葉隠入門 (新潮文庫)

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  • Amazon.co.jp ・本 (221ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101050331

感想・レビュー・書評

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  • 「武士道とは死ぬことと見つけたり」のフレーズで有名かつ戦時中の特攻などの精神的原点にもされた本で、一度読みたいと思っていた。特に、三島が座右の書にしていたということで、まずは彼の手による入門書を読了。武士の高潔な生き様を説くものと思っていたが、意外と処世術や恋愛、芸能(当時の技術者)に対する偏見など、内容は幅広い。主張の中心は、流行に流されないこと、本質的なことを研ぎ澄ませて真の在り方を確立すること、という感じ。ただ、あまりにも研ぎ澄ませすぎて、多様性を一切認めず、かなり偏見に満ちた面もあるのは否めず、三島の愛読も理解できる。

  • 「武士道といふは、死ぬ事と見付けたり」という一文が有名な「葉隠」、武士道の基本書のように語られるが「葉隠」自体は江戸時代中期の平穏な時代に書かれた自己啓発書に近い。冒頭の一文もあくまで「覚悟」であり平和な時代であったからこそ身を引き締めて主君に仕えよということだったのだろう。本書前半は三島氏の解釈、後半は原文と現代語訳という構成で、「葉隠」全体としては砕けた内容のようだ。

    三島氏の解釈は骨身に染み入る質実剛健な教えであるが、三島氏の性格からすると悪乗りとウィットが背後に潜んでいるようで、そうみるとなかなか面白い。

  • 「「うやうやしく、にがみありて、調子静かなる」というのは、そのまま一種の男性美学と言える(p58)」

    不定期に“魂注入”したくなる「三島由紀夫」。
    「葉隠」そのものは現代にも通じる不変の人生論であり、自己啓発書だ(本書後半に訳文掲載)。ただそれを三島由紀夫が解説すると独特の魅力というか色気を醸し出す。

  • 三島由紀夫による葉隠の解説。
    男性の女性化は、いつの世にも起こる。太平の世の武士の堕落した生活様式や風習を戦後の日本の「カルダンルック」の隆盛など嘆かわしい風潮と照らし合わせ、そのアンチテーゼとして書かれた葉隠を三島は座右の書と奉じる。
    武士道といふは死ぬことと見つけたり、とあるが実際には現在のビジネスマンにも通用するような現実的な処世訓と知恵に満ちている。忠告は相手との信頼関係が重要であるとか、
    あくびを人前でしないように、とかロールモデルはそれぞれの人のいいところを組み合わせなさい、とか。原本に興味がわく。

  • 「葉隠」の名言抄であると同時に、三島由紀夫の思想自伝。今回は三島の思想探索目的で読了。
    葉隠の"死を中核とした自由意思と情熱"に裏打された三島由紀夫だが、暑苦し気味の「奔馬」ですら大理石を思わせることが、今回改めて興味深い。

    葉隠自体はハウツー本であるが、マキャベリズムとほぼ対局に位置し、行動哲学的な[どう生きるか]系。
    真の熱血漢には向かないかもしれない…?

  • 自営業と経営者以外のビジネスパーソン全てに必要な志が葉隠に示されている、と感じるのは三島由紀夫の価値観が現在求められているからではないだろか。今、三島由紀夫が生きていたら?何を語るのか?意外とビートたけし的な存在だったりして。

  • 三島由紀夫氏が座右の書として何度も読み返した、武士の修養書。「自己中だとうまくいかないよ。利他に最良の結果が待っているよ」というのがメインメッセージ。それを有名な一節に起こすと「武士道と云ふは死ぬ事と見つけたり」となる。

    【「死」とは選択可能な行為】
    葉隠は江戸時代中期に書かれた書物。その前提にたつと、名誉(粋に生きる)ことが「生」の価値とも言える時代ということが見えてくる。そのため、名誉が失われるようなときは、「死」こそが救いであり、切腹がその手段として選択されていた。
    その強い社会通念があるからこそ、当時の武士達は自分以上の力を社会のために発揮できたのかもしれない。

    【精神の停滞】
    「忠告は無料である。われわれは人に百円の金を貸すのも惜しむかわりに、無料の忠告なら湯水のごとく注いで惜しまない。しかも忠告が社会生活の潤滑油となることは滅多になく、人の面目をつぶし、人の気力をそぎ、恨みを買うことに終わるのが、十中八九である。(中略)自分が教訓を与える立場になると、もはや人から教訓を受ける機会はない。かくて精神の停滞が始まり、動脈硬化が始まり、社会全体のさけがたい梗塞状態が始まるのである。」(引用)
    身近にいるわいるわ、それ以上に自分もするわするわ、で突き刺さった。。。自分の方ができるというおごり、よく見られたいというねたみ、の精神をもっていることの理解の上にたち、行動を変えていきたい。

  • #葉隠入門 読了。寝ることなど二の次、日々極まれり。出身研究室で教わった哲学が詰まってる。改めて感謝。恥じないように生きなくては。#落合陽一 さんは、現代の武士の鑑だと思います。

  • 朗読 序文

  • <blockquote>"武士道とは死ぬことと見つけたり"って言葉が有名ですけど、これは要するに、人がヒーローになる瞬間の話なんです。二者択一の選択肢があったとき、こっちに行けば自分の席任意なる、こっちに言ったら誰かのせいになる――そのときに、自分の責任になるほうを選べって言うんです。どうしてか? たとえそちらのほうを選んで死んだとしても、誰も君の事を卑怯者とは言わない! 映画って、こういう選択の瞬間が必ず出てきますよ(町山智浩2012年3月タマフル推薦図書特集にて)</blockquote>

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著者プロフィール

本名平岡公威。東京四谷生まれ。学習院中等科在学中、〈三島由紀夫〉のペンネームで「花ざかりの森」を書き、早熟の才をうたわれる。東大法科を経て大蔵省に入るが、まもなく退職。『仮面の告白』によって文壇の地位を確立。以後、『愛の渇き』『金閣寺』『潮騒』『憂国』『豊饒の海』など、次々話題作を発表、たえずジャーナリズムの渦中にあった。ちくま文庫に『三島由紀夫レター教室』『命売ります』『肉体の学校』『反貞女大学』『恋の都』『私の遍歴時代』『文化防衛論』『三島由紀夫の美学講座』などがある。

「1998年 『命売ります』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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