美しい星 (新潮文庫)

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著者 : 三島由紀夫
  • 新潮社 (2003年9月発売)
  • Amazon.co.jp ・本 (370ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101050133

美しい星 (新潮文庫)の感想・レビュー・書評

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  • ある田舎の平凡な家族。彼らそれぞれがある時に円盤を目撃したことにより覚醒する。すなわち、自分らは実は宇宙人でそれぞれ違う惑星からやってきたのだと。そして、核兵器におびえる冷戦時代を背景に、人類に正体を隠しつつ彼らの人類救済事業がスタートする・・・。

    三島由紀夫にしては風変わりなシチュエーションの小説だが、SF小説を装いながら自分にはブラックコメディーの小説のように思え、エスプリの効いたユーモアには大いに楽しませてもらった。(笑)シチュエーションは奇想天外だが、きめが細やかで端正な文章表現から生み出される真面目な精神展開や情景描写にて、ここでもほとんど隙が無い完璧な美意識が展開されており、それがまた可笑しみをも誘っている。
    それぞれ別の惑星人だという家族それぞれの思惑の違いが物語の幅を大いに広げ、滑稽さも煽っているのだが、とりわけ、政治にうつつを抜かす長男と、宇宙人的(!)恋愛に浸る美少女の妹の様相は、一見風変わりではあっても、政治へ常に介在しようとする想いや、美少女の一途な破滅的な儚い精神と肉体といった三島節が炸裂していて、このあたりは三島ワールドテンコ盛りの楽しい世界でもあった。そして、彼らに横たわる精神の暗闇を乗り越えて、本性的には異なるはずの彼らの人間的な「家族の絆」の姿は、悲劇的な状況であったにもかかわらず、やはり喜劇のスパイスが充満していて、何とも微笑ましい限りであり、「家族」に対する挑発的な皮肉にも感じられた。
    中盤に登場してくる敵対勢力の異星人は人類を核兵器にて美しく滅亡せんと画策していて、これがまたぶっ飛んだ連中なので何とも可笑しい限りであったが、彼らとの終盤での人類救済か滅亡かの議論は、三島の人類論、人間論、近未来終末論が対比効果により縦横に展開される白眉なクライマックスであり、この小説の構成の力強さを示すとともに、三島の社会や政治やひいては人類全体への挑戦であり、こうした奇抜なシチュエーションの文学的成功であったともいえる。
    しかし、三島が一方で夢想した終末にはついに到らず、現在も漫然と進行している人間の歴史。本作に通底していた通り、三島も最後は個々の「絆」の確かさを理想として期待していたに違いない。
    異色作であるというが、三島ワールドのエッセンスと三島の思考が十二分に詰め込まれた出色な文学作品であったと思う。

  • 「美しい星」

    2017年5月26日公開
    キャスト:リリー・フランキー(主演)、亀梨和也、橋本愛、中嶋朋子
    監督:吉田 大八
    http://gaga.ne.jp/hoshi/

  • 宇宙人としての意識に目覚めた父。
    最初はその言い分を笑って聞いていた家族も
    じきに「霊感」に打たれて父に従う。
    彼ら四人家族は
    各々別の惑星から地球に飛来した霊魂を宿し、
    今では肉体も精神も「それ」に支配されている――

    という設定から、

    ・フォリアドゥならぬ四人狂気?
     folie à quatre(四人狂い)、
     folie en famille(家族狂い)と呼ばれる感応精神病。
     一人の妄想がもう一人に感染し、
     複数人で同じ妄想を共有することが特徴。

    ――かと思ったが、そうではなかった。
    至って真面目に
    人類を核戦争による滅亡から救うべく奮闘する父親と、
    俗物なりに夫を信じて寄り添う妻、
    それぞれ悩みを抱えながら
    父を支えようとする息子と娘の姿が描かれる。

