美徳のよろめき (新潮文庫)

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著者 : 三島由紀夫
  • 新潮社 (1960年11月8日発売)
  • Amazon.co.jp ・本 (190ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101050096

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美徳のよろめき (新潮文庫)の感想・レビュー・書評

  • 背徳行為すら美しい。
    おそらくそれは、主人公の節子が
    地位の高い女性であったからこそ。
    そして著者の文章力の巧みさがあったからこそ。

    ドロドロしていて、
    嫉妬もあるのにそれさえも
    美しいものへと変化させてしまう
    まさに言葉の魔術師。

    扱われているものはタブー。
    ですが、その感情を
    よく捉えています。

  • 「美徳はあれほど人を孤独にするのに、不道徳は人を同胞のように仲良くさせる」
    今の私にはこの言葉の意味がとてもよくわかる。そんな告白はここでは置いておいて。(笑)

    この作品を読んでも三島がいまいち女の子に受け入れられないのがわかる。三島のエロは男目線なのだ。この作品を読んでよくわかった。

    育ちの良いお嬢様がそのまま奥様になったような主人公で有り人妻である節子よりも、その姦通相手の土屋に心を置き換えてしまう私はやっぱり人でなしなのかと思ってしまう……

    一度、快楽の罠にはまってしまうとそこから這い出ることがいかに困難なことか。それでは、その快楽にどっぷりと使ってしまえばいいと言っても、快楽は無限であり、もっともっと!と次第にエスカレートしてしまい、快楽が快楽でなくなってしまうことを知るにつけ、やはりそれも苦しい。

    土屋との関係を清算しようと悩み、思いを打ち明けた松木老人は言う。
    「私はあなたに道徳を、道徳という言葉が悪ければ、もっと自分を追いつめたところに生まれる力を使うようにおすすめする」
    身も心もぼろぼろの節子に対して。
    それほどまでに快楽が心をむしばむ力は大きい。

    でも。これほど苦しむ節子は、身体がどれほど汚れていても、その精神はどこまでも美しい、と思う。

  • 節子はこの手紙を出さずに、破って捨てた。

  • 人妻の不倫を題材にした小説など星の数ほどこの世に存在しているだろう。
    そういうものを意識的に避けてきた自分が、初めて望んで手に取った不倫小説である。
    内容はともかく文章が凄い。
    作者が三島氏でなければ、きっと読みおおせる事はできなかったと思う。

    何の不満も無い安定した日常生活に飽きた有閑夫人が、かつて一度だけ唇を許した男と再会し、逢瀬を繰り返すうち次第に彼におぼれていく。
    倫理を犯しているにもかかわらず、主人公に嫌悪の感情は湧いてこなかったが、その不倫相手については虫唾が走るほど嫌だった。結局この男は主人公を体のいい性欲処理の相手としか見ていなかったからである。
    そんな下劣な男に惚れた主人公は本当に馬鹿な女性だが、身も心もぼろぼろになって最後自らを律する強さを奮い起こし、ただ一人のたうちまわりながらもこの関係に終止符を打ったのには好感が持てた。
    不倫小説だというのに不思議な爽快感のうちに読み終わった作品であった。

    最後の一行は見事だった

  • 三島由紀夫はなんとなくめんどくさくてややこしそう。そんな先入観から今まで避けてきました。ところがこの春、職場で異動ならぬ部屋の移動があちこちであり、断捨離で廊下に放り出された箱に「ご自由にお持ち帰りください」の文字。その中に三島由紀夫がある。読んでみなくてはといただいてきました。

    本作は約200頁という薄さにも惹かれて頂戴したのですが、薄くても読みにくい作品というのはごろごろしていますから、少し不安。しかし冒頭から引き込まれて、三島由紀夫がこんなにも読みやすく、かつ品のある文体の人だったのかと驚きました。まったくもって失礼です、私。今まで読まずにすみません。

    良家のお嬢様に生まれついたヒロイン節子は、純真無垢なまま、親の決めた相手と結婚。跡取りにも恵まれる。結婚後数年が経ち、いろいろとマンネリ化してきたころ、ふとファーストキスの相手である土屋のことを思い出す。あれはとてつもなくつたないキスだった。今の私なら土屋にキスの手ほどきすらできるだろう。そんなことを思っていた折り、土屋と再会する。土屋に求められても拒絶すればいい。あくまで優位に立つ自分を創造する節子だったが、がつがつ来ない土屋にいらだち、自分から行ってしまう。秘密を知るのは親友ただ一人。夫を騙しつづけ、まだ幼い一人息子は母の行動を知ってか知らずか、いぶかしげなまなざしを節子に向ける。

    私はこれまでの人生で、嫉妬の感情を持ったことがないであろう女性に2人、会ったことがあります。育ちのいい人というのはこういう人のことをいうんだと驚きました。嫉妬などする必要もなく、嫉妬したことがないから、それがどういう感情なのかもわからない。このヒロイン節子もそもそもは同様の女性だという設定ではありますが、著者自身がその感情をじゅうぶんに有しているせいか、嫉妬めらめらというところが少しおかしくて、しかしそれは本作にマイナスではなく、面白く読めます。

    「よろめき」という言葉を生み出した不倫小説であるにもかかわらず、ヒロインがどこまでも気高さを失わない(と自分では思っている)せいか、切なさや辛さは感じません。ただただ三島由紀夫の表現に驚かされるのみ。性描写にしても、こんなにも直接的でなく美しく、誰が書けましょう。たとえば「黙っている男の無言の暗い熱意のしるしに、ほとんど憐憫と呼んでもいいいじらしさで触れるのであった」。凄いです。

