美徳のよろめき (新潮文庫)

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著者 : 三島由紀夫
  • 新潮社 (1960年11月8日発売)
  • Amazon.co.jp ・本 (190ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101050096

美徳のよろめき (新潮文庫)の感想・レビュー・書評

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  • 2017年10月7日に紹介されました!

  •  生れも育ちもよく、豊かな感官を持つ優雅な節子。妻であり、母であり、堅固な道徳観念を持つ彼女が、不貞の海に溺れてゆく過程を、その心理を描いた小説である。彼女の心の機微を「美徳のよろめき」と言い表したのはさすがとしか言えない。
     三島は、彼女を「聖女のよう」と直喩する。道徳に背を向けながらも、無垢さを失わない。さながらミュージカル女優のように自分の美しさを表現している。土屋なんて自分の意思を示さず、肉欲だけで避妊すらしない最低男なのに、彼女の目というフィルターを通せば美しさを湛えてしまう。
     物語としてはシンプルだけれど、かくも美しさを湛えるのは著者の筆力あってこそ。高級食材や特別な調味料を使っていない美味しい料理みたいな小説だった。

  • コメディ小説。面白かったけどテーマに対してちょっとケレン味が強すぎるように感じた。

  • 男が想像する女

  • 三島由紀夫はなんとなくめんどくさくてややこしそう。そんな先入観から今まで避けてきました。ところがこの春、職場で異動ならぬ部屋の移動があちこちであり、断捨離で廊下に放り出された箱に「ご自由にお持ち帰りください」の文字。その中に三島由紀夫がある。読んでみなくてはといただいてきました。

    本作は約200頁という薄さにも惹かれて頂戴したのですが、薄くても読みにくい作品というのはごろごろしていますから、少し不安。しかし冒頭から引き込まれて、三島由紀夫がこんなにも読みやすく、かつ品のある文体の人だったのかと驚きました。まったくもって失礼です、私。今まで読まずにすみません。

    良家のお嬢様に生まれついたヒロイン節子は、純真無垢なまま、親の決めた相手と結婚。跡取りにも恵まれる。結婚後数年が経ち、いろいろとマンネリ化してきたころ、ふとファーストキスの相手である土屋のことを思い出す。あれはとてつもなくつたないキスだった。今の私なら土屋にキスの手ほどきすらできるだろう。そんなことを思っていた折り、土屋と再会する。土屋に求められても拒絶すればいい。あくまで優位に立つ自分を創造する節子だったが、がつがつ来ない土屋にいらだち、自分から行ってしまう。秘密を知るのは親友ただ一人。夫を騙しつづけ、まだ幼い一人息子は母の行動を知ってか知らずか、いぶかしげなまなざしを節子に向ける。

    私はこれまでの人生で、嫉妬の感情を持ったことがないであろう女性に2人、会ったことがあります。育ちのいい人というのはこういう人のことをいうんだと驚きました。嫉妬などする必要もなく、嫉妬したことがないから、それがどういう感情なのかもわからない。このヒロイン節子もそもそもは同様の女性だという設定ではありますが、著者自身がその感情をじゅうぶんに有しているせいか、嫉妬めらめらというところが少しおかしくて、しかしそれは本作にマイナスではなく、面白く読めます。

    「よろめき」という言葉を生み出した不倫小説であるにもかかわらず、ヒロインがどこまでも気高さを失わない(と自分では思っている)せいか、切なさや辛さは感じません。ただただ三島由紀夫の表現に驚かされるのみ。性描写にしても、こんなにも直接的でなく美しく、誰が書けましょう。たとえば「黙っている男の無言の暗い熱意のしるしに、ほとんど憐憫と呼んでもいいいじらしさで触れるのであった」。凄いです。

    「偽善にもなかなかいいところがある。偽善の裡に住みさえすれば、人が美徳と呼ぶものに対して、心の渇きを覚えたりすることはなくなるのである」。この一文が強く心に残りました。本能のままに行動に出て三度もできちゃって、そのたびに思い悩んで結局堕ろすヒロインは学習力なさすぎでどうかと思いますが、そういうところにおかしみすら感じます。読んだこともないのに抱えていた苦手意識を払拭して三島由紀夫に手を出すきっかけになりそうな作品です。

  • エンタメ小説として面白く読んだ。

  • 節子はん…。男がみんな土屋のように思えてきて憎い。でも、結局男性作家が書いた小説だな、という感じもする。

  • 久々に三島由紀夫を読んだ。
    氏の特徴である背徳感の書き方がよく現れてる作品だった。
    北原武夫による解説がとてもよかった。

  • 美徳はあれほど人を孤独にするのに、不道徳は人を同胞のように仲良くさせると。

    節子は海や日光や風や、すべて官能に愬える自然が好きだったから、忍耐や親切という言葉に、おそるべき人工的なものを見た。

    彼女がこの年になってはじめて知ったことだが、嫉妬の孤立感、その焦燥、そのあてどもない怒りを鎮める方法は一つしかなく、それは嫉妬の当の対象、憎しみの当面の敵にむかって、哀訴の手をさしのべることなのである。はじめから、唯一の癒し手はその当の敵のほかにはないことがわかっている。自分に傷を与える敵の剣にすがって、薬餌を求めるほかはないのである。

    われわれが未来を怖れるのは、概して過去の堆積に照らして怖れるのである。

    考えること、自己分析をすること、こういうことはみんな必要から生まれるのだ。

    自然はくりかえしている。一回きりというのは、人間の唯一の特権なのだ。

    世間を味方につけるということは奥様、とりもなおさず、世間に決して同情の涙を求めないということなのです。

  • なんという話だ・・・

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