巡礼 (新潮文庫)

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著者 : 橋本治
  • 新潮社 (2012年1月28日発売)
  • Amazon.co.jp ・本 (289ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101054179

巡礼 (新潮文庫)の感想・レビュー・書評

  • 人に歴史あり、なのだ。
    そうしなくて良ければしない、のだ。

    そこを見つめる人でありたい。

  • 最初はゴミ屋敷の主人と近所の住民とのトラブルの話かと思ったら、ゴミ屋敷の一家の歴史が描かれていく。どんな人間にもそれまでに至る当然の過程があるのだが、普段見えない部分を掘り下げて、読者もそのストーリーに引きずり込まれていく。読み終わった後で読む前とは違う自分に気づかされる。

  • ハードブック 2009年8月25日発行 \1400円を、読んだ。
    初めて読む橋本治氏の本。

    どうして、真面目な男が、自宅をゴミ屋敷にしたのか?
    戦時 少年時代を過ごし、一家の長男として、荒物屋を継ぐ為に、努力を重ね、結婚もしたのに、幼い子供を死なせてしまい、妻とも、姑問題もあり、離婚してしまって、人生の歯車が、狂ってしまう。

    今の時代、若い人たちは、断捨離と言って、不要な物を、家に置かない。
    人との、付き合いも、淡白になってしまっている。

    昔の人は、家になければ、自分で作ったり、修理したりしていた。
    購入する事、自体、物が手に入らなかったのであろう。
    「もったいない」と言う精神が、身体の一部にしみこんでいるのである。

    そう言いつつも、私も、母親のまねをして、包装紙、紙袋、ビニール袋を、保存していて、先日、整理したばかりである。
    昔の本、毎日読む新聞、DM、チラシに、手紙等、ちょっと、置いておくと、紙袋に一杯になってしまう。

    まして、この本の主人公の忠市は、ゴミを拾って来る。
    溜まる一方。
    ゴミ屋敷になるには、心がどうしようもなく折れ曲がる程も、屈折したおもいが、込められている。
    何もしたくない気持ちが、片付けると言う作業をやめさせる。
    足の踏み場が無くなっても、自分の居場所が、小さくなっても片付けられない。
    弟の修次が、ゴミ屋敷の報道で、兄の忠市のところへ駆けつけ、掃除に繰り出す。

    片付けたあとは、お遍路さんへ向かうのだが、、、、
    兄の死には、少し、哀しすぎるし、もう少し、弟と、過ごす事をさせてやりたかったようにおもう。
    でも、もし、長生き出来ても、上手く、この世を過ごせるかどうかも、疑問であるから、作者の終わらせ方が、正しいのかもしれないと、思いながら、本を閉じた。

    生きることは、難しい。
    長寿大国、日本であるが、自分がどのように、人生を歩めるか?と、思ってしまった。

  • ゴミ屋敷。
    そこに住むのは老いた男性。

    自分が何者であるか、何者でもないのか、もはや混濁した意識の中でただ「集めなければ」と思っている。しかしそれは他人にはごみとしか映らず、それは分かるものの認めたくない老人は周りを攻撃し、さらにうちに閉じこもる。

    元は荒物屋。
    近所の大きな荒物屋に奉公しながら仕事を学び、いつか店を継ぐものと思って頑張っていた。妻をめとり、実家に戻って高度成長の波に乗って店を大きくしたが、嫁姑の仲は悪く、せっかく生まれた子供も小児がんで死んでしまう。

    多分そこから人生の歯車が狂ったのだろう。堅気ではない女を後妻にし、その女に男と逃げられ、荒物屋という商売も限界を迎える。自分はどこで道を踏み外したのか。答えのないまま年を重ね、今のゴミ屋敷に至る。

    最後弟と共に家を片付け、それが最後の仕事だったかのように老人は安らかに死ぬ。何故か他人事とは思えなかった。

  • 戦後をただ人並みに生きていたはずの男がなぜ「ゴミ屋敷の主人」として世間の好奇の目に晒され、同時に存在を無視されねばならなくなったのか。
    顔や声にモザイクを掛けられ、理不尽な苛立ちを喚き散らす化物のように思われている彼の、誰も知らない「普通の人生」を淡々と紐解く鎮魂の物語。個人的には近年ないほどの当たりだった。誰も特別ではない。幸せとはどんなものかわからない。ただ「会いたい人に会いたい」。堪らなかった。(児)

  • 戦後の雰囲気で、語られなかったことが実はたくさんある。「3丁目の夕日」のようにいいところばかり語られているが、そうじゃないこともありる。3.11のことも片付いていないまま走っている今を見ているのかもしれない。
    自分のしていることが無意味であるかもしれないということをどこかで理解している。しかしそれを認めてしまったら一切が瓦解してしまう。それが抑圧された絶望。

