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音楽 (新潮文庫 (み-3-17))

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著者 : 三島由紀夫
  • 新潮社 (1970年2月20日発売)
  • Amazon.co.jp ・本 (263ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101050171

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音楽 (新潮文庫 (み-3-17))の感想・レビュー・書評

  • 人に勧められて、初めての三島由紀夫を完読。
    知ってはいたけど超変人だなぁと思った。一生分かり合えない人間だなと。当たり前か。
    でも、圧倒はさせられました。これだけ他人と違うことを抱き抱えて生きることは、生きにくかっただろうになぁ。まぁだからこその生き方だったなと思うし、だからこそ天才となれたのだけれども。

    三島由紀夫のなかでもかなり読みやすい作品だそうで、確かにすんなりとスラスラ読めた。むしろ手放せることなく、一気に読んだ。
    フロイトや精神学を真剣に学んでいたらまた違った楽しみ方が出来たんだろうな!

    「冷感症の女性は精神的にも身体的にも自由」なことに明美が嫉妬するという描写が印象的。
    自分自身、性行為を通した繋がりに対しての執着心が欠けてることに、ふとした寂しさを感じることもあるから、そんな考え方も確かにあるなと思った。
    でも、やっぱり共感はできない。

    最後の、「兄の子供を産みたかった」という麗子の本当の望みのまとめも、結局そこかよーって言いたくなってしまった。
    これは、時代なのかな。
    子供を産むことが愛する人との繋がりを形にし、確かにするという女性心理は確かに一部真実だと思うけれども、私自身は共感ができない。
    というか、その考え方が嫌いなだけ。
    認めたくない。

    すんなりと心に響いたのは、以下の文。

    ------
    しかし、彼女の直感だけは信用する私は、この長い手紙の中で、右の一カ所だけを、ひょっとすると、本当に起った情景ではないかと考える。それは偶然というよりは必然の出会である。海風と、幸福な人たちの笑いさざめく声と、ふくらむ波のみどりとの中で、ただ一つたしかなことは、不幸が不幸を見分け、欠如が欠如を嗅ぎ分けるということである。いや、いつもそのようにして、人間同士は出会うのだ。
    ------

    確かにな、これはある。と思った。
    ただし、不幸や欠如の嗅ぎ分けを通して生まれた出会いは決して幸福ではないと思うけれど。

    それよりも、「あ、この人面白そう」と思うあの感覚や、私の欠如を埋めてくれるような人にどうしようもなく惹かれてしまうときを大切に生きていくべきだと思うし、私はそういう縁で実際守られてきたと思うな。あまり誇れる人生ではないけれど、縁に対する運だけは強いと思うから。
    それは多分、私の嗅ぎ分ける力が働いているのだと。それは決して欠如や不幸だけではないなと。

    そんな風に能天気に思える私は、三島由紀夫氏とは仲良くなれないのでしょう。
    でも断言する。私は幸せ。
    「音楽」は、耳を澄ませばありとあらゆる所で鳴り響いている。耳を傾けるかどうかはその人次第。

    ポジティブ思考万歳三唱

  • 黒沢のり子さん主演の映画を観ていたので、内容は知っていたが、原作を読んでみるとなんとも不思議な味わいがあった。多少生々しい表現があるが、当時婦人雑誌に連載されていたというから驚く。アブノーマルかと思われる恋だが、現在のようなオープンな時代と違って、昔はそういうことも見えない所では多々あったかもしれない、なんて考えてしまった。

  • グロく、美しいものを好む人にはたまらない小説。

  • 精神分析医である主人公の元に、妖艶な美女患者が現れ、自身の精神的不調を訴え、多分な性的倒錯を交えた彼女の過去と、息を吐くかのように出てくる嘘の中から真実を見出していくという、三島由紀夫らしさと、らしくなさが同居した作品。

    それでも、得意の比喩表現には唸らされるし、コンプレックスに対する洞察力も相変わらずと思わされる。傑作では無いけれど、読んで損は無いと思える一冊。

  •  精神分析医である汐見医師による、一症例の記録。音楽が聴こえない=オルガスムスを感じないということを主訴に受診した若き美貌の女性患者。強い自我、虚言、気まぐれに、我々読者も「この女恐ろしい…」と身震いしてしまうことウケアイ。彼女の内面、そして過去を紐解く…といういかにもエンターテイメント小説らしい一冊である。
     精神分析の理論を超越した、人間精神の不条理さを描き出そうと試みた小説、と解説で述べられている。精神分析についてはわからないが、確かに汐見医師のとった行動は、少々乱暴に思えた。客観性に欠けているのではと思えた。が、人間精神においては常識などないのかもしれない。

