春の雪―豊饒の海・第一巻 (新潮文庫)

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著者 : 三島由紀夫
  • 新潮社 (2002年10月発売)
  • Amazon.co.jp ・本 (475ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101050218

春の雪―豊饒の海・第一巻 (新潮文庫)の感想・レビュー・書評

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  • 『豊饒の海』は1巻「春の雪」2巻「奔馬」3巻「暁の寺」4巻「天人五衰」と、全4巻にも及ぶ大作です。
    この話には主人公が二人います。一人が本多繁邦。唯一全4巻を通して登場し、一種の語り部としての役割を担います。もう一人の主人公が、この本多の親友である松枝清顕です。ただ、これは1巻においての名前です。これがこの話の肝なのですが、清顕は転生を繰り返し、2巻、3巻、4巻は別の人物として登場するのです。そして、その全ての生まれ変わりと本多は再会することになります。本多は転生に気づきますが、清顕本人はそれに気づいていません。

    素晴らしいのは、いろいろな読み方ができることです。4巻を通して一つの話として読むのはもちろん、それぞれの巻で主人公やその性格が変わり、話全体の雰囲気もかなり変わるので単独作品としても読めます。いろいろな物語の要素が4巻分で楽しめるのです。ちなみにおおざっぱに一言で表すと、1巻は「恋愛」、2巻は「青春」、3巻は「官能」。そして4巻は一般的な言葉では言い表せず・・・しいて言うなら巻名の「天人五衰」でしょうか。
    また、1巻は大正、2巻は戦前昭和、3巻は戦中~戦後60年代、4巻で70年代と、時代も移り変わります。このように長い期間を描いているので、登場人物の変遷を眺められるのも面白い点。2巻で清純に描かれていた人が、3巻ではとんでもない年のとり方をしていたり・・・。登場人物の数も多く、それぞれ細かく描かれるため、群像劇としても楽しめます。
    あと、全体を通して鍵となる仏教思想については、軽くでもさらっておくことをおすすめします。

    私が特に好きなのは3巻。3巻は「起承転結」の「転」にあたり、前2巻から大きく変わる巻です。この巻では、インドのベナレスが登場するのですが、そのシーンがとにかく素晴らしく・・・。読んだ後、実際に三島が取材旅行に行ってものすごい衝撃を受けたというのを知り、だから描写がずば抜けていたんだな~、と納得。4巻中、最も幻想的かつ退廃的なのも好みです。
    3巻の「転」を経て、4巻で「結」にいたりますが、『豊饒の海』はラストがすごいです。読む前から「すごい」と聞いていて、心構えをしていたのですが、本当にすごかった。(語彙が貧困で申し訳ない・・・)私はこの終わり方はものすごく好きです。

    『豊饒の海』は三島の最後の作品で、この話が彼自身に大きな影響を与えたとも言われていいます。ただ、こんな話を書いてしまった後、次に書ける小説といったら、それこそもう何もないのだと思いました。

  • 松枝清顕の気持ち悪さと同居する美しさ。作者のこの時代、おそらく作者の生きた時代よりも単純で美しく見えた時代の象徴なのだろうか。豊饒の海の後の巻と比べての清冽さが狂言回しである本多の若さとも伴って心地よい。

  • 清顕青年の高貴な身分と美麗な外見とは裏原の、内面の唾棄すべき自意識過剰と冷酷が底なし沼の不幸へと自らを陥れてしまう。狙いすました格調高き文体で大正初期の不穏な平和を見事に描いている。

  • 久しぶりに再読中。最初に読んだときは主人公たちに近い年齢だったから、もっと共感しながら読んだ気がするのだけど、すっかり年を取った今となっては、彼らの若さゆえの愚かさを「あーあ、バカだなあ」という上から目線でしか見れなくなってしまった(苦笑)

    清顕も聡子も、まあ今でいう一種のツンデレで、ツンとデレのタイミングが噛み合わなかったばっかりに、とんでもないことになってしまう。彼らの恋は悲恋だけれど、それを悲恋にしてしまったのは実は自業自得で、ロミオとジュリエットのように親同士が仇なわけでもなく、身分違いというでもなく、双方「両想いです!」と宣言すれば、どちらの両親も祝福してくれて何の問題もなかったはずなのに。手に入らない他人のものになると思った途端、惜しくなる清顕の心理やくだらないプライドに同情の余地はない。聡子はさすがに可哀想だったけど。

    とはいえ、この四部作の主題はそこではないので、彼らの悲恋の成り行きは別として、三島の文章は非常に硬質で美しく鬼気迫るものがあってしんみりする。留学生のシャムの王子など、これ1作で読むとやや唐突な登場人物も、いずれ伏線になるので構成も綿密。

