青の時代 (新潮文庫)

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著者 : 三島由紀夫
  • 新潮社 (1971年7月27日発売)
  • Amazon.co.jp ・本 (202ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101050201

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青の時代 (新潮文庫)の感想・レビュー・書評

  • 「認識」と「行動」-三島の小説でよく見られるテーマ。
    つまり人間は頭で考えてから行動するのか、それともあくまで人間の活動自体がまずあって、それを理由づけて体系化するうえで認識が起こるのか?

    三島の持論は「行動が先」だったと思うが、行動と認識とが規則どおりに動きシステム化されていれば、世の人々は悩まないで済んだはず。この二者が実体を素直に表に見せず、時として行動と認識の順序がごっちゃになったり入れ替わったりするから、ややこしい。三島の意図はこの行動と認識の区別を、人物創作によって整理しようとしたものと私は考える。
     
    「青の時代」は1950年に発表。
    前年に発表された仮面の告白の主人公が、母の胎内から生まれ出た時の情景を覚えている、と独白する箇所が印象に残っている。なぜなら作中登場人物が自分の行動と認識に一定の制御を与え、理由付けをしており、いわば三島によって「プログラミング」された人物の創作に至ったと思えるからだ。

    この作品では冒頭で作者が人物創造の意図を「序」として告白している。
    今までにない人物創作によって真実の人間像に迫ってみせる、という堂々たる宣言ではないか?
     
    確かに尻すぼみの印象はある。起承転結の結がすぼんだような感じ。主人公と相対する第二キャラの出来も今一つだ。
    しかしこの作品はあくまで試行だと考えれば、金閣寺によって、主人公の行動や思考の動機付け描写の緻密さや、柏木という第二キャラの造形となって花開いたのだ、と捉えることもできるのではないか。
    (2008/6/23)

  • もうあらすじくらいしか覚えてないんだけど、主人公の東大生が恋人?から、女は慎みがあるから大きなこともしない代わりにみっともないこともしないんです!みたいなことを言われてたのが印象的だった。

    この場面を見て、三島さんは各作品の主人公のマッチョぶりや女性をよく「精神的でない」と表現するのに反して、本当は女が怖いもしくは女の男にはない感性の鋭さを認めてるんじゃないかと思った。
    じゃなかったら主人公にこんな反論をする女性キャラ書かないよ。

  • 三島も4作目になりました。精神分析とその描写はほんとに詳細で繊細でなめらかで不器用で、気づくとつと共感をおぼえてしまう自分に怖さを感じる。男の人って多くの人がこんな風に父と決別するものなんですかね。しかしソシオパスな誠さんに振り回される女性たち、特に逸子さんのその後が気の毒です。

  • 気に入った一文

    かれらは当てずっぽうに、社会という無形のものに釣糸を垂れているのであった。
    浮子は動いたろうか。

    行変えがセクシー。メダカ程度の社会でいいから釣り上げてやりたいね。

  •  戦後実際に起こった光クラブ事件をモデルにした小説。
     超合理主義である主人公山崎誠は、一高、東大法学部に進学するほどの秀才。一方で、過剰な自意識を持っており、随所に出てくる『』で囲われた心情の吐露は、彼が尋常ならざる自意識の持ち主であったことをうかがわせる。
     戦後の混乱の中で、彼は「太陽カンパニイ」という高利貸しの会社を設立し、みるみるうちに大きな額のお金を動かすようになる。しかし、彼は物質の豊かさが精神的な豊かさにつながるとは考えていない(この辺りの哲学的な観念は私の読解力が足りなくてよくわからん)。女が精神的に自分を愛したとき女を棄てることを画策するあたりに、歪んだ人格が垣間見える。
     物語の最後に、彼の幼少期の回顧シーンがある。大きな展示用の鉛筆の模型(非売品)を手に入れたいと強く願った日々。法外なお金にしても、輝子にしても、子供のころに欲しがった鉛筆の模型にしても、手に入れられないものを手にいれるプロセスを楽しみたかっただけなのかな。「数量刑法学」の研究を続けていたら彼は、私たちの社会はどうなっていたのだろうか。

  • 大学時代に手に取った時には、読了しても多くが意味不明だったが、20年近くが経ち社会人として経験も培った今ならばと思い、再起。

    流石に全てを理解するのは難解を極めるが、大学時代の感触を3割とすれば、今回は7〜8割方吞み込めた自信がある。

    精神と物質世界の充足を相容れないものと峻別する、川崎誠の超現実主義。最終的に設計図と現実との乖離に敗北し、自ら毒を仰ぐ運命とはいえ、ともすれば幼子の意地にも似たその頑固さと一途さは、毎日に倦み疲れて理想と現実の狭間を彷徨っている自分にはなかなか眩しく見える。

    金融に手を出さず、学者になっていれば終生の研究課題となっていたであろう数量刑法学も、理念そのものは非常に合理的で辻褄が合っている。客観性を標榜しつつも結局は裁判官の心証に依拠せざるを得ず、またその裁判官の主観が判例となって以降の類似案件を拘束する現代司法の先を行く、文明を進める思想になり得たのではないか?

    無論、刑法の応報刑と教育刑という理念に真っ向からぶつかることになり、ある意味では罪刑法定主義さえも否定するため、現実に導入するには課題も多い(というより、法学会に革命でも起きない限りまず有り得ない)が、それでも人間の行為を定量的に評価するという試みは面白い。ユートピアか、あるいはディストピアかもしれないが、可能性だけは感じる。
    実際に誰か提唱している学者はいるのかな…?