  • がっつりエンタテイエントで、こういうのもあるのかあと驚きながら楽しく読みました。
    人物の配置と存在感のバランスが絶妙。明美とかすごく良い。ちょい役ながら山谷の顔役の説得力も面白かったです。

  • 生々しい内容なのに、上品に思える文章だった。分析医という視点を使うことはそういう狙いもあったのかも。すごく読みやすい作品だった。

  • 初、三島由紀夫作品。精神分析学の知識が全くないので、途中、専門用語がどんどんと出てくるのは結構読み辛いものがあった。
    精神科医院の汐見医師のもとに、麗子という美女が患者としてやってくる。「音楽が聞こえない」という症状でもって冷感症を訴える彼女の治療経過を追いながら、麗子はじめ汐見医師本人やその周辺の人々の性を解く。人間の中の憎しみや愛情や偽善や嫉妬、他にもどす黒いものと真っ白なものが織り混ざって見えて、読んでいて気持ちいい。
    看護師の明美が、麗子に対して感じた、「冷感症の女は肉体的にも精神的にも解放されて自由」という考えがいい。
    明美の立場が、麗子の立場に対して思うところがいい。

  • 或る日、精神分析医である汐見のもとへ繊麗な美しさを持つ弓川麗子が訪れる。彼女が「私、音楽がきこえないんです」と語るところから物語は始まる。

    「婦人公論」に掲載された作品で、大衆文学を意識した娯楽性を兼ね備えつつも、三島由紀夫氏の厳格無比な芸術文学的的特色も遺憾なく発揮されている。後期の作品であり、作家として余裕が窺える作品ともいえる。

    本作品の「音楽」とは、序盤においてはオルガニズムの其れの比喩であり根底原因を探ることを主とするが、徐々に汐見の私人としての主観的感情と医師としての客観的分析が丁寧に織り交ざりながら、深淵なる結末に帰結することとなる。天才文才を持つ精神科医が記したのはないかと思うほどの完成度だ。

    三島由紀夫氏の作品のなかではそれほどメジャーではないようだが、そうであれば隠れた名作といえよう。

  • タイトルからは内容を全く想像できない。今回は純文学かと思って読み始めたが、どうもそうではなさそうだ。精神分析の話が続く。「音楽」が聞こえなくなったと言って治療に訪れる女性。さて、その音楽の意味することは、それは読んでのお楽しみ。解説が渋沢龍彦というのもおもしろい。その中にもあるが、中盤以降で現れる自殺願望のある青年、その後どうなったのか、結局分からずじまいで気になるところだ。そんなことあり得ないよなと思いながら読んだけれど、人間が想像してつくった小説よりも、実際にはもっと不思議なことも起こっているから、まあ小説としてはこういうこともありか、と思い直した次第です。最後の一行は電報。「オンガクオコル オンガクタユルコトナシ」はてさて、いったいどういう意味か。これも読んでのお楽しみ。

  • 「音楽」と「冷感症」を結びつける三島由紀夫の観点にびっくり。

    でも、読んでいくと人の心の深いところでは、ついた傷も感じる美しさも繋がっているのだなと感慨深くなってしまう。

    一回読んだだけでは、まだまだ理解知りれていない感じがするので、またいつか改めて読んでみようと思います。

  •  不感症に悩む女性患者について精神分析医が書いた学術的記録という体をとった小説。比喩的表現が多く、言っていることの何が真実で何が嘘なのかが分からない女性をあくまで分析的に見つめつつ、そんな謎めく彼女に惹かれていく自分の心をも冷静に描写していて、一定の距離感をもちながら彼女の核に迫っていく様子は静かながらにスリリングだった。精神と肉体の矛盾や愛情と憎悪など、対照的なものがごく自然に同居するのが人間なのだということを強く感じる小説で面白い。

