獣の戯れ (新潮文庫)

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著者 : 三島由紀夫
  • 新潮社 (1966年7月12日発売)
  • Amazon.co.jp ・本 (181ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101050126

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獣の戯れ (新潮文庫)の感想・レビュー・書評

  • 嫉妬することのない妻・優子を嫉妬させたいがために他の女と関係をもつ逸平。そんな優子に同情をする学生・幸二。あるとき優子と幸二は逸平の他の女との情事の現場に居合わせる。話し合いも実を結ばず泣き崩れる優子を逸平が打ったのをきっかけに幸二はたまたま拾ってあったスパナで逸平を滅多打ちにする。出所後、優子の元に引き取られた幸二は、不随を抱え、失語症になった逸平に再会するが常に朗らかな微笑を湛えた彼は昔の逸平とは違っていた。逸平という失語症の「穴」を中心に回り出す新しい生活。幸せに感じられるその生活になぜか幸二は不信感を抱いていた・・・。逸平が本当に考えていたことは「死にたい」ということだけだったのか。それとも幸二が言ったように自分という存在を中心に優子と幸二にエロスを立ち回らせ楽しんでいたのか。それとも両方か。逸平を絞殺し逮捕された後、3人の墓を並べてくれと頼む優子と幸二。最後に優子が言う「わたしたち本当に仲がよかったんです。信じてください」という言葉がせつなかった。

  • 青年どもには解りえない大人の純愛物語である。尋常とアブノーマル。あなたはどちらですかと読者に問うている。

  • 今まで読んできた三島由紀夫作品の中では一番「それでどうなったの?」と思うことなく本を閉じることができた作品。

  • 奇妙で幸福な三角関係の果ての「愛」、そして「死」。決して有名ではない作品にも、三島由紀夫の魂はくっきりと描かれています。

  • どれだけ浮気を重ねても、決して嫉妬してこない妻の態度に実は自尊心を傷つけられている逸平。
    自らの自尊心を守るために妬心をひた隠す優子。
    そんな夫婦のひねくれた愛情…ここまでは分かりやすい。
    けれど、恵まれた居場所に寝そべりあらゆる精神的営為に嘲笑を浮かべる逸平の「心の腐敗」に嫉妬した幸二が、夫婦の関係に深く食い込んでいくあたりから、心情が複雑すぎて分からなくなってくる。

    罪を犯した人間の悔悟の先には幸福がある――そんな乱暴な論理に支配されてしまったかのような、不可解な関係性。
    3人ともが役を演じているみたいだった。

    罪によって結びつけられた関係性。
    彼らの飢えは、そうした特別な愛の形によってしか満たされなかったのか。

  • 「一体、あんたは何を望むんだ。できないことを知りながら誘惑する。逃げ場のないことを知りながら追いつめる。蜘蛛のほうがあんたに比べればまだましだな。蜘蛛はとにかく自分の糸を紡ぎ出して、獲物をからめ取ろうとするんだから。あんたは自分の空虚を紡ぎ出さない。ほんのこれっぽっちも支出しない。あんたは空虚の本尊、空虚の世界の神聖な中心でいたいんだから。」

    三島の中でもあまりない作風だな。『異邦人』みたい。

  • さまざまな意味合いにおいて、何かとわかりにくい作品だ。作中にも、その言葉は現れるものの、我々読者が表題から想像するものと、作品内容との間にはけっして小さくはない階梯がある。また、優子像もいわば曖昧さを残したままで物語は進行してゆく。そして結末部で結像する優子は、もはやほとんど別人であるかのようだ。一方の幸二の方は、はるかに諒解し易いが、それにしても行為と思惟との間には、やはり乖離があるだろう。結局、この作品全体を通して確かなものといえば、3つ並んだ墓石だけなのだ。物語の構成もまた、それを証左している。

  • 美しい・・・漁村に沈む夕日の描写から道端に転がる錆びたスパナの描写まで筆舌尽くしがたい美しさ。どの著作読んでも思うけど日本語の極地を行ってるね。全体に広がる深い悲しみと炎のような情欲。一葉の写真から物語が始まるのは太宰の『人間失格』を思い出させられたな。