    清顕が最期に本多に告げる「今、夢を見ていた。又、会うぜ。きっと会う。滝の下で」という言葉には、いつも少し涙ぐむ。転生を信じていた三島は、自殺の日程を自分の誕生日の四十九日前にした(つまり誕生日に生まれ変わるつもりでいた)というのを何かで読んだけれど、彼の魂は今どこでどうしているだろう。

  • まさに三島由紀夫の傑作
    滅びの美学、優雅の毒が三島由紀夫の作品の中でも類を見ないような華麗で装飾的な文体で紡がれていく。さまざまなテーマを描き出しており、悲恋の王道のような筋書きでありながらも単なる恋物語に終始していない。

    清顕は絶対的に禁じられていた状況になったからこそ聡子を愛し始めたように思う。聡子を含めたその禁忌を犯す優雅、美しさを愛したのでは。本当に聡子自身を愛したのかは私には疑わしく感じられた。

  • 初心に帰って久しぶりに三島由紀夫を。
    初読時はたしか、あまりに雅やかな登場人物達と流麗な文章にただただ圧倒されながら読んでた気がする。
    改めて冷静に向き合ってみたら、夢と現実の交わりや仏教の思想、死生観なんかが散りばめられていて、三島由紀夫の描きたかった宇宙観の片鱗にたどり着けたような?

  • 07.05.
    読みかけ。清顕の歪んだ愛情(><)
    たぶん幼い頃から聡子が好きだったんだよね。

    でも「追われるより追いたい」のが清顕の
    理想の恋愛の形だったんだろうね!

    聡子に縁談がきて、嫁入り確定!
    ってときに聡子に攻めこむ清顕。鬼畜w
    しかーし案外悪い気はしていない聡子。

    「そうそう、俺が求めてたのはこれよ!」
    といわんばかりに、いよいよ調子に乗ってきそうな清顕。禁断の香りがしてきた。

    07.08.追記
    読了。えっと、禁断じゃなくて純愛だったー
    清顕も、渦中にグルグルに揉まれてるうちに、自分の本心をまっすぐに捉えることができるようになり、聡子もその想いに応え。。。
    だからといって結ばれることはなかったのだけれど。

    物語終盤の清顕が出家した聡子に会いに行くくだり、
    清顕が馬車に揺られながら初デートのことを想い出す場面、切なすぎて涙ぼろぼろ!

    まぁ後半はちょっと三島チック満載すぎる感もあったけど、三島由紀夫作品の中では、間違いなくトップクラスの恋愛小説です!!!

    08.17.
    3回目の読了。だめだ、読めば読むほどきゅんきゅんする!
    儚く消えゆく定めの春の雪。
    溶けてなくなると分かっていても、いや分かっているからこそだったのか魅了される二人。
    溶けるのを見ないようにしている二人。
    4回目も読もう!

  • 豊饒の海

    春の雪。清様が美しい。自分が今ちょうど18で本多さんと清様と年齢が近いからかなるほどと思うところが数多くあった。
    清様は儚げでいて美しく、信念があると感じた。タイの王子様二人もまた別のタイプの青年。聡子さんもまた美しい。聡子さん、清様この二人は人間離れした印象を受けるのに対して他の登場人物が人間臭く感じられる。

  • 三島由紀夫の作品は、文章が美しい。
    流麗な言葉の波に圧倒させられる。
    読み手までをも、凛とさせられる。

    だから、彼の作品は大好きだ。

    4部作の第1章。
    映画にもなったけど、やはり細かい描写を感じるなら原作が良い。

    簡単に言ってしまえば、松枝清顕の性格が招いたゆえの結末だろう。
    でも、それも蓼科の目論見だったのだろうが。

    何度読み返しても素晴らしい作品だ。

  • 美しい事象を何万何億通りと描写しうる力量が圧巻、どの頁を開いても絶景が浮かびただ美しい。
    所々挟まれる達観した思考――想像力の乏しい人間は自分の尺度で物事を見ようとするが反面豊か過ぎる人間は扉を閉ざし鍵をかける――こんな陳腐な言い回しなど用いていないがともあれ。作者の遁世した考えが散らされている部分も魅力に思う。巻末に親切な解説が付いているが、一見何気ない物事同士の繋がりが、例えば女囚人の裁判場面で本多が体感したことと終盤の門跡との対話との対比など、私のような一般読者にも対比を感じられ、読み応えがあった。
    日本語という原著で読める楽しみを噛み締めつつ読み進めようと思います。
    さきに映画を見たときは、鮮やかな映像に感動したものの源氏物語の焼き直しみたいな話だなと思ったのみに終わり。やはり、心の襞まで丹念に描くとすれば小説という手段に限られます。

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