桜の実の熟する時 (新潮文庫)

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  • Amazon.co.jp ・本 (288ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101055046

感想・レビュー・書評

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  • 夢破れた主人公は、肉親や庇護者の恩恵を裏切りながら、文学を唯一の可能性として試みる人間に変貌してゆく。(解説より)
    若き藤村の、周りの期待とは違う道に進んで行く事に対する悩みと、女性に対する若々しい自身の心情の揺れを描いた作品。

  • 全然日本文学を読んでこなかったことに反省し、様々な日本の文豪の作品を読んでみよう!運動を自分の中でしています。
    これは記念すべき2作目で、藤村さんは『破戒』のイメージしかなかったのですが、タイトルにうんと惹かれてしまい手に取ってみました( ´ー`)今桜がとてもきれい~

    途中まで何と綺麗な自然描写、そしてたまに見える鬱屈とした主人公の心情..に感動して、一日一章ずつぐらいちょびちょび読み進めていったけど、途中から「うん、うん、うん..うん..!?」と、藤村さんの文体に着いていけなくなってしまい、何度読み返してもあまり頭に入らなくなってしまいました。最後まで雑な読みになってしまったのが何とも悔しいですが、もう一度挑戦するエネルギーが今は残っていないので、またいつか..。もう少し時代背景分かったらいいのかな~、あとちょいちょい出てくる英国詩人気になった!

  • 「岸本捨吉」三部作のうち、二番目に発表されたもの
    作中の時系列では、一作目「春」の前日談にあたる
    フランス逃亡中に執筆された

    バルザックもスタンダールもまだ日本では紹介されてなかった頃…と思う
    若き岸本捨吉はこの時代、ディズレーリのような政治家に憧れていた
    ジュリアン・ソレルやラスティニャックが目指したように
    ディズレーリもまた、未亡人に取り入って出世した
    それを真似しようとして、つまづいたらしい
    といっても別に、人妻あいてに不貞を働こうとしたわけではなく
    五つほど年上の女と少し親しくした程度のことだ
    ところが岸本捨吉は、自意識過剰な男だった
    二人の関係が、人の噂にのぼることすら耐え切れなかった
    当時流行の、キリスト教に忠実であろうとする彼にしてみれば
    それはあくまで清い交際でなければならなかったし
    また、木曽の山奥から上京してきた田舎者としては
    人の目が気になりすぎるところもあっただろう
    そのわりに、人目を忍ぶことができないほど不器用な男でもあった

    とにかくそんな風にして、一度は夢破れた岸本捨吉
    しばらく後、学校を卒業した彼は
    恩人の期待に背く形で教師になるのだが
    そこでまた生徒への恋愛感情をもてあましたあげく
    教職を放り出して旅に出てしまう
    なにかあったら逃亡するのは
    「破戒」から「新生」まで一貫したパターンとなっている
    岸本捨吉(島崎藤村)はここまで、自らを童貞だったと断言しているが
    実際のとこはどうだったかわからない
    いずれにせよ、急に旅立つ展開の脈絡のなさは
    どうにも不自然で、後年の読者からいろいろな憶測も出てきたようだ

  • 島崎藤村の青春小説で
    著者自身も年若い読者に勧めてみたいと書いています。
    主人公は捨吉という書生さん。
    地方から東京に出て来て、大学に通っています。
    明治23年から26年の藤村の体験をもとにしている自伝的小説です。

    描かれているのは100年以上前の世界。
    なので、女の人が島田髷で着物姿という描写があります。
    明治に入って西洋化としきりに叫ばれていたけれど、
    実際に人びとの生活が切り替わるのはもっと後だったんだろう
    ということがわかります。

    捨吉さんは、人生に迷っています。
    うじうじ悩んでいる描写があるわけじゃないけれど、
    大学を出た後、自分はどういう仕事をしたいのか、
    という将来像を明確に描けていないようでした。
    目の前で起こる出来事に対してこれはしてみたい、
    これはしてみたら自分には不向きだった、そんなふうに
    自分は何をしていこうというのを探している様子が描かれます。
    世話してもらった家の主人に期待をかけられましたが、
    結局はそこから外れた方向へと踏み出します。
    その踏み出した時の描写なんかは
    今のビジネス書に書いてあってもおかしくないような決意が書かれています。

    そして、心を狂わせるような恋。
    青春は桜の実のように甘酸っぱい。
    すごくきれいな小説だなぁと思いました。

    きっとちゃんと理解しようと思うと、1度読んだだけでは足りない本ですが、
    また読んでみたいと思えるような本でした。

  • 藤村は、徹底的に苦手だ。薦められてえんやこら、うんとこしょ、と読み終えはしたけれど、苦手だ。なにがこんなにだめなんだろう。時代が違う?文体が硬い?思想が理解できない?作者と私で共有するコンテクストがない?なんて、言っている私もよくわからず書き連ねているぞ。きっと、藤村氏の青春時代の思いをつづったんだろうなあ。繊細で、実直で、いささか真面目に過ぎる青春は、私にとっては興味のもてない異世界でありました。藤村、また会う日まで、ごきげんよう。

  • 青春と明治時代

  • (1997.08.21読了)(1997.08.15購入)
    内容紹介 amazon
    明治20年代に高輪台の学舎に学んでいた主人公岸本捨吉は、年上の繁子との交際に破れ、新しい生活を求めて実社会へ出て行く。しかし、そこで遭遇した勝子との恋愛にも挫折した捨吉は西京への旅に出る――。作品の行間には少年の日の幸福の象徴である桜の実にも似た甘ずっぱい懐かしさが漂い、同時に恐ろしい程に覚醒した青春の憂鬱が漂う。「春」の序曲をなす、傑れた青春文学である。

  • これもとある会で紹介したため、再読したもの。来年、「春」で映画化されるそうです。この世界とも重なるので、ちょっと楽しみにしています。

  • 若者の話。恋にせよ何にせよ、うまくいかないこともある。うまくいくこともある。

  • 「春」の少し前である時代が舞台の自伝的作品。若い時に読んで欲しいのかな?
    少ししつこい言い回し多々あります。時代が反映されているのと、藤村節と言いましょうか。どうでもい描写も多いです。頭悪いだけだと思いますが。
    青春19~21歳の青春時代がテーマなので、「春」と続けて読むと面白いです。が、「破戒」の衝撃が大きすぎたのでこれぐらいかなと

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著者プロフィール

1872年3月25日、筑摩県馬籠村(現岐阜県中津川市馬籠)に生まれる。本名島崎春樹(しまざきはるき)。生家は江戸時代、本陣、庄屋、問屋をかねた旧家。明治学院普通科卒業。卒業後「女学雑誌」に翻訳・エッセイを寄稿しはじめ、明治25年、北村透谷の評論「厭世詩家と女性」に感動し、翌年1月、雑誌「文学界」の創刊に参加。明治女学校、東北学院で教鞭をとるかたわら「文学界」で北村透谷らとともに浪漫派詩人として活躍。明治30年には第一詩集『若菜集』を刊行し、近代日本浪漫主義の代表詩人としてその文学的第一歩を踏み出した。『一葉舟』『夏草』と続刊。第四詩集『落梅集』を刊行。『千曲川旅情のうた』『椰子の実』『惜別のうた』などは一世紀を越えた今も歌い継がれている。詩人として出発した藤村は、徐々に散文に移行。明治38年に上京、翌年『破戒』を自費出版、筆一本の小説家に転身した。日本の自然主義文学を代表する作家となる。

「2023年 『女声合唱とピアノのための 銀の笛 みどりの月影』 で使われていた紹介文から引用しています。」

島崎藤村の作品

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