- Amazon.co.jp ・本 (448ページ)
- / ISBN・EAN: 9784101050232
感想・レビュー・書評
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そ、そうかー!
もうちょっと書いておくけれど、老いということはそんなに惨めなものかよと反発しつつ夫婦の変節にはなんとなくウン……と思ってしまった詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
それは澄んだ幼ならしい笑い声で、青い日盛りの空の下に弾けた。
春の雪は無垢で美しかった、奔馬は苛烈で美しかった。暁の寺は?
老いていく本多からは、無垢さも情熱も削がれて、欲に身を落とす立派な「大人」へと変貌していた。
老いとは普遍的に醜いものなのか?
とうなんだろう -
急に変態さが増した。
タイの王女に転生した清顕=勲。本多は昭和15年にタイでの商談で揉めている五井物産の弁護のためタイを訪れ、ジンジャンと出会う。インドの旅のベナレスなどの描写は本人が行ったからこそなんだなと思うし、輪廻に関する東西の説についての詳細もよく研究してるなと思う。
戦争を悠々とやり過ごし、幸運で財産を手にした本多は御殿場に別荘を建てる。成長したジンジャンが日本へ留学し、別荘に呼んで覗き窓からいろいろ見るんだけど。とにかく本多が覗き魔になってる。
別荘に泊まった今西というこれまた変態と椿原夫人が出した火で別荘は燃えてしまい、ジンジャンもタイに帰国して消息を断つ。後から姉妹に聞けばコブラに噛まれて死んだんだとか。 -
三島由紀夫『豊穣の海』第三部。
輪廻転生の物語ですので第一部『春の雪』第二部『奔走』から続いております。
疲れます。本当に疲れます。三島由紀夫様の説明に説明を被せ、仕上げにまた説明を説明する表現に疲れます。ましてやテーマは引き続き『輪廻転生』。助けて下さい。何言ってるのか分からない状態です。
前半のタイ、インドでの仏教〜ヒンズー教の説話はもう呪文の様です。読み終わると自分が鹿にでも変身しているかような阿頼耶識。
ストーリーは第一部に不倫の末憤死した松枝清顕君から童貞中2病で切腹した飯沼勲君、そして今回タイのお姫様である月光姫(シン・ジャン)へ魂のバトンタッチ、つまり生まれ変わりですね。
で、その生まれ変わりの10代の彼女に恋をしちゃう松枝清顕君の同級58歳男子本多君。
もうロリコン有り、見せつけプレイ有り、レイプ有り(未遂)、レズ有りとやりたい放題で一体何式なんでしょうか、そう末那識であり阿頼耶識。
と言う事で遺作となる最終章『天人五衰』へ続きます。
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輪廻転生を繰り返す若者とそれを傍で見続ける友人の2人が織りなす壮大な人生ドラマ。美麗な文章の海の中で、人とは何か、生死とは何かを考えさせられる。
第3巻はタイとインドが主な舞台なので、この2つの国が大好きな人にとっては一読の価値があります。 -
三島由紀夫が人生を懸けて書いた豊穣の海シリーズの第一作。『春の雪』という言葉から思いうかぶように美しく、繊細な小説である。
特に清顕と聡子が逢引きし、雪の降る俥の中で過ごす時間は、まるで時間が止まったかのように感じるほど美しい。
傷つくやすく、感情によって生きている美少年清顕と、理性と思考によって生きるいる親友本田のバランスが良く、読んでいてマンネリしてこない。
本田は深い知性と分析を駆使し、転生し続ける主人公を通して、生きるとはなにか?世界とは何か?を、模索する。
おそらく三島自身も本田を使って決死の思いで 生きるとは何か?に手を伸ばしていたのだろう。読んでいてその狂おしいまでの模索、苦悩を感じる事が出来た。