潮騒 (新潮文庫)

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  • Amazon.co.jp ・本 (224ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101050072

感想・レビュー・書評

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  • 三島由紀夫、金閣寺と雰囲気が異なり、健全・道徳的に初恋を描写した、三重県・歌島の小さな島が舞台。新治・18歳の漁師が暮らす。ある日新治は島で初江という少女に出会う。新治は動悸がするぐらい初江が好きになり仲を深める。雨の降る日に、2人は待ち合わせをし、初江が濡れた肌着を脱いで乾かし、新治に裸を見られた初江は、新治にも裸になるように言う。2人は抱き合う。「今はいかん。私、あんたの嫁さんになることに決めたもの」。しかし2人は黒い噂で引き裂かれるが、、、ラスト2行、新治の言葉から、新治の心の余裕が垣間見えた。⑤

  • 青々と力強い海に囲まれた日本の南の小島“歌島”を舞台に、若くたくましい漁夫・新治と美しい少女・初江が織り成す恋模様。

    初めて目にした時から相手のことばかり考えてしまう初恋の戸惑いや、並んで歩くだけで胸が高鳴り続ける様子など、純朴な青年と可憐な少女の瑞々しく、そして真っ直ぐな想いが見て取れます。しかし閉鎖的で大人の意向が絶対だったこの時代、二人の仲に様々な試練が舞い込むことに…。
    荒れ狂う海を相手に雄々しく向かう新治、彼を案じながらも凛と構えた初江、時に穏やかに時に猛威となる海など、人や自然の持つストレートな美しさが光ります。二人の仲を邪推して割って入ろうとする安夫の分かり易いまでの悪役っぷりが、ますますこの二人を眩しく穢れのないところまで押し上げているように思います。

    三島由紀夫が古代ギリシアの散文作品から着想を得たという本作。
    毒素ゼロ、純愛にして爽やかな風が吹き抜けるような心地よい読後感が残りました。

  • 初、三島作品。
    純粋、誠実、熱心、懸命、
    色んな意味を感じる。

    いつの時代になっても
    必要なもの。

    島の外で経験したことが、
    自身を成長させ
    島のありがたみを感じるようになる。

    幸せは誰かが運んでくれるものではなく、
    自分でつかみてるもの
    その事に気づいた人を
    大人と呼ぶのかもしれない。

  • 久しぶりに読んでみた。
    もう10年以上も前に読んだけれど、昔はどんな気持ちになったのだろう。
    今は読み進むにつれ、2人の純粋さに胸が高鳴る。
    初江の父、照吉が新治を認めた時の台詞。
    泣けてきた。昔は泣かなかったと思う。
    いろんな思いが交錯する作品だった。

    今年は自分の本棚にある物を、読み返してみようと思う。

  • 大変面白かった。
    三島由紀夫の代表作であり、堅牢な構成で爽やかに書き上げられた作品だった。
    あらすじも知らなかったので、それなりにハラハラしながら読んでしまった。

  • 現代の作家とはやっぱり扱う語彙が違うなというのが第一印象。
    小さな離島の中で起きる男女の恋愛物語だが海や山などの自然の描写がとても素敵。読みながらまるで釣りに行ったことがあるかのように鮮明に島の情景を思い浮かべ、その美しさに酔いしれていた。エッセイと小説の文体が違うように感じられるのもまた面白かった。

    これだけの文章力をもってしてヒロインのおっぱいを表現するシーンは超えちえち。

    • てぃぬすさん
      最後の1文でこの本読みたくなった。
      最後の1文でこの本読みたくなった。
      2019/12/27
  • 三島由紀夫作品としては、異例の作品らしいが、美しい自然を背景に完璧とも言える構成で美しい文章によって、純真な二人の恋愛を堪能できた。

