花ざかりの森・憂国―自選短編集 (新潮文庫)

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  • Amazon.co.jp ・本 (286ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101050027

感想・レビュー・書評

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  • 心臓がぎゅっとなった。

  • 1956年のロールプレイングゲーム。七つの橋を、ひとこともしゃべらず、また誰からも声をかけられず渡り切ることができれば願い事が叶う。そんな迷信を信じて、四人の女たちが夏の宵闇へと繰り出すのだが……。

    「橋を渡る」という単純な行為が、一つクリアしたのをきっかけに他愛のない《遊戯》から、いつしか興奮と陶酔、抜き差しならない緊張を孕んだ《儀式》へと様変わりしてゆく。そのプロセスの描写がじつに見事。「願事(ねぎごと)」にみずからの幸せを託すしか生きようのない女たちが繰り広げる、静かなるスラップスティックコメディー。

    ※『橋づくし』のみ

  • 装丁買い。遠乗会がよい

  • 「花ざかりの森」
    三島由紀夫16歳の作品であるそうな
    この年寄りじみた文章は
    晩年の三島にとって忌まわしき追憶であったのかもしれぬ

    「中世に於ける一殺人常習者の…」
    世界とは追憶である
    愛すべき者と忌まわしき者をすべて殺し
    追憶にしてしまったならば
    彼の世界において彼はますます力を増すであろう

    「遠乗会」
    不良息子に手を焼くママさんが
    老いたかつての恋人に再会する話
    ラストがすごくいい
    追憶を失ったとしても世界はそこにあるのだ

    「卵」
    体育会系ホモソーシャルファンタジー
    後の赤塚不二夫にも通ずる?ナンセンスものだが

    「詩を書く少年」
    個人の特権性を担保しうるのはその人の「才能」か「体験」か
    ひょっとすると「ルサンチマン」かもしれない

    「海と夕焼」
    人間は神と悪魔の見分けをつけられない
    見誤りに気づかない者はまだ幸いです
    神を憎むことができるのだから

    「新聞紙」
    あるきっかけで突如被虐願望に目覚めた人妻の話
    最も嫌悪するものに辱しめられたいと願っているわけだが
    そのことに対する自覚のなさが、暗い滑稽さをかもしだしている

    「牡丹」
    南京にあったとされる虐殺の後日談というか
    事実はどうあれ、そこに
    あるひとつの願望を投影した人もやはりいたのであろう

    「橋づくし」
    芸者さんのあいだに伝わっているらしい奇妙な願掛けを試すはなし
    他愛ない話であるが
    「新聞紙」「牡丹」と読んできた人には
    願い事の成就にまつわる恐ろしさもわかるのではないか

    「女方」
    かなわぬ恋がやがて嫉妬の憎しみに転化していくという筋は
    どことなく「金閣寺」を思わせるものだ
    ただしオチはない
    その点でむしろこちらのほうが優れていると僕には思える

    「百万円煎餅」
    慎ましく堅実な生活をしている若夫婦が
    イチャイチャしながら百貨店をぶらぶらするだけ
    …じゃない
    ビデオが普及する以前にはこういう商売もあったのだなあ

    「憂国」
    芥川龍之介が「小児に近いもの」と書いた軍人の
    小児的に純粋かつ美しい愛のかたちである
    実際、愛を信じてないと
    いい大人が銃を相手の突撃なんてできやしないだろうな(小児だけど)

    「月」
    愛は金では買えない
    金で買えるのはモノと安楽と自由だけだ

  • おもろかった。私は憂国エロ本派~。

  • なんて素晴らしい表現力なんだろうか。特に憂国。

  • 憂国がすごく好きです。ふと、そこに透明な私が立ってすべてを観ているような臨場感を感じました。理想であって、決して越えられない一線を眺める高揚がそこにあります。

  • 花咲くことは命の誕生だ――三島の処女作「花ざかりの森」をはじめ、二二六事件を題材にし映画化もされた「憂国」を収録し、著者自身の解説も付された自選短編集。三島文学のテーマと問題の萌芽、ここに秘めれり。

    夏の読書で三島読む!と思ってたのにもう夏が終わっちゃう…せめて短編でも、と思いお薦めされたのが処女作も含まれてるし他にもいろんな話があるこの一冊でした。13編入っててどれもクオリティ高いのはさすが三島。
    三島自身はあんまり好きじゃないようだけど処女作の「花ざかりの森」の全体に漂う、祖先への憧れそれのみに魂に捧げられている描写、そのうつくしいレトリックと言ったら! すごく難解なところもあって難しい…三島苦手な…と余計に思い始めて来たけど、他の作品でもそうなんだけど、三島のレトリックとか好きだしこういう客観的な文体も悪くないなーと思うしもっと勉強していきたいね。
    個人的には「卵」がヒットww なんじゃこらww こういうのも書けた人なんだな面白い! 「海と夕焼」も奇跡が起こらなかったのは何でなんだろう??? って思う話なんですがその奇跡が起こらなかったどうしようもなさに途方に暮れてる感じが大層好き。「牡丹」もハッとしたなあ、「新聞紙」もなんか漱石の夢十夜第一夜みたいな終わり方だったしハッとした(内容は全然違う) 「端づくし」もいいし「女方」もいい、「百万円煎餅」はいまいちよくわからんかったけど「月」みたいな退廃的な感じの若者の話もいいなー、なんかいいなー
    ほんで「憂国」ですよ! 官能小説やでえめくるめくエロスやでえFuuuu!!と思ってたらクライマックスの切腹シーンがスプラッタ過ぎて指先からどんどん血の気引いてやばかったw そしてお昼時に読むものではなかった。中尉の死んでいく描写はこってりとしてるのに麗子の方はわりとあっさりだったのでその対比が何とも。
    また三島読むー今度は前から読みたかった美しい星にするっ。

  • 概要

    著者が14歳のころに書いた「花ざかりの森」,自身のすべてを凝縮したエキスのような小説「憂国」を含む13編を収める短篇集。著者自らこれらの短編を選び,巻末の解説も書いている。
    感想

    「憂国」がずば抜けてよかった。皇軍同士で戦うことができないために切腹を選ぶ武山中尉と後を追う妻・麗子のメンタリティは理解できないし,美しいとも思わない。しかし,その描写は鬼気迫るものを感じた。30ページ程度の作品なので,また読みたいと思う。

    「海と夕焼け」「遠乗会」「新聞紙」なども楽しく読めた。他方,「花ざかりの森」は読むのが苦痛で,「中世に於ける〜」と「月」は意味がわからない。「卵」も可笑しくもなんともなかった。

  • 久しぶりに「遠乗会」を読みたくなって引っ張り出した。
    「海と夕焼け」も相変わらず静かで美しくせつなく、やるせない。

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著者プロフィール

本名平岡公威。東京四谷生まれ。学習院中等科在学中、〈三島由紀夫〉のペンネームで「花ざかりの森」を書き、早熟の才をうたわれる。東大法科を経て大蔵省に入るが、まもなく退職。『仮面の告白』によって文壇の地位を確立。以後、『愛の渇き』『金閣寺』『潮騒』『憂国』『豊饒の海』など、次々話題作を発表、たえずジャーナリズムの渦中にあった。ちくま文庫に『三島由紀夫レター教室』『命売ります』『肉体の学校』『反貞女大学』『恋の都』『私の遍歴時代』『文化防衛論』『三島由紀夫の美学講座』などがある。

「1998年 『命売ります』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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