音楽 (新潮文庫)

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  • 新潮社
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感想 : 263
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  • Amazon.co.jp ・本 (272ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101050171

感想・レビュー・書評

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  • 三島の他作を読んできた人間にとってはビックリする程の読み易さ。
    ただ、内容も相当に面白く大好きな作品。
    表題の言葉選びから物語の主題、どこを取っても美しい。
    金閣寺の前にここから入って他作に行くのも良い動線かもしれない。

  • いつもの厳格な筆致の三島は何処へやら…という程の読みやすさ。
    普段のあの厖大な知識、比喩など勿論この本には三島が長年に渡り興味を持ち続けた精神分析もテーマになっており、でも普段は厳しい筆致な故に苦労が多いという方にもストレスフリーで読めるかと思う。
    エンターテインメントのような、サスペンス小説のようなスピード感とハラハラ感。
    音楽の意味を知った時には、洒落てるね!と思った。
    発想も古臭さもなく、ちょっと独特。
    「命売ります」とか、あんな感じ。

  • 「あなたは地獄の音楽をきいてしまったのですね」

    精神病院に訪れた或る女性と医師の、精神分析と治療ーー闘いの記録。

    どんな列車も、強引に線路を歪められれば行き先が変わる。その恐怖。

    また心の深淵に生温く脈動する、異形の核を撫でる底気味悪さを感じた。

  • the title of this book "Music" means "organism" on sex. what a beautiful expression, Mishima Yukio!! i am his book junkie...

  • 精神病んでる人は美しいですな

    • 猫丸(nyancomaru)さん
      この話は、読んでて結構辛かったです。。。
      「美しいですな」
      私は、美しい女性を怖いと思いました←今は違いますが、、、
      この話は、読んでて結構辛かったです。。。
      「美しいですな」
      私は、美しい女性を怖いと思いました←今は違いますが、、、
      2012/04/16
  • 心理描写に巧みな三島由紀夫が精神分析学を語るとこうなる! と言う作品。

    三島は『性』の描写には定評があるが、この作品でもその手腕を存分に発揮し、『性』にまつわる人間の心理の変遷、心理の『真理』を徹底的に掻い摘んで表現し、読者の眼前に提示してみせる。

    とは言え普段の三島よりは幾分、その独特の絢爛豪華な美しい文章、難しい表現などは影を潜めているように思えた。これはこの小説を『三島由紀夫』が書いているのではなく、『汐見医師』が書いていると言うことの一つの『演出』であるように思った。あえて三島独特の文体の影を潜ませることで、『医者』が書く分析的な文体を作り出すことに成功しているように感じたのだ。

    様々な医学的文献の引用とその解釈、果ては東京のドヤ街『山谷』の詳細な描写に至るまで、実に綿密な事前調査に基づいた文章が展開されている。これは普通の作家レベルであると、最大限にそのエネルギーを利用して書かなければならないであろう。ところが三島は、巻末解説の渋沢龍彦氏の言うところの『才気の遊び』レベルにおいてそれをやってのけているのだ。これは三島がやはり天才的な作家としての技量を備えていたことを暗示する事象に他ならない。

    難しく書いてしまったが、三島の小説としてはかなり分かりやすく、普段三島の小説がチンプンカンプンと言う人でも、主人公『麗子』の心の変遷はおぼろげにでも掴めるだろう。そう言う意味で三島小説の入門としてお薦めできるかもしれない。

    もっとも僕個人の意見を述べると、三島小説の『海』以外のエッセンスが存分に詰った『仮面の告白』から、三島文学になじんで行って欲しい。

  • 「海風と、幸福な人たちの笑いさざめく声と、ふくらむ波のみどりとの中で、ただ一つたしかなことは、不幸が不幸を見分け、欠如が欠如を嗅ぎ分けるということである。いや、いつもそのようにして、人間同士は出会うのだ」この文章がかっこよくてそこだけ太字に見えた。

  • 精神分析学にサラッとでも触れたことある方なら、尚のことニタニタしながら読める作品だと思う。ベッタベタすぎる。しかし、三島由紀夫は本当に精神分析学に精通してらっしゃるね。

  • 三島由紀夫の作品の中で最も論理的で心理学的、そして神秘的な一作。
    兄との過去が原因で不感症となった女を、精神科医が完治させるまでの物語です。

    エンターテイメント型の展開を見せながらも、心理学的には十分に重厚で、一部キリスト教的なテーマも含む傑作かと。

    物語の構成が少し似ている…と思ったのが、フランスの没落貴族ヴィリエド・リラダンの名作「未來のイヴ」です。

    ヒロインとなるのは「音楽」では性的不能者の麗子、「未來のイヴ」では心だけは何よりも人間らしい機械人形(ホムンクルス)のハダリーで、

    どちらの女も心身ともに美しいが、男の性欲を破壊する「冷たい体」を有すこと、即ち性的に不感症という点で共通している。

    また、両作ともに不可能の恋に悩む青年が物語の発端となるところも興味深い。
    青年は「音楽」では精神科医に、「未來のイヴ」では科学者エジソンに出会い、女の不感症を紐解いていく……。

    さて、どちらの物語も青年からの電報によって締められるわけですが、不可能な恋を叶えることに成功したのは、科学者ではなく精神科医でした。

    電報によりハッピーエンドを報せた「音楽」、電報によりハダリーが海に沈んだこと報せた「未來のイヴ」。

    「音楽」のラストシーンでは、麗子の不感が完治したことを知らせる電報が精神科医のもとに届く。
    「オンガクオコル、オンガクタユタルコトナシ」と。
    それはきっと、添い遂げることができなかった機械人形ハダリーの未来。

  • ストーリーのち密さがすごい

著者プロフィール

本名平岡公威。東京四谷生まれ。学習院中等科在学中、〈三島由紀夫〉のペンネームで「花ざかりの森」を書き、早熟の才をうたわれる。東大法科を経て大蔵省に入るが、まもなく退職。『仮面の告白』によって文壇の地位を確立。以後、『愛の渇き』『金閣寺』『潮騒』『憂国』『豊饒の海』など、次々話題作を発表、たえずジャーナリズムの渦中にあった。ちくま文庫に『三島由紀夫レター教室』『命売ります』『肉体の学校』『反貞女大学』『恋の都』『私の遍歴時代』『文化防衛論』『三島由紀夫の美学講座』などがある。

「1998年 『命売ります』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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