学生時代 改版 (新潮文庫 く 11-1)

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  • Amazon.co.jp ・本 (263ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101058016

感想・レビュー・書評

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  • この学生時代に収録されている、受験生の手記というのをkindleで読み大変面白かったので、この短編集を買った。

    もう今では、発行されていなくてこれも昭和53年に発行されたものを中古で買った。

    自分が生まれる前からある本を手にするのはなんとも時間の流れを感じた。
    この本は私よりも長く、この世に存在していると思うと感慨深い。

    内容もどれも面白い。
    ストーリーの面白さと言うよりも、感情を読む面白さ。
    誰にでもある、人間の卑しさとかズルさをそのままストレートに表現されていて、そんな自分も許せるようになる。
    その文章の誠実さが美しい。
    美しく見せようとしない文章が美しい。

    このような、文学というのは人間を読む面白さがある。

    芥川と同時代の作家だが、あまり名前を聞いたことがない人も多いかもしれない。
    私はこの作家が大好きになった。

  • 久米正雄『学生時代』。学問恋愛に挫折してみたり劣等感罪悪感に悶々としてみたり、学生時代の鬱屈展覧会のような短編集なのだけど、文章が素直でのびのびしていて、卑屈な粘り気がまったくない。資料館で見た著者の写真の、暖かい光の湧くような微笑が重なった。 

  • 久米正雄の短編集です。いずれも学生時代をモチーフにしたものです。

    先日、教育社会史でこの本に収録されている「受験生の手記」が紹介されていたので、これが読みたくて手にとりました。

    「受験生の手記」は一高受験の話です。この時代の高等学校とは、現代の大学のことです。第一高等学校は東京大学の前身だったと思います。ちなみに八高が名古屋大学です。一高と違って人気がなかったそうですw
    また、当時は現代と受験制度が違い、旧制中学を卒業してから上京し、約半年間(多分)勉強する期間があった筈です。
    そういう歴史的背景は書かれていないので、(当時にしてみれば当然なので・・・)読む際には注意が必要です。

    浪人が今よりも冷たい目で見られる時代、主人公の気持ちを慮ると苦しいような、悲しいような…。

    「艷書」「選任」「鉄拳制裁」「密告者」「万年大学生」は人間関係というか、人に対して抱いている疚しい気持ちや罪悪感が表現されています。学生時代のあるあるです。

    「求婚者の話」は時代の隔たりを感じます。
    一目惚れした見知らぬ人にいきなり求婚とは…。

    これを読むまで、久米正雄という人を知らなかったのですが、あの芥川龍之介や菊池寛らと「新思潮」という同人雑誌を出していたんですね。
    解説で書いてありますが、芥川のような「理知的乃至神経的な鋭さも無ければ」、菊池のような「体当たり的な手強さも無かった」、でも「程好く調和された知性と感性、適度に配合された現実味と叙情味」がある…親しみやすい小説です。

    まぁ、でも、総括して…
    時代の隔たりもあると思いますが、普通の小説でした。
    ただ当時の様子を知るには最適の一冊。
    いかに当時、大学生というものが青春の象徴とされていたかがわかります。

  • 受験生の手記、母、艶書、選任、文学界、鉄拳制裁、嫌疑、競漕、復讐、密告者、求婚者の話、万年大学生、の12篇からなる短編集。
    受験の失敗や失恋の話など、負の印象の強い内容だが、在りし日の若者の生き生きとした姿が生々しく描かれている。『受験生の手記』では何年も浪人していたように書いているわりに久米正雄って一高(第一高等学校)に無試験入学してるんですよね(^^;そんで、失恋のはなしや、好いた女を恨むはなし(『復讐』など)が多いのは、久米正雄が夏目漱石の娘・筆子にフラれたから。(久米さんは漱石門下だったのです。)ウィキペディアを読むとこの人の過去って意外とヨゴレが多いみたいですね〜二度ほど盗作事件を起こしたそうだし、それでも文学界で最後まで支持され続けたのは、久米正雄独特の通俗小説、すなわちリアリズムを追究した私小説を愛する人々が数多くいたからでしょう。

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