    終盤の、父 vs 一家を敵視する仙台の三人組による
    人類の存亡を巡る激論の場の雰囲気は、
    埴谷雄高『死霊』を彷彿させる迫力だけれども、
    四人家族の言動は終始、特に父と娘が真剣な分だけ、
    どうしても滑稽に映ってしまう。

    とはいえ、第七章、
    作者自身の歌舞伎の演目「鰯売恋曳網」に
    言及する箇所の
    自虐的セルフ突っ込みは素敵(笑)。

    ところで、第一章(p.15)
    下記の「宇宙人」を「吸血鬼」に置き換えても
    話が通じるな……と、
    萩尾望都『ポーの一族』を思い浮かべて
    ニヤニヤしてしまった。

    -----
     宇宙人としての矜りを持つことは結構だが、
     少しでも傲慢になれば、
     それだけ裸になることであり、
     世間から見破られる危険も多い。
     自分たちの優越性は絶対に隠さねばならぬ。
     世間は少しでも抜きん出た人間からは、
     その原因を嗅ぎ出そうと夢中になるからだ。
    -----

  • ある家族が、UFOを目撃したことにより、自分達は地球人ではなく異星人だと自覚をするところから始まる話。
    三島が星新一や石原慎太郎らとUFOなどを研究していたことは知っていたので、三島ファンではあるがあらすじを読んで正直、大丈夫か…これはその会の会報誌に載せるだけにしておいた方が良かったのでは…と不安に思いながら読んだ。
    全くの杞憂だった…。
    何で?!
    何でこの始まりできっちり三島文学が仕上がってるの?!
    ああーやはりとんでもない文章力。
    敵対勢力が出てからが俄然面白い。
    クライマックスの論争は、反対のことを述べているけれど、どちらの考えも三島の中にあったのだろう。
    登場人物も、人のいやらしさまでそれぞれきっちり書き込んでいて、さすが。

  • 文庫本の巻末に付された解説のとおり、主人公の大杉重一郎と羽黒助教授一派との議論の応酬は、カラマーゾフの兄弟の大審問官の問いを想起させる、この作品の山場の一つなのは間違いない。

    だが私はこの激論のなかに、三島が昭和45年11月25日自衛隊市ヶ谷駐屯地で自衛隊員を前にバルコニーで行った演説や檄文の要素が多分に含まれていると感じ、戦慄した。
    自衛隊員に決起を促し、ひいては日本の再生を説いた三島の行動は、大杉が世界を救おうとしたのと同様に日本と日本人を救おうという発想によったのではないか。
    そして、その想いが聞き入れられないと判ったときの焦燥や諦念ののち、大杉が、蝋燭が燃え尽きる直前のような自分の生命の最後の時点で、改めて円盤が発する光を生命を賭して自分の目で確認しようとしたのと同様に、三島も、自衛隊員からの怒声を背に、総監室で自分の腹に刃を突き立てることで「瞼の裏に赫奕として昇る日輪」を自分の目で認めたのだろうか?

    家柄と天賦の才に恵まれ神童と目された一方で、三島は同年代の多くが兵役に行き自分もその番が回ってきたものの、体格で劣るため不合格となり兵隊を経験せず、そのため戦争によって世界が破滅し、自分を含めてすべてものが消滅することを夢見ていたと、別の何かで読んだ。

    つまり、三島自身が自分は一般の人間とは違う“何か”であるという視点で自分を見るような状況だったと言っても過言ではないだろうし(それが宇宙人であるかないかはさておき)、そこからさらに進み、自分にとって世界や人類が「救うに足るもの」かということについて継続的な思考が形成されたと考えても、あながち飛躍し過ぎではないと私は考える。

    『世界や人類が「自動的に」消滅しないのであれば、誰かがその存在意義を吟味して、「継続」か「終了」かの審判を決定づけてあげるべきではないのか?
    さもないと、世界や人類は間違ってばかりいて中途半端に破滅と存続を繰り返し、無為に生きながらえることになってしまう・・・』

