葉隠入門 (新潮文庫)

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著者 : 三島由紀夫
  • 新潮社 (1983年4月発売)
  • Amazon.co.jp ・本 (221ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101050331

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葉隠入門 (新潮文庫)の感想・レビュー・書評

  • 過去、どこかのレビューにも書いたのだが、再読してやはり、葉隠とはつくづく、自己啓発本だと思う。世に教訓をする人は多し。教訓を悦ぶ人はすくなし。まして教訓に従う人は稀なり。つまり、教訓を得るに、読書をするような自習も不可欠ということだ。恋愛や芸事、男色や上司との付き合いまで、その心得が書かれている。最近の自己啓発本と異なる点は、あるいは、武士道とは死ぬこと見付けたり、の一言に尽きるのかも知れない。常に死を覚悟することこそが誤りなく一生を過ごすために必要で、生きたいから、生きるための理屈ばかり考えるようではいけない。

    快楽を追求しても一時の認識に過ぎず、そこに執着する意味はない。しかし、自らが永遠に生きると錯覚するから、我欲にこだわるのだ。キリスト教がローマで急に勢いを得たのは、ある目標のために死ぬという衝動が渇望されていたからだという。我々も死について、覚悟と共に理想を携えておくべきなねだろう。そこから人生を設計することが、過剰な我欲を削ぎ、存在意義を全うできるのではないか。

  • 三島由紀夫が心酔した山本常朝の「葉隠」。「武士道といふは、死ぬ事と見付けたり」の一句で名高く、死という概念を中核に据えた闊達な武士道精神を著したものです。三島由紀夫に「私のただ一冊の本と」まで言わしめ、その精神を今日によみがえらせ、その教えを現代という乱世に生きる「武士」たちに説こうとした本です。また、彼の人生論や道徳論であり文学的な思想的自伝でもあります。

    この本は、前段では山本常朝が述べていることについて、三島由紀夫がコメントをするような形のつくりになっています。あるところは共感し、あるところは矛盾を指摘し、あるところはきちんとした根拠を持って批判をしたりするなど、鋭くかつ醒めた目でこの思想を見つめています。

    後段では「葉隠」の彼なりの読み方を紹介しています。「死ぬこと」という概念を鋭利な刃物のように鋭い目で見つめています。「葉隠」の暗示する「死」、特攻隊の「死」、自殺者の「死」についての精神的な考察が深いです。われわれは、一つの思想や理論のために死ねるという錯覚に、いつも陥りたがります。しかし、「葉隠」が示しているものは、もっと容赦ない死であり、花も実もない無駄な犬死でさえも、人間の死としての尊厳を持っているということを主張しています。生の尊厳をそれほど重んじるならば、死の尊厳を重んじないわけにもいかないはずです。

    この本を突き詰めていくと、死という真理を感じるとともに、踏み入れていはいけないところに足を踏み入れたような恐怖も感じます。巻末に「葉隠」の名言抄がついていますが、それを踏まえて読んでみると三島の「鋭さ」を感じます。しかしながらよく切れるけど、一つ間違うとすぐ刃が欠けて使い物にならなくなる刃物のような思想。そんな諸刃の剣の怖さも感じます。

  • 三島由紀夫=切腹のイメージが強く、葉隠入門という本を出していると知って、やはりな、と思いました。葉隠は、「武士道といふは、死ぬ事と見付けたり」という言葉が有名だけど、本当はこんなにいろんなことを言っていたんだよ、みたいな内容ですが、それを三島由紀夫が解説しちゃうと、やっぱり「死ぬ事と見付けたり」なんだろうなぁ、と思っちゃいます。解説の、「三島由紀夫は芸術の秘鑰(ひやく)たる死の錬金術師だった」て言葉がよくわからないけどかっこいいです。

  • 葉隠の解説書でもあり三島由紀夫の思想表明でもあると思う.現代の社会と比べたりしてたり,わかりやすかった..