    「偽善にもなかなかいいところがある。偽善の裡に住みさえすれば、人が美徳と呼ぶものに対して、心の渇きを覚えたりすることはなくなるのである」。この一文が強く心に残りました。本能のままに行動に出て三度もできちゃって、そのたびに思い悩んで結局堕ろすヒロインは学習力なさすぎでどうかと思いますが、そういうところにおかしみすら感じます。読んだこともないのに抱えていた苦手意識を払拭して三島由紀夫に手を出すきっかけになりそうな作品です。

  • 三島由紀夫って男と女の人生両方を生きてるんじゃないだろうか。

    そう思わせるくらい彼の恋愛における心情描写は巧みで繊細。言葉選びの美しさもずば抜けている。

    主人公の人妻、節子の浮気の話。ただそれだけ、そんなありふれた背徳を丁寧に書いて感情のよろめきを精緻に紙の上に著せる力量。

    三島が書けば何でもこうなってしまうんだろうなぁ

  • 姦通を泥々した背徳ならず、聖なる美徳にすら感じさせる。作者にとっての美の高みを感じる。13.12.20

  • 不倫小説。
    愛人との逢引まで、次のデートまでに高まる女性心理の描写が的確。
    貞操な妻から堕落するまで、愛人土屋を愛し、愛欲に溺れ、そして別れるまで。

    愛とはなんぞや、と。考えさせられる。

    不貞行為でも、そこには幾多の葛藤があるのだ。
    純粋無垢な子供・菊雄からの軽蔑ほどの非難はないだとか。
    しかし、節子さん、避妊くらいしようよと。

    最後に菊雄に当てた手紙を送らずに破り捨てる。
    そんな終わり方もすてき。

  • 不倫小説。
    主人公の問題提起・自己完結で終わっている。

    節子の道徳観と、そのよろめき具合が絶妙だから読めたものの、もし他の作家が同じような不倫小説を書いていたら投げ出していたと思う。

  • 不倫とか浮気とかの境界線て人それぞれだけれども、この主人公の感覚って言うのはある意味、人の基準になるのかな、と思った。
    実際にやっている事はともかく。

    また、世間擦れしていない上流階級の持つ独特な単純さと残酷さと、そこから生まれる優雅さ。これらは危うく、甘美なものなのだな、と思った。

    でも、何度も中絶する感覚っていうのは今の時代には無い気がする。(昔も受け入れられてはいなかったのでしょうが)

  • なぜこんなに女性の内面を表現できるのか、不思議でたまらない。恋の始まりをコントロールする快感と終わりをコントロールし切れない切なさ、 でもそこで疲弊することすら味わってしまう優雅なエゴ。 すべてに渡ってエロくて美しい。

  • 2017年10月7日に紹介されました!

  •  生れも育ちもよく、豊かな感官を持つ優雅な節子。妻であり、母であり、堅固な道徳観念を持つ彼女が、不貞の海に溺れてゆく過程を、その心理を描いた小説である。彼女の心の機微を「美徳のよろめき」と言い表したのはさすがとしか言えない。
     三島は、彼女を「聖女のよう」と直喩する。道徳に背を向けながらも、無垢さを失わない。さながらミュージカル女優のように自分の美しさを表現している。土屋なんて自分の意思を示さず、肉欲だけで避妊すらしない最低男なのに、彼女の目というフィルターを通せば美しさを湛えてしまう。
     物語としてはシンプルだけれど、かくも美しさを湛えるのは著者の筆力あってこそ。高級食材や特別な調味料を使っていない美味しい料理みたいな小説だった。

  • コメディ小説。面白かったけどテーマに対してちょっとケレン味が強すぎるように感じた。

  • エンタメ小説として面白く読んだ。

  • 節子はん…。男がみんな土屋のように思えてきて憎い。でも、結局男性作家が書いた小説だな、という感じもする。

  • 久々に三島由紀夫を読んだ。
    氏の特徴である背徳感の書き方がよく現れてる作品だった。
    北原武夫による解説がとてもよかった。

  • 美徳はあれほど人を孤独にするのに、不道徳は人を同胞のように仲良くさせると。

    節子は海や日光や風や、すべて官能に愬える自然が好きだったから、忍耐や親切という言葉に、おそるべき人工的なものを見た。

    彼女がこの年になってはじめて知ったことだが、嫉妬の孤立感、その焦燥、そのあてどもない怒りを鎮める方法は一つしかなく、それは嫉妬の当の対象、憎しみの当面の敵にむかって、哀訴の手をさしのべることなのである。はじめから、唯一の癒し手はその当の敵のほかにはないことがわかっている。自分に傷を与える敵の剣にすがって、薬餌を求めるほかはないのである。

    われわれが未来を怖れるのは、概して過去の堆積に照らして怖れるのである。

    考えること、自己分析をすること、こういうことはみんな必要から生まれるのだ。

    自然はくりかえしている。一回きりというのは、人間の唯一の特権なのだ。

    世間を味方につけるということは奥様、とりもなおさず、世間に決して同情の涙を求めないということなのです。

  • なんという話だ・・・

  • お金持ちの夫人の不倫の話。
    三島由紀夫という男が書いた夫人の話。
    お見合いで結婚し、子供を一人つくり、何の不自由もしていなかった夫人の初めての恋。その恋している夫人の気持ちがすごく切なく、ためになった。
    でも、中絶を年3回はいかんでしょ…

  • 学生の頃、「よろめき」って言葉を随分意識したような記憶があります(笑)還暦過ぎた今も、未だよろめいた経験ができていませんが~~~(^-^)

  • 世間知らずの人妻が、不誠実な男に惚れ込んで、空回りしている、話
    男目線で不倫している女を描くとこうも滑稽になるのか
    美徳がよろめいただけでよかったね

  • 2015.10.1
    タイトルが絶妙。
    堕胎

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