年齢を考えると、美しさ・純粋さへの憧れ・希求はおそらく意識的に書いたと思います。そしてこの部分が、古典の作品達とこの作品との多少の違いを見せていると思います。