鏡子の家 (新潮文庫)

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  • Amazon.co.jp ・本 (640ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101050065

感想・レビュー・書評

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  • むちゃくちゃ面白い。一番好きなのは夏雄。音楽家のclarkのインタビュー(timeout tokyo)を読んでいると、夏雄のことを思い出す。天才ゆえのピュアで危なっかしい制作への情熱。

    下記はclark
    「純粋なカオスだよ。満足する答えを出すのが難しいな。カオスや状態の領域でいえば、僕は間違いなくカオスの端にいる。」
    「何事もなぜやるかを本当に理解している人って存在するんだろうか?それを把握したと思えばすぐに、現実というタマネギの別の皮の層みたいなものが現れて、無限の深淵に直面するよ。」
    「渋谷のホテルのエレベーターに乗ったまま作曲したら、音楽にどんな効果が出るだろうって思って」

    10年前くらいに読んだからまた読み直したい

  • 同じところへ集っていた5人が、最後は別々のところに辿りついていて、そこがリアルだなと思った。

  • 解説者が「メリイ・ゴーラウンド方式」と評した手法が登場人物の栄華と衰退をを明らかにしていく。
    返す返すも1970年が無ければ、今、どんな評価と作品になっていただろう。

  • いまさらいうのもなんだが、三島由紀夫は日本の大作家である。堪能した。

    三島由紀夫の作品中での位置づけはどうなのだろう、精緻な構想といい、ひねり方といい、技巧に長けていて、うまいストーリーではある。もっと早く読めばよかった。

    或る時代(1954年ころ、朝鮮戦争後の退廃した世代相)の中で悩む青年たちを描き出している。

    いつの時代だとて青年は懊悩するものだ。
    この時代はこんなに退廃の気分がしていたのか?中学生になったばかりの私にわかろうはずが無いが、こんなデカダンスの世だったのだろうか、ことさら作者が借りているのか、さておいて。

    四人の個性的な青年のストイシズム追求の物語が、解説者(田中西二郎)言うところの「メリ・ゴオ・ランド方式」でぐるぐるまわる。
    エリート社員杉本清一郎(会社で出世するタイプの)、大学のボクシングの選手深井峻吉(後にプロ入り)、日本画家の山形夏雄(美的感覚が天才的な)、俳優舟木収(美貌だが配役をもらえない)ら四人が、鏡子というマダムのサロンを中心にして桜の季節から2年後の桜の季節までの、浮き沈みの物語。

    ストーリを追う小説でないことは確かで、それぞれの美意識を四人の青年がストイックに追求した結果が果たしていかなるや?いや、鏡の役割の鏡子も含めて五つの唯美意識のゆくえがテーマである。

    それは三島由紀夫の芸術の唯美家としての姿でもある。凡庸な私がどれほど理解できたかは別として、追体験の芸術的苦悩は味わうに興ありである。

  • 【貸出状況・配架場所はこちらから確認できます】
    https://lib-opac.bunri-u.ac.jp/opac/volume/713388

  • 三島由紀夫の特番を見て購読。金閣寺の後に書かれた本で、当時も大注目されたが、評価は二分されていたらしい。4人の主人公(エリートサラリーマン、ボクシング一筋の選手、才能ある若き芸術家、売れないが美貌の役者)が、その友人である資産家の女性(鏡子)と、それぞれの生き方を語り共有する形式。親しい友人だが互いに干渉しないのがルール。三島はこの作品でも「美とは何か」「人生の意味とは何か」「哲学を持たない社会の劣悪さ」を描こうとしているのだと思う。また、それぞれが干渉しないというのは、友人であっても、根底では分かり合えないのだということなのか。5人のうち、4人の人生は破綻する。これは、のちの三島の行動を知っているだけに、何かの暗喩に思えてならない。金閣寺でも「世界を変えるのは理念か行動か」という問いがあったが、現実の社会はそんな単純なものではない。この本ではその2つが5つになっているが、それでも生き残るのは1つというのは変わらないのか。

  • 文体と構成とキャラの勝利、、早くも2021年ベストに出会ってしまった予感。成立しないとわかっていても第三部を求めてしまうほどに良い、、
    解説にあるように、三島は「現実の印象を"色彩と形態の原素"へと還元する作業の代りに、"観念とイメイジの言葉"へと還元する散文の芸術家」であり、その「磨かれた語彙にくるまれた影像が活字の奥から脳髄にしみこむ」感覚を一度味わうともはや他の作家が読めなくなる。。この作品を読むと一層強く実感する。
    これは前提知識なしに挑むのが楽しい。つまらないページが一切ないし一種劇的な展開に痺れる。なんとなく鏡子と夏雄の事物への見惚れ方が一番近いのかなと思ってたけど清一郎じゃないんだ…!最後らへんは藤子目線で清一郎がほんとに崩壊して乱れる姿を見たくなったが、、まあ少し傷ついたところも見れたから良しとしよう。峻吉にしても収にしても、わたしは全員違った意味でかなり好きで、それぞれに三島のある一面が投影されていたように思う。鏡子には遠い祖先のような親近感を抱いた…あらゆる偏見から解き放たれた空間、他人の情念を通して何ものにもとらわれずに何ものをも愛しているような感覚、…そして結局人生という邪教を信じることにするという。繰り返し、退屈、単調さは永く酔わせてくれるお酒。

  • 前半は、読んでて苛つきを感じることが多かった。理想を抱きながら、世の中の雑事に対して超然とした態度を取っている登場人物たち。そのシニカルな姿勢、世の中の破滅を信じながらも生活の破滅の心配はないという甘えた心。
    後半になると、それぞれの登場人物たちは、冷笑し無関心でいた世の中から手の平を返され、ナイフを突きつけられはじめる。その時に感じた胸のすくような感じ。他者の苦境に「ざまぁみろ」と思うような心境。読後、自分の中の一番汚くて醜い部分を、まるで鏡のようにこの小説に映し出された気がして、なんとも言えない気持ちになった。

  • 亡くなる5年くらい前の作品?
    当時体を鍛えていたはずなので、そのようなことが反映されている

  • 1954年の若者たち。冒頭、都内をドライブ中に勝鬨橋が跳ね上がる日常風景が新鮮。

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著者プロフィール

本名平岡公威。東京四谷生まれ。学習院中等科在学中、〈三島由紀夫〉のペンネームで「花ざかりの森」を書き、早熟の才をうたわれる。東大法科を経て大蔵省に入るが、まもなく退職。『仮面の告白』によって文壇の地位を確立。以後、『愛の渇き』『金閣寺』『潮騒』『憂国』『豊饒の海』など、次々話題作を発表、たえずジャーナリズムの渦中にあった。ちくま文庫に『三島由紀夫レター教室』『命売ります』『肉体の学校』『反貞女大学』『恋の都』『私の遍歴時代』『文化防衛論』『三島由紀夫の美学講座』などがある。

「1998年 『命売ります』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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