  • ずいぶんと読みやすく、最後まで一気に読めてしまった。不感症の女性と精神分析医の話し。文章の骨がしっかりしているのでこういうテーマでも品があり、耽美な印象を与える。たぶん、三島の入門書としてもちょうどいい分かりやすさなのではないだろうか。

  • トラウマを抱えた女性が、語り手である精神科医と共に、不感症を克服する話。
    昭和の小説特有の、また、直接的ではないが官能的な文章が、美しい雰囲気。

  • 三島にしてはわかりやすい平易な文章で書かれており、非常に読みやすかった。三島の作品でここまで内容を理解できたものは他にないと思う。
    麗子とその兄を禁断の行為へ陥れた酒場の女に怒りを覚えた。度をすぎた行為は被害者の人格、人生を大きく変えてしまう。特に傷つきやすい女性や人格のまだ形成途上の若者・子供に対しては殊更にそうであるので、行動に責任を持たなくてはならないと感じた。最後はハッピーエンドで満足。

    新潮文庫の三島由紀夫作品残すところあと8冊。頑張って読みきります。

  • 冷感症を患う女性の、その根源を探る精神科医の分析報告という形で展開していく。
    女性には何度も虚言を吐かれ、そのたびにいいように翻弄されているように感じたが、精神科医の冷静な分析と態度によって暴かれはじめる深層心理は興味深かった。
    その結果わかったものは倒錯した愛といえばいいのだろうか。
    一般的にはタブーとされていることに自分の意義を見出してしまった女性だったが、現実を見つめ、最後はハッピーエンドで終わったところがよかった。

  • 近親相姦と神性、深層心理を題材。重いテーマだが、ハッピーエンドで軽く仕上げたのがいい。2015.4.25

  • 初三島由紀夫作品
    読みやすくて面白かった。精神分析の手法や、学説など知らなくても分かるように書いてあるので、スイスイ読めた。
    麗子という女性の壮絶な人生が徐々に紐解かれていき、これでもか、これでもかとひどい事実が分かってきて、最後にいい人と結ばれて良かったと思った。
    解説にあった麗子と似た女性が登場する『沈める滝』、話中に出てきた花井青年が言っていたスタンダールの『アルマンス』、も読んでみたいと思った。

  • 三島由紀夫が1964年に発表した長編小説です。この"音楽"というタイトルから想像できる内容ではありません。精神分析医の主人公の元を訪れた不感症に悩むある女性患者の治療をする話です。"音楽"は"オルガスムス"の隠語です。近親相姦を取り上げた作品なので、かなり重たい内容ですが、精神科医が女性の深層心理の謎を解明しようとする姿を、サスペンス風に書いているので意外にも読みやすいです。ラストはみんなに救いがあって良かったです。男性を翻弄する麗子の姿がイキイキと描かれているのは、作者が男性ということを考えると凄い。

  •  三島作品って、もうちょっと情景描写がいっぱいあって精密な印象があったのだけれど、なんだかとても読みやすくて、ミステリーを読んでいる気分に。なかなか面白かったです。

  • 音楽って言葉が流行ったら
    おもしろいね
    アタシ今日音楽聞きたいワ。
    ポッ

  • 解説は澁澤龍彦。
    近親相姦、精神病、重々しい・倒錯した題材だけど結構こざっぱりしてるのは語り口が分析医の手記、一人称だからか。
    婦人雑誌に連載された?大衆向けに書かれたものとのこと。
    ほーほー、それで?とサクサク読めました。

    とある女性の強烈な妖しい魅力というか魔力というか、そういうのが常に首を絞めてくるよーな空気。
    そのドロッとした内容と、淡々として小気味良い語り口とのギャップが面白いところと思います。
    倫理的にドン引く薄暗さとえげつなさを持つ作品ですが、その割にさくっと読めちゃう、ふむふむそれで?となる。

    婦人雑誌掲載なだけあって昼ドラっぽい内容です。
    面白いといえば面白いのですが、内容が内容なので、休みながら読まないと濃すぎて疲れます。食傷気味になってしまうというか。推理物でもあるので2周目も楽しめそうですが、暫くおなかいっぱいです( ̄▽ ̄;)

  • おもしろかった。精神病、近親相姦など通常ではなんとなしにタブーとされているものが主題である。

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