  • 三島由紀夫第二弾。

    主人公がアルバイト?してた雑貨屋だかなんだかのきざな旦那とその嫁の話。
    主人公は嫁に惚れる。旦那は女遊びが激しくて、でもそれは嫁に嫉妬させたいから。ある日旦那の浮気現場に、主人公と嫁踏み込む。主人公が旦那をスパナで殴る。
    刑務所に行き、嫁が身元引き受け人に。刑務所から出てみると男は半身不随になっていた。最後は主人公と嫁で旦那を絞殺。主人公は死刑。嫁は無期懲役。

    ざっくり説明するとこんな感じの話でした。
    どうも、「俺は悔悟した人間で・・・」のくだりはよく分からなかった。
    でも三島作品の怖いところは、風景の描写などを読んでいるうちに、いつのまにか物語にすっかり取り込まれてしまい、自分でも思ってもみなかったような感情がわいてきてしまったりするところ。
    多分、半身不随の旦那を介護する嫁の姿を羨ましく思ったんだろう。

    最後に墓の写真を第三者が持っていくという終わり方も、やや唐突ではあったけれどもすごく良かった。

  • 前回読んだ本であまりにも気持ちが揺さぶられたので、反動で共感できない物を読みたくなり~のミシマ。いい感じに、心は一ミリも動かず安心して読めました(笑)

  • 三島由紀夫な要素が全て凝縮された作品。障害、殺人、禁欲、死、金、愛人。。。
    これらの要素を官能的に仕上げる才能は天才的。

  • あぁ、もう。これは。もわっとしてる。熱っぽい。
    じわじわとおちていくかんじ。しっとりと、ひたっていくかんじ。
    なまめかしい。

  • 大学生である主人公の幸二が、アルバイト先の夫婦の間にある失われた愛を取り戻すために、夫である逸平の浮気現場に妻の優子を連れて行った結果、傷害を起こし刑務所に入れられる。
    更正し、悔悟の念を抱き再びそ夫婦の元に戻っていく。
    そこから物語が始まります。
    優子への愛に目を向ければ向けるほど陥っていく、先にあるのは死のみ。
    死への共感でしか結ばれない。そんな悲劇を三島風に描いた作品です。

  • ふと思い立って、高校生以来の再読。綱渡りみたいなテンション、相変わらずの三島由紀夫節。少し集中的に再読してみようか、夏らしくないけど。。。いや、三島由紀夫のイメージはやっぱり夏か?

  • 01/24

    入間ブオフ 80円

  • 10135

    11/23
    長編第五作目。

  • 下手したら二時間サスペンスになりそうな感じ・・・。谷崎だったら似たような設定でもっとエロエロしたのかきそうと読みながら考えていた。

  • 個人差はあると思いますが、三島作品の中で最もエロティックさを感じます。障害、禁欲、犯罪、殺人、死・・・という要素が全て官能性に集約されてゆきます。やはり三島氏はかなりなエロ親父と言えます。褒め言葉なので三島ファン(私もですが)の方は怒らないで下さい。映画では優子役は若尾文子がやっており、この怖いお姉さん(おばさん?)を好演しております。

  • 戯れてみる?



    久しぶりに三島らしい小説を読んだ。
    色々なところを渡り歩いてきたせいか、だいぶ感じ方も変わってきたように思う。
    三島由紀夫という小説家は青春の作家なのだ。
    年とったな、と実感。





    一人の青年がいる。
    そして一組の夫婦がいる。
    まずはその愛憎模様。
    それがこじれて青年が夫をスパナで殴打する。
    不思議なことに物語はそこから始まる。
    服役した彼は出所後に、その愛憎劇を繰り広げた夫婦のもとに引き取られる。
    その時点で「どうかしている」といった話なのだが、そもそもの愛憎劇がそんじょそこらのものとは少し趣が違うのだ。
    愛憎劇は夫が仕組んだことであって、それは妻を嫉妬させるべき道具だったのだ。
    なんだか書いてみるとよくわからないかもしれないが、ともかく彼等の関係は仕組まれたことだったのだ。
    ならスパナは”誤算”なのではないか?
    とも言えるのだがどうやら違うらしい。
    スパナはいわばこの物語で言う『鍵』なのだ。



