さがしもの (新潮文庫)

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  • Amazon.co.jp ・本 (240ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101058245

感想・レビュー・書評

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  • 短編集なので一気に読めたし読みやすかった。
    本と恋愛に関連したストーリー。最後の初バレンタインはなんだかあまずっぱくて好きだったかも。

  • 何度目かの再読。
    角田光代さんの物語は何度も読みたくなる。

    本が好きな人の為の物語が
    ギュッと詰まっているような、
    そんな感じがします。

    この物語の主人公は、多分私でもあります。
    そしてあなたでもあると思います。

    「読み終えて、神さまありがとうと
    まず思った。神さま、この本が世界に
    存在することに感謝します、と。」
    という文章があります。
    幾度となくそう思える本に出会えました。
    あと何冊、出会えるんだろう。

    改題される前の
    『この本が、世界に存在することに』
    というタイトルも好きです。

    幼い頃の私にとって本屋さんは
    遊園地やテーマパークと同じくらい
    ワクワクしたものです。

    「彼と私の本棚」が特に好きです。
    自分の本棚とそっくりな本棚を持つ人に
    未だ出会えたことはありません。

    引っ越す度に、家電やベッドの次に
    まず本棚を買っていました。
    初めて一人暮らしした部屋は狭すぎて
    泣く泣く色んな本を実家に置いてきて。
    手元に持っていたい本だけダンボールに詰めて。


    「ミツザワ書店」で本が大好きな
    店主のおばあさんに、
    孫が「本のどこがそんなに面白いの」と
    聞くシーンが回想で描かれています。
    それ対するミツザワ書店のおばあさんの
    回答が好きです。

    「だってあんた、開くだけでどこへでも
    連れてってくれるものなんか、本しかないだろう」
    本当にその通りなんですよね。
    いつだって開くだけで
    その世界へ連れて行ってくれる。
    現実がどうであろうと連れて行ってくれる。

    タイトルにもなった「さがしもの」は
    何度読んでもほろほろ泣いてしまう。
    私も書店員時代に、無理難題な問い合わせに
    必死に答えてお客様の探す本を
    見つけ出して来たことがあります。
    「『天国への階段』という本が欲しい」と
    言われヒアリングし探したら結局それは
    『神様のカルテ』だったこともあります。
    学生アルバイトでしたが、社員さんに
    「よく分かったね。立派な書店員だ」と
    褒めてもらったことを思い出しました。

    今は書店員でもなければ出版関係でもない
    ただの会社員になってしまったけれど、
    通勤時間は小説を読んでいます。
    私は本からは離れられそうにありません。

    本は呼んだ年齢によって
    感じることが違う気がします。
    同じ本でも気付きが違う。

    だからこそ私は本を読むのです。

  • 本がもつパワーを感じる一冊
    本が好きな人たちの本との思い出や、不思議な出会いの話

  • 本好きでよかったと思えるような、
    本のことがますます愛おしくなるような、
    また本を読みたくなるような、
    素敵な物語です。

  • 本にまつわる九つの短編。
    同じ本を読んでも読み手によって感じ方はさまざまだろう。
    そして、話しの中にあったように同じ人間が読んでも読んだ時期や環境によって違った面が見えてくるので違う話しのように思えるかもしれない。
    本を読む楽しみを改めて教えてくれる本だった。

  • 本にまつわる短編集。9人の主人公は本と共に感受性豊かな人生を歩んでいる。私の身近には読書をする人があまりいないので、9人(9冊)にはとても親近感を抱いた。

    「旅する本」・・・コッソリ自分だけの印をつけてから古本屋で手放すことで、数年後に再会を期待できるロマンチックな発想が素敵である。古本屋に売るとき、生活費にする(高い値段で買い取ってもらう)ため、出来るだけ手垢や折り目をつけないように慎重に扱っていたが、人生を豊かにする逆転の発想だった。

    「ミツザワ書店」・・・少年時代に万引きまで手に入れた1冊に刺激され、主人公は作家として成功する。その「代金」は相当な年月の末に支払われることになるが、書店の存在が主人公の人生に与えた影響はプライスレス。書店が新しい形で受け継がれていく可能性も見え、とても爽やかな気分になった。