  • 山本常朝の葉隠を現代語訳化した
    武士の自己啓発本。

    前半部分は三島による葉隠の解説となっており
    後半は現代語訳という構成。

    葉隠の三大哲学は
    主体的な行動哲学、
    アガペーとエロースによる恋愛哲学、
    そして武士道といふは、死ぬ事と見付けたりに
    表される生きる哲学である。

    武士としてあるべき姿を
    厳格に、それでいて、愛に満ち溢れて書き述べてある。
    矛盾とニヒリズムの込められた
    考えさせられうる啓発本である。



    実践の項、あくびが出そうな時上唇を舐めて我慢する事。
    男たるもの嗜みを忘れるなかれという事ですね。
    メルセデスの男にもあったように、
    外見の道徳、嗜みの着飾りを忘れないようにします。

    子供の教育について。
    おどし、騙すことなどあるまじく候。
    脅かしや叱りがなければのびのび育ち
    臆病や打ち気になることもない。なるほど。
    また、父への敬いを忘れさせないこと。

    恩を受け候人には、一生のうち疎遠にあるまじきなり。

    武士道は死に狂いなり。
    本気にては大業はならず。
    気違いになりて死に狂いするまでなり。

    言行が人を変える。
    臆病に類する表現があれば心も臆病になる。

    世に教訓をする人は多し。
    教訓を悦ぶ人は少なし。
    まして教訓に従う人は稀なり。
    年30も越したるものは、教訓する人もなし。

    不仕合せの時、草臥ぶるる者は益に立たざるなり。

    恋の至極は忍恋と見立て候。
    一生忍んで思い死する事こそ恋の本意なれ。

    会議の方法、談合事は出席者一人一人をよく説得して、
    合意に達する工夫をしてから開くのがよい。

    人間一生誠に纔の事なり。好いた事をして暮らすべきなり。

    白刃を常に振り回す者には人が寄り付かず〜
    内にばかり納め置き候へば、錆も付き刃も鈍り〜

    50ばかりより、そろそろ仕上げたるが良きなり。
    今は折り返し地点なんだな。

    ーー葉隠の読み方より
    特攻隊はいかなる美名におおわれているとはいえ、
    強いられた死であった。
    原子爆弾による死でさえも、あのような圧倒的な強いられた死も、
    一個人一個人にとっては運命としての死であった。
    死の形態にはその人間的選択と超人間的との暗々裏の相剋が
    永久にまとわりついている。

    図に外れて生きて腰抜けになるより
    図に外れて死んだ方がまだいい。


    何度も読み返したい一冊であった。

  • 「毎日死を心に当てることは、毎日生を心に当てることと、いわば同じことだということを「葉隠」は主張している。われわれはきょう死ぬと思って仕事をするときに、その仕事が急にいきいきとした光を放ち出すのを認めざるをえない。」(28頁)
    「翌日のことは、前晩よりそれぞれ案じ」「わたし自身はあくる日の予定を前の晩にこまかくチェックして、それに必要な書類、伝言、あるいはかけるべき電話などを、前の晩に書きぬいて、あくる日にはいっさい心をわずらわせぬように、スムーズにとりおとしなく仕事が進むように気をつけている。」(42頁)

  • 三島由紀夫の根底に流れる物が痛い程伝わってくる自決の3年前に書かれた、ロングセラー。(53刷)
    「武士道といふは、死ぬ事と見付けたり。」
    死を心に当てて万一のときには死ぬほうに片づくばかりだと考えれば、人間は行動を誤ることはない。もし人間が行動を誤るとすれば、死ぬべきときに死なないことだ。(P41より引用)
    「世に教訓をする人は多し。教訓を悦ぶ人はすくなし。まして教訓に従ふ人は稀なり。年三十も越したる者は、教訓する人もなし。されば教訓の道ふさがりて、我儘なる故、一生非を重ね、愚を増して、すたるなり。故に道を知れる人には、何とぞ慣れ近づきて教訓を受くるべき事なり」(P72より引用)
    他、様々な場面毎の哲学が満載の良書であり、巻末の田中美代子さんの解説と併せて是非一読をお勧めします。

  • 「武士道というは死ぬことと見つけたり」
    当然のことながら、だから死ねというわけではない。
    侍のために書かれた武士道の葉隠の書を三島流に説いたこの作品は、現代に通じる実用的なこともサックリと書かれている。 等身大の己を知り、考える事が好きである日本人であれば、是非とも読んでおいた方が良い(思う)。

  • 山本定朝の葉隠を、三島のフィルターを通して届けてくれる作品。死生観が主体のイメージを勝手に抱いていたが、生への指南書である。以下に感じ入った箇所を抜粋する。

    この世は全てからくり人形なり。この字句をいかに解釈し、いかに現在の生に役立てるのか。
    倹約心よりも義理を重んじよ。
    自分の酒量を知り、それ以上は飲まぬように。
    人を越えようと思ったら、自分を批判させよ。
    恋の極限は忍ぶ恋
    ただいまがその時
    前方死して置く事なり

    そばに置いて、折に触れて開きたい一冊である。

  • 葉隠のエッセンスを三島由紀夫の解説とともに。
    「武士道と云ふは死ぬ事と見付けたり」「武士道は死狂ひなり」と過激な文言ばかりが有名だが、それだけではない。

