禁色 (新潮文庫)

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著者 : 三島由紀夫
  • 新潮社 (1964年5月4日発売)
  • Amazon.co.jp ・本 (580ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101050058

禁色 (新潮文庫)の感想・レビュー・書評

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  • 老作家・檜俊輔が、かつて自分を袖にした3人の女に復讐するために、同性愛の美青年・南悠一を傀儡にして3人の女を悠一の虜にしてしまう。
    スリリングなストーリー展開に、当時のゲイ社会に取材したリアルな描写、三島特有の文体、これでもかとばかりに浴びせられる豊かな語彙があいまって、最後まで読み飽かなかった。
    やはり日本最高の小説家は三島由紀夫だ、間違いない。

    随所随所で三島の美意識が爆発していておもしろい。
    以下は特に気に入った箇所の引用。

    「芸術というやつはどうしてこうも醜さに口実を与えるのだろう、それも天下御免の口実を」(p106)

    「何の責任も義務も負わないことが美しいものの道徳なんだ。美は自分の不測の力の影響についていちいち責任を負っている暇がないんだ。美は幸福なんかについて考えている暇がないのだ。まして他人の幸福なんぞについて。……しかしそれだからこそ美は、そのために苦しんで死ぬ人をさえ幸福にする力をもっているんだ」(p193)


    三島本人のその後の人生を予見するような言葉に遭遇して何度も「おや」と思わされた。たとえば次のような文。

    「彼らは社会を向うにまわして(中略)挫折に終わることのわかっている感傷的なクウ・デタや、さまざまの悲劇的な青春を夢見たのであった」(p485)

    「しかし、死において、自殺という行為と、生の全的な表現との同時性が可能であることは疑いを容れない。最高の瞬間の表現は死に俟(ま)たねばならない」(p568)

    三島がこの本を書き上げたのは28歳のとき。
    そのときすでに自らの死のシナリオを頭の中に描き始めていたんだろうか。

  • 三島由紀夫の文章は絢爛過ぎてあんま長いこと読んでると疲れちゃう(笑)嫌いじゃないし、すごい、って圧倒されるんだけど、覚悟がいります。後半は飛ばし気味に読んでましたー先生ごめんなさい。
    性欲を感じるのが少年だけ、という美青年の男色家っていう主人公?だけど、性欲を感じるだけで拘泥がないのって、女から見るとそれ愛を知らないんでは、と思ってしまう。まあ、愛ってテーマの作品でもないのだろうが。最終的に檜俊輔に死ぬほど愛されて終わるから、そこがパラドックスというか。でも23歳って愛を語れるほどの年齢でもないだろうに。それくらいで結婚しちゃう親孝行さが悲劇だったのかな。妻へ向かうべき性欲が他に向いてしまうことについて罪悪感を覚える繊細さも彼の悲劇だ。どんなに美貌でも、幸せになるって難しい、てことか

  • 一目で人の心を惑わしちゃうくらいの美貌を持って生まれるのって
    どんな感じなんでしょね?
    残念ながらそれを持ち合わせずに生まれてきたから、
    そりゃーもう興味しんしん。

    だけども、悠ちゃん、中身は空っぽ。
    あっちこっちでヤリまくってトラブルおこしても
    しれっとしてるの。すごいな!
    そしてそれが許される。だって美人だから!!

    空っぽな悠ちゃんに恋しちゃった人たちの方が色々考えてて、
    それがもう恋愛に関する悩みがつまってて、
    読んでて心が痛い。

    特に老作家の気持ちは、
    モテる人に恋をしてしまった人なら共感してしまうんじゃないかなぁ。

    んんー三島由紀夫さんの美に対するコンプレックスみたいなものが
    まざまざと感じられる一冊だったかも……。

  • 三島由紀夫、男色の名作。

    人間の醜さを三島由紀夫特有の文章の美しさで、綴られる。

    相変わらず病みつきになる三島由紀夫の文章、そして醸し出す筆者の世界観。

    今回は男色を描いているけれど、生々しい文章も取り分け美しく描かれている。

    悠ちゃん、
    彼は甘美なる絶望的な孤独者。
    惹かれてしまうのは、人間同志が持つ、『孤独さ』がお互いに共鳴し合ってしまうからかもしれない。

    お金が全てではないけれど、俊輔の最期、悠ちゃんへ示した愛は…お金よりも遥かな呪縛、永久に甘く苦しい呪縛。

    あの終わり方は好きでした。

  • どろどろな人間関係をあんなにきれいな文章で書いたら、汚いこともきれいになる。

  • 悠一の純粋さ、姑息さ、傲慢さ、美しさ、滑稽さ、優しさ、全てがまだ若さゆえの貴重な宝石に見えた。
    悠一の自由奔放っぷりに呆れつつも、純粋な部分に惹かれたり、時には哀れんだり、読んでいて定まらない。