    大杉重一郎の行動は、まさにそういう視点からのものであったし、三島についても、大杉の「宇宙人」というのを三島の場合「憂国烈士」と置き換えることで、大杉の描写も三島の人生と同様にがぜん現実味を帯びてくるはずで、この作品を寓話と読み飛ばすことができなくなるはずだ。

    小説世界と現実世界とを混同させるのはもちろん危険だが、もし、この作品が発表された当時、三島の真意どおりに精読できた者がいたとすれば、三島の人生の結末を予想できたのではないか、とすら考えてしまう。
    しかし実際には三島の真意を理解できた者は一人もいなかった。だから三島はああせざるをえなかった。
    逆説的だが、そういうことに違いない。
    (2014/4/21)

  • そのまま読んでも充分楽しめる小説ですが、
    変わった設定ということもあり、
    どうして三島由紀夫はこの小説を書いたのだろうと考えながら読む楽しさもありました。


    僕自身は「理想主義者の物語」と解釈しました。
    それぞれの理想主義者たちが、その理想ゆえ遭遇した類似の現実に異なる解釈を与え、罵倒しいがみ合う…
    実際、UFOとのコンタクトという設定が、そういった理想主義者たちの認知、解釈、思考、行動の対比を描くのにいい仕事してるんですよ。

    宇宙をテーマにしてるだけあり、随所に埋め込まれている星の描写も煌びやかで、表現の面においても、また面白い小説であると思います。

  • 三島由紀夫の本は、前に金閣寺か何かで挫折して以来まったく読む気になれなかったんですけど、この本はすらすらと頭に入ってきて、読みきることができました。

    天才だと思いました。
    いや、天才としか言いようがない。
    異彩を放ってますね、美しい星!
    本来小説ってこうあるべきなのかなとか、つい思ってしまいました。こうあるべきって具体的にどういうことって言われても、うまく説明できないんですけど。笑

    普通、ここまで客観視できないし俯瞰できない!
    発想から何から非凡すぎて、この小説はどれだけのものを内包してるのか…って考えたら、気が遠くなりました。
    もう読んでる間中、無数に枝分かれしてる様が浮かんでました。


    神的視点を持っていると思った。
    三島由紀夫自身が宇宙人なんじゃないの!と思わずにはいわれない。笑


    私が浅いからこんなにも感銘をうけるのか…どうなのか…

    正直、この小説で三島由紀夫が言いたかったこととか、微塵も理解できなかったと思います。
    でも、何か圧倒されるものがあった。
    というか、何も理解できなくても、単純に読んでいて面白い小説でした。
    ユーモアがあるし、三島由紀夫の作品の中でかなり読みやすい小説だと思います。

    いやー美しい星面白いです。
    ぜひまた読み直したい。

    この作品が、三島文学の中でとくに目立った作品ではないということにはびっくりしました。

    どうなってるんだろう。三島由紀夫の思考回路は!

    とにかく、かなり衝撃をうけました。

  • 三島作品にしては異色なSFっぽい内容なんですが、まるで最近の世の中を映してるかのような作品。衝撃で、読みながらなんか頭の中がぐるぐるした。こんなことを書けるなんてさすが天才、しかも書かれたのは昭和37年!今現在に読むのにふさわしい1冊です。

  • 宇宙人の達観した立場から人間を評価する重一郎と羽黒。重一郎は、人間の愚かだが愛おしい性質を、美しい言葉を並べて語る。羽黒は人間の愚かで醜い性質を、醜い言葉を話す2人と共に語る。個人的には羽黒のいう3つのゾルゲ(事物へのゾルゲ、人間へのゾルゲ、神へのゾルゲ)がしっくりくると思ったのだが、それは私がひねくれているからだろうか。三島先生の真意はどこにあるのだろうか。曉子の平凡な妊娠と、癌告知時の重一郎の平凡な落胆は、「美しい星」に生きる重一郎側の負けを表すように感じたがどうなんだろうか。しかし最終的にUFOは来た。

  • 銀色のアラザンをちりばめたやつ。

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