愛と死 (新潮文庫)

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  • Amazon.co.jp ・本 (176ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101057033

感想・レビュー・書評

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  • 主人公村岡と村岡と仲の良い野々村の妹である夏子との愛を描いた作品。
    頁を捲る度に、この愛の結末はどうなるのだろうか、出来ればハッピーエンドでと願ったが、やはり武者小路実篤はそうはしなかった。夏子の死というあまりに残酷で急な展開に多くの読者も驚かされただろう。
    題名通り、愛と死について様々な思いを巡らせることになるが、それは人生において最も尊く、最も畏怖すべきものではないかと教えてくれた作品でもあった。

  • こんなに素晴らしい作品を学校教育でなかなか取り上げられず、埋もれているのが悲しい。
    深い信仰心や、西洋文化に劣らない日本文化の美しさ、誰かを心から愛するということ、人は虚しく死ぬということ。武者小路実篤が様々な経験から得た深く広い考えが詰まった小説です。

    特に、生ける者は死せる者に対してあまりに無力であるというのはグッときました。死んでしまってから、その慰めや哀れに思う気持ちすら届かない。そのやりきれない、昇華しきれない思いを、彼なりの考えで解明しようとしています。つまり、死神によって尊い人は殺されてしまうが、その時、人間以上の神になるのだと。だから、生きている人間が慰めるにはあまりに高く、清浄すぎるのだと。その信仰心が残された自分にとって慰めの解釈となる。

    大切な人を亡くしてしまった時、様々な後悔や悲しみに暮れることがある。そんな時に、この本は私たちを慰めてくれます。

  •  古きよき時代の、直球勝負の恋愛小説です。

     武者小路実篤は、夏子の死を知らせる場面を「ああ、ついに夏子を殺してしまった」と原稿用紙に涙を零しながら書いたそうです。

     魅力に溢れる夏子のあまりに儚い命に、泣かない人はないでしょう。そこから立ち直ろうとする主人公の健気さにも。

     レヴューを書いているだけで泣けてきます。

  • 近現代文学でここまで面白いと思ったのは久しぶり。
    村岡の夏子に恋する姿も可愛いけど、夏子が村岡宛に書く手紙の恋する乙女具合といったら!!嬉し過ぎて手紙をくわえてでんぐり返ししちゃうとかいちいち可愛くて仕方がありません。
    とにかく武者小路実篤の書く人物はとにかく無邪気で一途で可愛い!

    前半から中盤にかけての愛に溢れる表現から一変して、ラストは夏子の死に野々村と村岡がふたりで泣くシーンはとっても切ない。死を見つめることで生を感じる、素晴らしい作品でした。

  • 純愛を体現したかのような作品。手紙のやり取りの場面は、読んでいるこっちまで恥ずかしくなるくらいのバカップルぶり。それが続いてただけに、あの電報の無機質な片仮名文が衝撃的だった。思わず手が止まった。救われないな……

    結局村岡さんはそれから結婚したのだろうか。いや、してないだろうな……

  • 正直つられて涙ぐむような盛り上がり方はしない。
    ただ夏子が死んだことよりもその後の寂しさだったり虚しさの方が強い。
    短いし読みやすい作品。

  • 友人の妹に恋をし、めでたく結ばれるが、彼女は主人公が西洋に行っている間にスペインかぜで命を落としてしまう…という話。

    実際自分の身にそんなことがあったら、それはもちろん悲しいだろう。
    だけど…「だから何?」といいたくなってしまいました。

    悲しみにひたって亡くなった彼女を賛美して、結局悲しみを経験した自分に酔っているだけのような作品に思えてしまいました。

    さねあつ、ごめん!
    日本文学は難しいです…。

  • 逆立ち、宙返りと活発で明るい夏子。夏子の兄・野々村の友人で小説家の村岡の恋。結婚を約束した二人。叔父の誘いで半年間のヨーロッパ留学へ出発する村岡。半年間の文通。帰国する船の中で受け取った電報。夏子の死。

     2010年7月21日読了

  • 小説家の村岡と、恋人の夏子の深い愛の物語です。とても美しい小説でした。言葉の表現も、そこから感じる登場人物たちの想いも、本当に美しい。儚く切ない物語だけれど、同時に、強さと優しさを痛いほど噛み締められるストーリーでした。現代を生きる私にとっては馴染みのない時代背景ですが、離れていても、お互いを想い合い、支え合う村岡と夏子の姿には涙を禁じ得ません。2人が交わす幾つもの手紙の文面がとても印象的でした。人生は、いつ「宙返り」するか解らないものなんです。

  • 読んでいてかなり恥ずかしいですけど、
    こういう文章を書けるのは才能だなあ、と思います。
    非常にありがちでシンプルな話ですが、
    そういうストーリーをきちっと書けて読ませることのできる作者は素晴らしいと思います。

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著者プロフィール

東京・麹町生れ。子爵家の末子。1910(明治43)年、志賀直哉らと「白樺」を創刊、「文壇の天窓」を開け放ったと称された。1918(大正7)年、宮崎県で「新しき村」のユートピア運動を実践、『幸福者』『友情』『人間万歳』等を著す。昭和初期には『井原西鶴』はじめ伝記を多作、欧米歴遊を機に美術論を執筆、自らも画を描きはじめる。戦後、一時公職追放となるが、『真理先生』で復帰後は、悠々たる脱俗の境地を貫いた。1951(昭和26)年、文化勲章受章。

「2023年 『馬鹿一』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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