    若くて美しいって毒だと思わされる。

    そしてあの鏑木信孝に口説かれるシーン。
    朝まで悠一を賛辞し、悠一の心を徐々に開かせ、ここだ、と言う時に物凄いとっておきのやり方で口説き落とす。

    夜中から朝にかけて長時間、紳士に悠一を賛辞し続けた姿からは一見そうじゃないと思うかもしれないけれど、これこそ真のSだと思った。感動した。

  • あらすじだけでもとんでもなく面白そうなのに、文章の素晴らしさがたまりません!
    こういうのを読むと、純文学の作家さんの、一般人がどうしても言語化できない矛盾やいびつな感情をきちんと言葉にする能力に感嘆せざるをえません。

    康子って、結婚した途端にどうしてあんな大人しくなってしまったのでしょう?冒頭の登場シーンとはかけ離れ過ぎていて、そこだけしっくりこなかったなぁ。

    醜さってまず自身から破壊していきますけど、美しさは周囲から破壊していくんですね。

    三島由紀夫は自決さえしていなければ、サリンジャーは作品を発表し続けてさえいれば、二人ともノーベル文学賞獲れたんだろうなぁ、と思います。

    11.10.10

  • 愛することの葛藤、そして愛は同性・異性関係なく、難しいものだとも。三島の文体は、苦手な人もいるだろうけれども、私は大好き。綺麗で深い。

  • 久々ではなかろうかな五つ星。。。というかもう、凄いとしかいいようが無い。
    老いた小説家俊輔、俊輔が裏切られた復讐をはらすための契約を結ぶ絶世の美少年悠一。
    もう最期のへんでは忘れていたが悠一の妻康子は最初俊輔の想い人であった・・・そう考えるとぞっとする。それが俊輔なのだと思わされる。
    残念なことにこの老人も悠一の虜になってしまうわけだが、悠一の変貌ぶりは目覚しい。数々の人間を破滅へ導いてゆくも、本人は誰にも感化されない。
    この青年が少しでも心奪われたことがあるとすればそれは鏡の中の自分、他人の眼に移る自分、他人が想いを寄せる自分である。それでいて悠一が単なるナルシストだりえないのは、すべて彼の性格、性質?男色という暗い運命のうちにある人生への絶望、諦観からくる翳につきる。
    私は悠一がもっと心乱すような恋があればいいのに。と想った。はていずれそうなる事がくるのだろうか。彼は俊輔の呪いにかかったままであり、莫大な財産という重しのような枷まではめられ。だけど、そんなもの彼にとっては無意味も同然のようにも思える。まったく意味をなさないような。最期の嫁、康子の変貌ぶりは私はものっすごく快感だった!このうえもなく悲劇的かもしれないけれど、私はその点において悠一を憎んでいたから。彼女は初めて悠一から「解放」された人間なのではないかと思うのだ。解放というかもう、堕ちたのかもしれないけど。とにかく。きっと悠一は娘の渓子も愛することはないだろうし、家族も母も関係ない。悠一の中では俊輔という暗い呪いと、自分という世界しかなくって、この先も自分ひとりの世界で死んでいくのでは。あ、くっら〜・・・
    その他、人間関係すごすぎる。やはり鏑木夫人が一番感情移入できるのだが、夫婦そろって悠一の虜になる滑稽な鏑木夫妻、この二人の関係が、この「禁色」を読んだ上での一番の収穫だった。鏑木夫妻の共犯関係。そういう絆があるのだと、一般の夫婦関係とはまったく違う。男女の関係とも違う。兄弟肉親なんでもなく人間としても共犯的関係。結局鏑木が最期に求めたのは夫人である。ん〜衝撃的だった!
    ほか気になった登場人物。ジャッキーの現在の年下の愛人(かなりやり手ー!)・稔の義理父というかパトロン?密告したオヤジ。魅力的な人が多すぎる。
    「好きだなぁ」「別れるなんて、まるで先生と僕の間になにかあったみたいですね」「ふん、おんなじことです。どっちも助平でどっちも退屈ですよ」
    どえすすぎる悠一様がもう、ほんっとにやばかった。結局彼は誰も愛してないし、自らの闇に沈んでゆくばかりで、他人との間におこるあれこれは全部なんか
    竜巻のような小さなひっかき疵のようで。むしろ最期はいざこざを前に、少なくとも退屈しねえぜ!みたいなノリだし。
    それに比べ翻弄される周りの愚弄な姿。かみ合わないコミュニケーション。こんなに人は駆け引きを繰り返して虚構を前にみんな演技。空恐ろしい仮面の下。
    禁色は色んな意味で人間の欲望と醜さをするっと一皮むいてみたような。美少年という異物によっておこる化学反応を前にして。ひーっ美少年・・・

  • 大団円があまりにも大団円でここに至るためにまた一から始めたいような気がしてしまうと気分がよいけれどちょっと眩暈がするようだな

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