    仕組まれたこととはいえ、罪を犯した幸二には『悔悟』が存在する。
    そうして殴られた逸平には、後遺症による麻痺と”微笑”が用意される。
    ほとんど言葉も介さない、コミュニケーションもろくに取ることができないままに逸平は微笑する。
    仕組まれたことを知っていて、それに流されていた幸二にとってその仕打ちは激しい。
    今さらそれを詰問することもできない。
    だからこその”悔悟”なのだ。
    彼自身もこういっている。



    『玩具をこわした子供を本当に後悔させるには、ずっとその壊れた玩具と一緒に暮らさせることだ。
    けして新しい玩具を買ってやっちゃいけないんだ。
    あんたと一緒にいる限り俺は自分の壊れた人生とずっと仲良く暮らせるような気がしたんだ。』




    三人とも当初のそれとはまったく変わった人格となる。
    耐え忍ぶ妻たる優子は実業家でありながら奔放な存在に、
    罪を知らない青年であった幸二は慎ましい悔悟者に、
    策略を好む成功者であった逸平は穏やかな微笑に
    三人の生活はとても奇妙だ。
    しかし、絶妙なバランスをえる。


    『この幸福は疑いもなく、俺のスバナの一撃から生まれたんだ、』



    しかし、そんなものは続かない。
    当然だ。
    では何が亀裂を産むか、
    ”欲望”がだ。
    優子と幸二は逸平の策略を知っていた。
    しかしそれに流された。
    だからこそ、今更再び流されることはできない。
    しかし欲望が目の前を幾たびもちらつく。
    そのエロティシズムの描写は、まぁ相も変わらず絶品なんだこりゃ。
    そして、そこで”完成”するのだ。


    『俺たちが苦悩を捨て、自分たちの中にあんたと同じ寸法の穴をうがち、あんたの見ている前で、俺と優子が、何の煩いもなく、獣の戯れみたいに一緒に寝ればそれですむんだから。
    あんたの見ている前で、快楽の呻きをあげ、のたうちまわり、あげくのはては鼾をかいて眠ってしまえばいいのだから。』



    それはあたかも、今では微笑を残して世界を閉ざした逸平の王国。
    それに対するあがないと苦労。
    すべては逸平の戯れか?
    果てさてどうかな。
    世界を閉ざした逸平を前に、この解釈はご都合主義のようにも思えるやもしれない。
    無意識ではあるが幸二の復讐にもなりえることだから。
    でも違うのだ、いわば獣である彼には一度であっても飼い慣らされ屈辱の方が許せないのではないだろうか?
    いや、解放されないのだ。
    逸平の微笑を前になんの行為も意味をなさない。
    だから、玩具にとなった。
    それもなんと「悲しい玩具」になったことか。






    今回、この小説を読んで特に感じたのは”できすぎている”という事だった。
    構成が物語が完璧!
    と言うのではなくて、すべての材料を思うがままに充分に掻き集めて下拵えしてある。
    だがここまで来るとちょっとやりすぎだな、とも思えた。
    なんだろう漬かりすぎ、混... 続きを読む

  • 喧嘩ができたり、怒ることができたりするのはいいことだ。世界の未来は君の集中にあるも同然だよ。そのさいには尤も「白頭面皺専ら相待てり」だ。
    君には掌の中から世界が砂のように指のあいだをくぐり抜けてこぼれおちてしまうことはないだろう。

  • 少し前に読み終わったもの。
    夏のイメージの小説。むっとした暑気と、描かれている人物の情念のせいか。
    三島作品は「情念」とか「情欲」とかそういう暑苦しい言葉が本当にあうなあ。

  • 新潮文庫のこの三島の表紙には魔力があると思う。
    まとめて買ってしまったもの。

    2002年5月14日読了

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