    現代でも実践できそうな心構えも多かった。噛み砕き、自分のものとしたい。

  • 山本常朝「葉隠」

  • 年に1回は読みたい本。
    三島由紀夫も書いているように芸事に生きてきた人、上昇志向の強い人には納得しづらい部分もあるがそれも含めて心にとどめておきたい言葉が載ってる。

  • 三島由紀夫が「机のわきに置いておいて事あるごとに読んでいた」という『葉隠』を多くの引用を施しながらわかりやすく解説してくれている。本の後半に抜粋と現代語訳がついている構成も良い。現代にも応用できる様々な心構え、実用的なエッセンスが詰まっている。一番心に残ったのは、大きな決断、「大思想」は普段から小さな決断を積み重ね、どんな小さなことにも理論を積み重ねていることによって軽々となされるものである、ということ。イギリス人がミルクとシュガーを入れる順番に強いこだわりを持っているように、小さな理論を積み重ねること。

  • 三島由紀夫の愛読書であった、「葉隠」についての現代語訳と三島の解釈が書いてある本。
    三島の人生におけるベーシックな考え方がわかった気がした。ただし、三島の考え方をより深く理解するためには、葉隠の文字面を追うだけ、三島の葉隠に対する考え方を読むだけでは不十分で、この葉隠の文章について、ある程度自分の理解と三島の理解を突き合わせながら読んでいく必要性を感じた。良書。

  • 三島由紀夫自決の2年前の著作とのことです。奈良本辰也氏の葉隠の現代語訳を読む前に、読書ポイントを得たいと、先に三島由紀夫氏の解説を読みました。

    三島由紀夫さんのペンは切るように、刺すように、抉るように明快です。右傾思想家としての解釈という単純なものではありません。ご自身の解釈の視点を明らかにして、語られます。その立場の明快さにショック受ける。ものすごく賢い、評論家ばかりが増殖してしまった現在なのではないかと。

    江戸初期から中期(原作)、昭和初期から中期(解説)、読んでいる私、家族の問題含めテーマが変わっていないことに驚きます。

  • ・武士道といふは、死ぬ事と見付けたり
    ・大事な思案は軽くすべし
    ・武士道に於いては死狂ひなり。この内に忠孝はおのづから籠るべし
    ・七呼吸のあいだに判断せよ
    ・一瞬、一瞬を、真剣勝負のつもりですごすこと
     日頃の油断、今日の不覚悟

  • 『葉隠入門』
    三島由起夫

     若い時代の心の伴侶としては、友だちと書物とがある。(p7)

     書き出しが名文である。この二つの違いは、前者は変わり、後者は変わらないもので、なおかつ自身の態度変化により書物を変化させることができるということ。

     武士はかりにも酒の入った席では、心を引き締めていましめなければならないと教えている。(p54)

     わたしは武士ではないけれど、覚えておきたい。

     意見というのは、まず、その人がそれをうけいれるか否かをよく見分け、相手と親しくなり、こちらのいうことを、いつも信用するような状態にしむけるところからはじめなければならい。(p110)

     なるほど。だが難しい。

     あるいは高貴な人からよばれたとき、いやなことだと思って行ったりしては、座をとりもつことなどできはしない。なんともありがたい、さぞおもしろいこともあるだろうと思い込んで行くがよい。(p113)

     心構えというのは大切だろう。

     だから、自分のたりない点をよく知って、一生のあいだ、これでじゅうぶんだなどと考えることもなく、もちろん慢心もなく、といって卑下する心もなく、そのようにして過ごすべきである。(p123)

     これは剣術についてだが、現代でも生きること。なるほど。

     はじめからぬれるものだと心得していれば、ぬれたとしてもなんら苦にはならない。これはすべてのことに共通する心得である。(p137)

     なるほど。様々に応用できるだろう。

     名誉と富に執着のない者は、おおかたつまらない人間になって人をののしり、傲慢で役に立たず、ついには名誉と富に個室する人間に劣ってしまうものである。(p160)

     今の時代ではどうだろうか?

