- Amazon.co.jp ・本 (640ページ)
- / ISBN・EAN: 9784101050065
感想・レビュー・書評
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三島由紀夫の戦後処理。戦争という破滅を常に目の前にしていた時代が過ぎ、平和で凡庸な世界に折り合いをつけて生きるために、三島は1100枚を要した。結局、筋肉でもボクシングのパンチでもなく、一輪の水仙の花がそのバランスをとらせるツールとなることが、一番三島らしい。水仙とはナルキッソスの変身した花である。
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好きじゃなかったから六ヶ月ぐらい読んでいたじゃないよ〜本当に大好きだったけど、長くって集中力はたくさん必要だった :P
この本はなぜ英語に翻訳されっていないかは全然わからない。三島由紀夫の本の中僕の一番好きになったかなと思っている、けど禁色...
問題は一つしかない:なぜ頂戴、一寸、仏蘭西、長椅子、紐約、桑港などの言葉を漢字で?あぁ、勉強になった。 -
鏡子の家に集まる四人の青年それぞれが社会に対する閉塞感を描いた作品。拳闘選手の大学生峻吉は「その壁をぶち割ってやるんだ」と拳を握り、俳優志望の美青年収は「その壁を鏡に変えてしまうだろう」と怠惰な気持ちで思い、童貞の日本画家夏雄は「その壁に描くんだ」と熱烈に考え、世界の崩壊を信じるエリートサラリーマン清一郎は「俺はその壁になるんだ。俺がその壁自体に化けてしまうことだ」と考える。
それぞれがそれぞれの方法で壁乗り越えようとする物語。
個性の違う四人の主人公それぞれに三島由紀夫本人が凄く出ていて、どの主人公も三島由紀夫の分身に見えた。
とても読みやすくて一気読めました。三島由紀夫の美しい文章はそのままに、面白さキチンとある作品で、三島由紀夫読み始めたい方にもオススメです。 -
旧版
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大変だった。というのも特に主人公が設定されている訳ではなく、4つの物語が平行しているので難しかった。
四人の青年が壁にぶつかり、それを乗り越えようとする話。壁の中身やその乗り越え方は4通りある。うーん。
最後の犬がたくさん入ってくる場面は何を意味しているのだろうか。 -
変容の物語だった。極端な思想に囚われるひともいたけれど、それも含めて、誰も彼も初めの頃とは知らぬ間に変わってしまうのだ。根っこに共通の思い出とか世界があって、それが拠り所になっていても、先へ先へ向かう道すがら、新たな出会いや心境の変化でまったく変わってしまうのだ。画家のみた風景の描写が美しい。肉体の描写も実に生々しく想像させる。
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三島再読第4弾。
やっぱり、かなり好きな作品かもしれない。4人の青年が鏡子の家を軸にして集う物語。4人それぞれ全く違う人生を歩んでいるのだが、根っこみたいなところでは共通の人種。
こういう緻密な物語を書くあたりはやっぱりすごい。
しかし、久しぶりに読んで、なんだか体現止めが連発されていて(意図的なのだろうが)文体が三島っぽくないと思ったりした。刹那的な感じを出そうとしすぎて鼻についた・・・とも。 -
「男の裸体と女の裸体とどちらが美しいか」
「皆は知らないが、俺にとっては、女の裸体は猥褻なだけさ」 -
四人の青年が抱く生における哲学!
それを貫き徹す狂気!
それを描く三島先生の圧倒的な筆致!
面白かった。
特に清一郎編が好き。