    しかしながら、構成が余りにも完璧過ぎて隙のない分、十分に物語に入り込みつつ、何処か外側から景色を眺めているような感もあった。

  • 最高峰の純愛物語。

    私は題名がサビで連発される曲より、さりげなく配置される曲が好き。

    『潮騒』における潮騒の立ち位置も絶妙。決して前に出ず、でも常に二人を見守る象徴として何色もの表情を見せる。

    一番好きな一節↓
    「そうして岸には幸福な少女が残った」

  • 崎嶇:きく。凸凹で険しいさま。困難なこと。
    朋輩:ほうばい。一緒に仕事をする仲間。同じ階級や職業の人。
    昵懇:じっこん。心安くしていること。間柄が親しいこと。
    尋:ひろ。両手を左右に伸ばしたときの指先から指先までの
      長さ。1尋=1.515 m=5尺。水深を表す際に用いる。
    諳んずる:そらんずる。そらで覚える、暗誦する。
    乱杭歯:八重歯。
    気乗薄:きのりうす。気が進まないこと。
    観的哨:昭和4年に旧陸軍が伊良湖から撃つ大砲の試射弾
        の弾着観測をしたコンクリート製の施設
    糧秣:りょうまつ。兵員の食糧と軍馬の秣(まぐさ)。
    祥月:故人が死去し一周忌以降の、亡くなった月。
    殷賑:にぎやかで、繁盛しているさま。
    音なう:おとなう。来訪を告げる。音がする、音を立てる。
    東風:こち。
    光芒:こうぼう。光のほさき。彗星のように尾を引いて
       見える光の筋。
    聳やかす:そびやかす。高くする。肩をいからせる。
    忸怩:じくじ。自分の行いを心中で恥じるさま。
    訥々:とつとつ。口籠もりつつ話すさま。
    暁闇:ぎょうあん。月のない明け方。
    厠:かわや。便所。
    去来:行ったり来たりすること。思い悩んだり消えたり
       すること。
    跳梁:ちょうりょう。おどり跳ねること。
    狡智:こうち。ずる賢い考え。
    無聊:退屈。わだかまりがあって楽しまないこと。
    鄙びる:ひなびる。田舎らしい感じがする。
    逡巡:しゅんじゅん。決断を躊躇うこと。ぐずぐずすること。
    憤懣:ふんまん。いきどおり悶えること。
    寛恕:かんじょ。咎めずに赦すこと。
    かわたれ時:彼は誰時。
    模糊:もこ。はっきりしないさま。
    無辜:むこ。罪のないこと。
    颱風:台風。
    船首:みよし。艏。
    嘶く:いななく。馬が声高く鳴く。
    徒爾:あだごと。徒事。無駄なこと。情事。
    頡頏:けっこう。拮抗。互いに優劣がないこと。
    穿つ:うがつ。孔を空ける。人情の機微を捉える。
    衷情:ちょうじょう。うそいつわりのない心。誠意。
    義侠:ぎきょう。強者をおさえ、弱者を守ること。
    揮毫:きごう。文字や書画をかくこと。
    盤根錯節:入り組んでいて解決の困難な事柄。

    払暁:ふつぎょう。暁。黎明。
    帆翔:はんしょう。鳥が気流に乗って翼広げたまま、
       羽ばたかせずに飛ぶこと。
    漁る:すなどる。
    佇立:ちょりゅう。ちょりつ。しばらくの間立ち止まって
       いること。たたずむこと。
    落莫:らくばく。ものさびしいさま。
    粗朶:そだ。切り取った木の枝。薪などに用いる。
    一代分限:その代一代で財産を作り上げた金持ち。
    狷介:けんかい。自分の考えに固執し、人の言うことを
       聞かないこと。
    澄明:ちょうめい。すみきって明るいさま。
    収攬:集めて自分の手に握ること。


    なっちゃんさんへ
    おもしろいですよね。とても薄い本なのであっという間に読めるところ、調べながら進めると勉強にもなるのでおすすめですよ◎
    名著とよばれる理由が分かりました。
    純情で透き通った、青い海の物語です。

    • なっちゃんさん
      こんな難しい漢字が出てくるなんて、勉強になります。
      こんな難しい漢字が出てくるなんて、勉強になります。
      2020/03/05
  • 三島ってこんな作品書くの?!と、初の三島文学。なるほどこの作品が特殊であることはレビューでよく分かりました。この話は大変わたくし好みでした。清らかで美しい恋愛小説。俗世を離れた島という場所も良いです。それを構築していく言葉や表現も大変彩り深いものでした。しかし通俗小説という評価は真っ当でしょう、この”おはなし”からすれば。

    ただこの通俗小説は私の中でストンと物語を終わらせてくれませんでした。最後の一文、これは二人のこれからの闇を暗示しているのでしょうか?それとも新治の一人の男としての成長を示しているのでしょうか?うーん、今の所よく分かりません。この話が好みだと感じる読者層の自分としては後者を希望しますがどうなんでしょうね。

著者プロフィール

本名平岡公威。東京四谷生まれ。学習院中等科在学中、〈三島由紀夫〉のペンネームで「花ざかりの森」を書き、早熟の才をうたわれる。東大法科を経て大蔵省に入るが、まもなく退職。『仮面の告白』によって文壇の地位を確立。以後、『愛の渇き』『金閣寺』『潮騒』『憂国』『豊饒の海』など、次々話題作を発表、たえずジャーナリズムの渦中にあった。ちくま文庫に『三島由紀夫レター教室』『命売ります』『肉体の学校』『反貞女大学』『恋の都』『私の遍歴時代』『文化防衛論』『三島由紀夫の美学講座』などがある。

「1998年 『命売ります』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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