     相談ごとなどは、まず関係のある一人と話し合い、その後意見をきくはずの人たちを集めて決定すべきである。(p181)

     さもなければ、恨みに思う人もいると。談合ではないけれども。。。

  • 『葉隠』と言えば、「武士道といふは、死ぬ事と見付けたり」という一節が有名です。この言葉だけが独り歩きして「死を推奨する本」だと思われているのではないかと思います。そしてそれを、自衛隊に決起を促し自決した三島が解説してるというと「ファナティック(狂信的)」な内容を想像してしまうかもしれませんが、決してそんなことはありません。『葉隠』はそんな内容ではないですし、三島も本来はそんな人ではないと思います。三島がファナティックでない、という話をすると本題から脱線してしまうのでこれ以上は触れませんが、『葉隠』がそういう内容ではないということは、後半の名言妙を読めばわかるはずです。

    詳細は⇒ http://amba.to/1dPa73N

  • 前半は三島由紀夫の解説で、後半に現在語訳付きの本文の1部が掲載されていた。
    政治的な内容はほとんどなく、良く生きる為の知恵や心構えが書かれ、ためになる本だと思う。

  • 「武士道といふは、死ぬ事と見付けたり」の「葉隠」という本を、三島由紀夫が解説。どんな右翼な本かと思いきや、今の世でも通じる格言の数々。仕事に、人生に真面目に向き合うための心得が詰まっています。

  • 楯の会事件で有名な三島由紀夫の解説本。

    「葉隠」の基本的な教えやその教えごとの矛盾に対する三島の解釈が綴られている。口述者、山本常朝の言葉の裏にある共通思想を紐解こうとする熱量が、三島の理路整然とした静かな文章から伝わってくる。

    葉隠は「武士道とは死ぬことと見つけたり」という強烈な一文から、物騒、狂的なイメージがつきまとう。だが実際は「ある侍は主君のためにこんな気遣いをして~」というような「武士のよもやま話」が多く、美と潔さの密接な関係や、人生を豊かに生きる知恵が込められている。

  • 「葉隠」は「武士道といふは、死ぬ事と見付けたり」で有名であり、戦中の死を肯定的に捉える精神、自殺の奨め等、否定的に解釈されることもある。
    だが、読んでみると基本的な行動原理を簡潔に述べ、頷ける内容も多いことに気付かされる。
    先人の知恵が詰まっている。

    「葉隠」は「死」の概念も含めて一体としての形成されているのだろうが、”イイとこ取り”もあり得るのではないか。

    一方、日本独特の「死」の概念が存在することも否定できず、三島文学然り、知識としてよく理解すべき概念だと思う。

    〇着想と判断力を生み出す法
    ”私(私心・主観)”を捨てて考えるとき、いままでに思いもよらなかったような知恵すらでてくるものである。

    〇批判の仕方
    意見というのは、まず、その人がそれをうけいれるか否かをよく見分け、相手と親しくなり、こちらのいうことを、いつも信用するような状態にしむけるところからはじめなければならない。

    〇傍目八目の効用
    「思いめぐらして非を知る」ということばがあるが、こうしたことも話し合いにかぎるものである。話を聞いたり、書物を見たりして知るというのも、自分勝手な分別を捨てて、古人の考えにしたがうためである。

    〇大事な思案は軽くすべし
    大事はふだんから考えておけばわかることである。だから、大事についてはまえもって思案しておいて、いざというときそれを想い出して、かんたんに処理する必要があるのだ。
    逆に日頃の覚悟がたりないと、その場にのぞんで速断することがむずかしく、うまくいかないことにもなりかねない。

    〇あやまちのひとつもない人間は、信用できない
    「一度まちがった者だからひきうけたのだ。あやまちのひとつもない者は、かえってあぶなくてしょうがない」

    〇自分の定見をもたないこと
    とにかく修行は一生やめてはいけない。自分で見出したくらいのものをもって、これでもよいと思うことなど、とんでもない話だ。

    〇酒の座の心得
    大酒を飲んで失敗した人はかず多い。
    ・・・酒の座ではいつも気をぬかずにいて、思いもかけぬ出来事が起こっても、じゅうぶん対処できるように考えるべきである。

    〇困難にぶつかったら、おおいによろこぶこと
    「水増せば船高し」(水位が上がれば船はたかくなるように、人間も困難にぶつかるたびに大きく成長するものだ)

    〇七呼吸のあいだに判断せよ
    心持ちがうろたえているときは、思案もなかなかきまりがつかないものだ。こだわりなく、さわやかに、凛とした気持ちになっていれば、七呼吸の間に判断がつくものだ。

    〇人を超えようと思ったら自分を批判させること
    ある人が、自分の書いた役所の書付を人に見せて相談したことがある。その人は、自分達よりは、はるかによく書き整える人であった。添削を人にたのむということ自体が、すでに人より上のことなのである。

    〇チャンスを逃すな
    上杉謙信が、「必勝のこつなど知らない。ただ、チャンスをとらえて逃さないことだけを会得した」と申されたそうである。

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