    素材となる光クラブの事件から1年も経たずに上梓されたため、人物像は大部分が作者の創作であろうが、それでも戦後の焼け野原の中、現代よりもずっと広く映える空を見上げて、そこをカンバスとして誰よりも緻密に人生の設計図を描かんとした一個の人間に、一種の憧憬を感じたことは事実。

    ただ、結局彼の幸せはどこにあったのだろうか?というところだけ最後まで疑問ではあった。
    それと、どう言い繕っても結局クズであることだけは否定できない。プラグマティズムには憧れるけど、ここまで振り切ってしまってはいかんね。

  • 三島由紀夫の作品を読む。主人公の幼少期から思春期における父親に対する反抗心は心の襞が上手く表現されており、どんな大人になるのか楽しみだった。しかし、実際に社会に出た時と前半の話との脈絡があまりないように思え少し残念だった。

    主人公の誠が投資詐欺に騙された後、今度は仲間に誘われ自分が同じようなことをすることになるが、ここら辺が自分のような凡人には分からない感覚に思えた。

    文学作品にしてはページ数も少なく読みやかった。

  • 光クラブ事件をモチーフにした小説。
    主人公 川崎誠は、あらゆるものを疑っているように見えて、権威に対しては疑うことを知らず、また、残酷な遊戯を行うことで、非凡な事象に作り変える、など、性格に難がある(というと平凡だが)人物。
    そして、その性格に起因する合理性で自分の行動を制約し、学友の愛宕から、決して君は君の自由にならない、と言わしめるほど。
    物語の前半では、主人公の性格、心理的な動きにスポットを当て、後半では、その性格に忠実に行動した結果、どういった顛末を迎えるか、が描かれている。

  • めんどくさいやっちゃなー、主人公。きっと作者もめんどくさい人だったに違いない。

  • 比喩が美しくて、素晴らしい。賢すぎる青年の苦悩。異常なんだけど、普通にも思える。そんな、狂気の狭間に、みんないるなのだと言う、怖いような、安心なような、様々な感情を味わった。三島由紀夫を読むということは、自分の価値観と向き合うということ。

  • 実際にあった事件をもとに、事件の主役の心理を考察した作品です。主人公の誠はしょせん子供の心理を出ていないように私には思えました。

  • 光クラブ事件に興味を持ったことが読むきっかけになった。

    三島はさまざまな要因によって執筆にかける時間が少なく、作品を膨らませる余裕がなかったことから失敗作としたらしいが、しかしまた愛着もあると言っており、私にも心に引っかかる何か不思議なものを残していった。

    幼少期からの父との確執に起因し、自尊心が高く自意識過剰で独善的な性格を形成した誠は最後まで冷酷だったが、その冷酷さは反対にとても脆い部分でもあったし、自分が作った枠以外では何もできないことを表していたと思う。
    序に「贋物の行動の小説」「贋物の英雄譚」を書きたいとあるが、贋物を象徴するもので強く印象に残ったのは、幼少期に欲しがった非売品の作りものの鉛筆、投資詐欺に遭う際に目にして投資を決意した鉛筆の形をした容器、行く末を覚悟したときに自身が嘲笑していた易の鉛筆を目にしたエピソードだ。
    枠を作りそこに全てを当てはめていくことを当然とし、その枠を壊すこともできなければ作ることもやめられなかった誠は、だからこそ独り善がりであり、周囲の人間がどう考えているかなど思いつかなかっただろう。
    手にした大金で人を惹きつけることはできても自身の枠の中でしか行動できない誠は、最初から最期まで孤独であり、そこに同情こそないが多少の哀れみを感じたのかもしれない。

  • タイトルが気になって読んだ。三島由紀夫はこれが一番好き。

  • 大衆文学が好きなお前らには私の小説は理解出来まい。と大上段より見下すような難しい言い回しは蟲づが走る。啓蒙思想家のつもりなんだろうか?そういう時代に生を受けた悲哀なんだろうか?

  • 三島由紀夫はなんとなくニガテなイメージがあったのだが綺麗な文を書く。実際の事件をモチーフにしているとのこと。

  • 耀子という女のミステリアスなキャラクターが魅力的。

  • 心理描写はさすがでしたが、全体としてぼんやりしている。解説があってやっとなんとなく読んだ気になるかんじ。

  • 後半、主人公は詐欺まがいの仕事を始める。テンポよく話が進んでおもしろいし、女性とのやり取りなども興味がわく。けれど、私にとっては、前半の父親との確執の方がより心に響く。それは、現実の自分と息子との間の問題があるからだ。親子で似た性格であるからこそ磁石のNとNやSとSのように、あるいは電気の+と+や-と-のように、反発が起こるのだろうと思う。それを、この主人公はどうくぐり抜けてきたのか。結局、父親が一番嫌いなこと(不正義、それはまた主人公自身も一番嫌いなはずなのだが)を実践することで、父親への復讐を果たしたということになるのだろうか。そう、せっかく手に入れた売り物でない鉛筆を海に捨てられた、そのときの思いに対する復讐を。できれば、そうして気が済んだなら、この主人公にはその名前の通りに誠実な生き方にもどってほしい。それが親としての思いだ。

  • 解説に助けられてようやく何となくわかった気に。
    そうでなければどれを書きたかったのかが
    掴みにくいと感じた。

  • 心理描写が素晴らしい。

  • 日本語がキレイだ。ひとつの文にリズムがあり、ひとつの段落にリズムがある。たまにみせる奇抜でユーモアのある表現も効いている。ただストーリー的にはよくわからなかった(笑)というより、最後まで誠がめんどうで、あー友達になりたくない、とは思った。

  • これで三島由紀夫3冊目。私嫌いじゃない。

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