- Amazon.co.jp ・本 (208ページ)
- / ISBN・EAN: 9784101050157
感想・レビュー・書評
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個人的に文章がとてもすき
作者の中で扼殺された13歳の子供の亡霊を感じました。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
古さを感じさせない!狂気と情景描写の美しく生々しさに読んでいてドキドキしてしまった。
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頁数少なめだが中身は超ハード。さすがは天才・三島由紀夫と感じる作品。危うさと艶かしさが同居する前半部「夏」から加速的に凶気が増幅していく後半部「冬」に移行していく構成、思春期の複雑な感情をより研ぎ澄ます心理描写。どちらも見事だ。
そして圧巻は戦慄のラスト。グロテスクなのにスタイリッシュ。何ともかっこいい一文で締め括られている。
昭和30年代にこの作品を書いた三島の頭の中はいったいどうなっているのか。時代を先取りするどころか完全に超越している。 -
三島作品第2弾。前半は美しいけれど何となく物足りなさがあるけれど、エンディングに向かうにつれてちょっとした凶気が滲み出ていき、最後は衝撃的な結末。13歳であんなに考えていなかった。少し血腥い話をあんなに綺麗に書けるなんて、やっぱりすごい作家だったんだな、と改めて感服。
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初めまして!!
凄い作品でしたね。ほんとに...!!
少年たちのあの危うさがほんとに怖かったですね!初めまして!!
凄い作品でしたね。ほんとに...!!
少年たちのあの危うさがほんとに怖かったですね!2018/10/26
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酒鬼薔薇聖斗の出現を予言した!やっぱり三島は凄い!!という意見もあるようだが、それはそれで置いておいて良い事象だとは思う。頭でっかちで美学を持った少年達の持つ、純粋で歪んだ「大人」という概念と、彼らの繊細で残酷な心を上手く表現した、危うい一作という印象だ。
芥川の『羅生門』よろしく、本来の結末はもう数ページ存在していたらしいが、あそこで終わらせるのが正解だろう。『ライチ光クラブ』が好きな人にお勧めしたい。 -
私にとっては初・三島由紀夫だった。さすがだな~という感想。
三島氏自身はエリート育ちなのに、よくこういう小説を書けるなと思う。少ない登場人物の心理描写が鋭く光っている。
物語は、主人公の少年とその母、母の恋人で船乗りの男がメインで、少年の仲間たちも影響する。少年はある日、壁の穴から母の新しい恋人と母との情事を覗き見てしまう。少年は船オタクで、航海に強い憧れがあった。3人の視点から次々に映し出される心もようが鮮やかである。
よくこの手の格調高い小説には、理解不能な比喩や、文字面を眺めても頭に入ってこない表現も散見されるが、三島の本にはそれがなく、美しい文章でありながら、ストレートに響く。それがまた複雑で矛盾しつつも容赦ないのに、病みつきになってしまうのである。
とても面白かった。三島の他の本もぜひ読みたい。 -
文体が美しくそれだけで読書欲をそそる。世界との完璧な一体感という作者の美意識が良く伝わってくる。そういった心性だからこそ、少年の抱く全能感を少年の目線で違和感なく描けるのだろう。父と子になぞらえた俗と聖の対立の図式も分かり易い。夏と冬の横浜のどこか煤けた風景、とりわけ丘の上の宅地開発地から眺める昼下がりの冬の海の描写と、男が女性の硬くなった乳首を愛撫する時の触感を描写したところは絶品。
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成長と大人を悪だと決め込み、それを拒絶するために危ないことを行う少年たち。
私も小学生くらいのころに、大人と自分は異なる生き物で、絶対にそうならないと思っていた。
でも現在、私は当時忌み嫌っていた大人になってしまった。
大人になると、かつて自分もそうだったはずの子どもが怖くなるなんて、奇妙な感じ。
純粋さと、信じ深さと、残酷さは、もう忘れてしまった。 -
緻密な構成にため息が出る。
主人公は前半で完璧なる均衡を構築し、後半でそれが崩れそうになるのを必死に防ごうとする。美や理想のための作品だ。不気味なまでに美しい。
穴を見ている時の主人公のポーズなど、至極些細なところにも意味がある。それを考えるのも楽しく、緻密さにまたため息が出る。
題にある「曳航」とは船が船をひく様子の事で、「曳航」と「栄光」をかけている。その理由は、英語での題を読むとわかりやすい。「The Sailor Who Fell From Grace with the Sea」、即ち「海と共に優雅さを失った船乗り」。一人の男が栄光を失って行く、その様子が描かれた作品、という事が題からも暗示されているのだ。 -
海とともに生きてきた船乗りの男が安定を求めて陸に留まる。恋した女との陸での永住を決意し、女の子どもの良き父親になろうと父親らしく振る舞おうとする。船乗りの竜二に憧れていた少年にとってこれはぞっとするような裏切りだった。