  • 生きることは、巡礼なんだなぁ。

  • すごく良かった。

    人間は物語(意味)の中で初めて生きることができる。

    兄と弟が再会するシーン。「兄ちゃん!」。忠市の世界を理解し、共有している者による呼びかけによって、忠市が再びこの世に生きる者となっていく展開には感動で震えた。

    締めくくりでの忠市の死。死も生の延長なんやな。

    生きるってこういうことなんやろな。その過程を見事に描ききったのではないか。

  • 「昔はあんな人じゃなかったよ」
    ゴミ屋敷に住む老人の一生。

    ゴミ集めが「無意味」な事は判っている。が、その無意味を指摘されたくなかった。

    自分が巡るあてもない場所を巡り歩いていた事。 会いたい人に会いたい。 そう思いながらの生涯はとても判る気がする。

  • ゴミ屋敷に暮らす心理に興味を持ち読んだ。
    生真面目に生きてきたのに歯車が狂ってゴミ屋敷が出来上がる心理。
    男自体は主体的にしたいことがなく、流されて生きた人生で、無意識のうちにSOSを出していたのだと感じた。最後の急展開はハッピーエンドだったのではないかと思う。
    芥川龍之介の六の宮の姫君の話が読後に浮かんだ。

  • 一人の男性の人生を通して、時代とは、家族とは、発展とは何かを問うた作品。正直「こんな締めなの?」と思いました。でも、そういうものかも知れません。人生って。

  • ゴミ屋敷の住人忠市。戦後の好景気を迎える日本で、まっとうに生きてきたはずなのに、何故ゴミにすがる晩年に落ちぶれたのか。
    人間の生き方の難しさを知る。完璧な人生などない。有り得ない。いつ災いが降りかかるか解らない。マニュアルなどない。
    最後の眠りに就くとき、自らの魂が安寧の地に向かうことができるのか?少し不安に感じた。

  • 完成度高い。構成と描写の緻密さ!

  • 分かり合えない存在は確かにいる。それなのに、ぼくは知らないうちに分かり合える大変狭い世界で生きている。まるで分かり合えないものなど存在し得ないというように。

  • 頭に思い浮かんだストーリーを完璧にほんとに完璧に文字に起こしたような小説。
    驚いた。まるっきりそこにいるような。
    しかし知ってること思ってることをきちんと書くというあくまで"技術"の話。
    最初はその綿密さに驚いたけど、終始それ。
    小説として、誰が読んでもそれ以上でも以下でもないって感想を持つんじゃないかな。
    まぁそういう力欲しいけど。

  • 人は、何かを得るために生きるのか。何かを護るために生きるのか。何かを失うために生きるのか。
    ひと時、盛んに話題になった「ゴミ屋敷」。その住人はほぼみんな口を揃えて「これはゴミじゃない」という。明らかにゴミとしか言いようのないものでさえ捨てられない、その理由は…
    主人公忠市の人生を解くことで、その理由のひとつが見つかる。
    彼がゴミを溜めることで護ろうとしたのは、その必要はなくなった、と認められない思いだったのかもしれない。

    ラストは悲しいけれど、魂は救われた、とも思う。

  • これ、すごい。

    明治生まれ、昭和戦前生まれ、高度成長期生まれの、男と女、無骨な人、器用な人、商売人、主婦、子ども、いろいろな人間の描写がすごい。
    もし映画にするなら、6時間ぐらいの映画になる(はず)。

    橋本治さんの初めて読んだが、ところどころの身体感覚に直接訴えるような描写が重い。読後の余韻の大半が登場人物たちの身体感覚。

  • ゴミ屋敷を軸に高度成長の波が色々な視点で描かれる。
    ----P192----
    その時代、「未来」というものは、やって来る前に思うものではなく、やって来られて初めて理解されるものだった。
    --------

  • 2012年2月27日読み始め 2012年3月2日読了
    近所迷惑なゴミ屋敷の住人には、実はこんな過去があったのだ…というお話です。戦後、高度成長期、そして団地化といった民衆の変化についていけなかった(いかなかった?)ある男の人生。激動の昭和を生きてきた人は勝ち組ばっかりじゃなかったんだよ、というリアル三丁目の夕日みたいなお話といえるでしょうか。
    しかし著者の思考実験的なんでしょうけど、小説というよりも、やや観念的な感じはしました。

  • 戦後期を育った主人公忠市の一生をつづったお話。

    物語初めはありふれた商家の長男だけど、後半の荒み具合がすごい。
    冒頭で書かれる現在の忠市がゴミ屋敷の主なんだから生活が荒れるのは予想できるけど、それでもある時点からの展開・忠市の変わりようが急だったと感じる。

    読み終わってもしこりが残る作品だった。話は納得できないけど、当時の生活はさすが緻密に描写されていた。

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巡礼 (新潮文庫)の作品紹介

男はなぜ、ゴミ屋敷の主になり果てたのか?いまはひとりゴミ屋敷に暮らし、周囲の住人達の非難の視線に晒される男・下山忠市。戦時中に少年時代を過ごし、昭和期日本をただまっとうに生きてきたはずの忠市は、どうして、家族も道も、見失ったのか-。誰もが顔を背けるような現在のありさまと、そこにいたるまでの遍歴を、鎮魂の光のなかに描きだす。橋本治、初の純文学長篇。

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