    何気なくとった本が、人にとってはかけがえのない人生のパートナーになりうる。でも、その重要さに気づくのは手放してからのことが多い。日本では年間7万冊以上も本が出版されているという。初めて出会ったときは簡単に入手できたのに、いざ再会しようと思うとなかなか見つからない。全9話に一貫して、人生の「さがしもの(自分の人生に影響を与えた本)」というテーマを感じとった。
    今の自分はどうだろうか。日々、新しい本に飛びついては手放しているが、学生の頃に読んだ本を今一度思い出してみると、辛うじてタイトルだけが思い浮かぶ程度であり、内容はスッカリ抜け落ちている。
    試しに二度読みをしてみると、何年も前に初めて読んだ時の場所・空間・人間関係を思い出すもので、本というのは人生の一場面を写真のように忠実に切り取ってくれるスゴイ魅力があるものだと、痛感させられる。また、年を重ねた自分自身と向き合うことで、新たな発見を得て、人生の機微を感じることができるだろう。

  • 「本」にまつわる短編集で、
    最近読書にハマりだした私にとって興味深いテーマでした

    本との関わり方は人それぞれ。

    本の内容はいつだって変わらずそこにあるはずなのに
    読むときの自分の状況によって感じ方が全く変わるのは、
    映画もドラマも音楽も、絵画も
    今生きている世界そのものも、全てに当てはまることだなぁと思いました。

    科学を学んだら日常生活に潜むあらゆる不思議の原理がわかるようになったりと、
    何かを学ぶと世界の見え方がガラリと変わることがあります
    何かを学ぶと新たな視点ができて、何も知らなかった頃の自分の感じ方はもうできなくもなります

    だからこそ、そのときそのときで自分で感じることを大切にしたい
    たくさんの経験を積むことも大切にしたい
    と、これまで大事にしてきたことをさらに大切にしようと感じます。

    「さがしもの」の中でおばあちゃんが孫に言った
    「いつだってそうさ、できごとより、考えの方が何倍もこわいんだ」
    という言葉が特に印象に残ってます

    これから先の人生、ツラいことや大変なことも含めていろんなことが起きるだろうけど、
    なにも怖いことなんてないような気持ちになれました

  • 本にまつわるいくつかの短い物語と、作者自身の想いを込めたあとがき風エッセイ一編。

    登場する本の内容はそれほど解説されずに、本を手放したこと、本を読んでいる人のこと、本のあった場所のこと、本に書かれた落書きのこと、それぞれ本を巡るエピソードが「少し不思議」風に描かれていく。
    どの物語も、「紙の本」ならではの匂いと質感が、懐かしさと愛おしさを伴って、漂ってくる。
    特に表題作の『さがしもの』では、主人公の14歳から30歳までの決して短くない期間を、「本をさがす」という視点で見事に短編として表され、「さがして」と頼んだ祖母の人生までも浮き上がってくる。

    秋晴れの中、ゆらゆらと落ちるさまを眺めながら読みつつ、自分の本にまつわる過去の出来事を思い出してみると、いつのまにかその物語もこの本に潜んでいるかも…。

  • 前読もうとした時はなかなか進まなかったのに今回はサクサク読めた。この短編集にも自分の成長や心の状態によって同じ本でも感じ方が変わるというお話があったが、わたしはそれをこの本自体に感じた。この短編集を通して感じたゆったりとした雰囲気が今のわたしにはちょうどよかったのかもしれない。


  • 本にまつわる短編集。

    読書好きな人は共感できる場面が多いのではないだろうか。

    一見、同じ本でも、読み手の心情や立場によっては特別な1冊になる。
    色々な感情や思い出をのせられる。
    値段以上の価値を持つ.
    本とはそういうものである。

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著者プロフィール

1967年神奈川県生まれ。早稲田大学第一文学部文芸科卒業。90年『幸福な遊戯』で「海燕新人文学賞」を受賞し、デビュー。96年『まどろむ夜のUFO』で、「野間文芸新人賞」、2003年『空中庭園』で「婦人公論文芸賞」、05年『対岸の彼女』で「直木賞」、07年『八日目の蝉』で「中央公論文芸賞」、11年『ツリーハウス』で「伊藤整文学賞」、12年『かなたの子』で「泉鏡花文学賞」、『紙の月』で「柴田錬三郎賞」、14年『私のなかの彼女』で「河合隼雄物語賞」、21年『源氏物語』の完全新訳で「読売文学賞」を受賞する。他の著書に、『月と雷』『坂の途中の家』『銀の夜』『タラント』、エッセイ集『世界は終わりそうにない』『月夜の散歩』等がある。

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