敦煌 (新潮文庫)

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  • Amazon.co.jp ・本 (320ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101063041

感想・レビュー・書評

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  • 中国は西域辺境の地、沙州(敦煌)。新興勢力の西夏が宋にたびたび侵攻し、吐蕃(チベット)、回鶻(ウイグル)等の周辺部族を打ち負かして勢力を拡大していった11世紀。その戦禍を逃れるために沙州の寺院から持ち出され、千仏堂の石窟に埋蔵された大量の経典。
    主人公、趙行徳の冒険譚はともかくとして、寂寥で過酷な砂漠の旅の風情と、1000年の時を越えて残されることとなった経典の運命が印象的な作品ではありました。

  • 宋代の繁華街の賑わい、西域の沙漠の砂塵、軍勢のぶつかり合う音、滅亡を前にした街の狂乱と赤い焔...。数々の場面が絵のように紙面に広がり、その世界にたっぷり浸れる事が出来た。このストーリーは主人公趙行徳の挫折から始まるが、その後偶然が積み重なった末、彼が図らずも行き着いた場所と、そこで取った行動が「高きから低きに流れるように」来たとするくだりは、言い換えれば、いかなる環境下でも人は生き甲斐を見つけられるということかもしれず、またそれはシルクロードを往来する商人や、沙漠を疾駆する軍人たちの逞しさを体現しているようにも感じた。定住型とは真逆の生活スタイルを持つ登場人物たちはそれぞれ(良かれ悪しかれ)確固たる信念を秘めており、それらが融合したり衝突したりする展開の面白さと、彼らの生き様そのものがこの小説の生命になっている。

  • 世界史を勉強していた時にたまたま読んだ本。薄い本だがストーリーは重厚で歴史ロマンを感じられる。男の生き様としても何かしら憧れる所もある。いつか行ってみたい敦煌

  • 描写される場面がとても映像的。読後感がよい。趙行徳の生き方もいいね。

  • 恥ずかしながら井上靖の小説を読むのは初めて。
    敦煌に関しては歴史的な部分がわからないと
    面白くないので結果的には今読んだのが正解かも
    しれない。
    中国は実際多民族国家でいわゆる宋とかの時代でもこの小説に出てくる夏とか結構漢民族以外の勢力が強い時代もある。
    また今あまり中国では大きな宗教ではない仏教も物語の核心で興味深かった。
    敦煌は西との交易に欠かせない都市で機会があったら行ってみたいものだと思った。

  • 史実かと思っていたのに、行徳も朱王礼も架空の人物とは…。驚いた。三国志もかじった程度だが、地名などが多少わかるだけでだいぶん読みやすかった。
    歴史物を読むと、今に至るまでの時代の連なりを感じ、今に遺産を遺してくれた人々に感謝したくなる。

  • (^.^)

  • 読み疲れた...

  • 母が自分の名前説明するのに「敦煌の『敦』に子供の『子』」と言ってたためにずっと気になっていた敦煌.
    いざ読んでみると,敦煌での話がメインではなく,最終的に敦煌に辿り着く話(また,場所名も敦煌ではなく沙州).
    話をシンプルにまとめると,
    官吏を目指していた主人公が,売られていた西夏の女を助けた.そのとき,西夏文字や西夏の人々に惹かれ,いつしか夢がその首都興慶を訪れることになった.
    話が進むたびに,徐々に世界観が広がっていく.

    時間省略をすることが多かったことで,話は冗長せず読みやすかった.

  • 子どもの頃映画化されて話題にもなっていて、いつか読みたい名作だったけど、うーん、イマイチ。説明調ばかりで、人物の気持ちに入り込めない。

    主人公の文才肌の青年が恋した異国の王女、その王女に横恋慕した部隊隊長、その女を横取りして妾にした彼らの王。女の憤死が遠因となって、やがて戦乱に。

    三国志の董卓と呂布がモデルなのかな?
    シルクロードが舞台とされているけど、あまりその描写がなくて想像しづらい。主人公も意思薄弱ではないが、周囲に流されている感じ。

    戦火のなか、大量の経典を守ろうとして敦煌岩窟のなかに隠す決断したあたりから面白くなる。
    結末を知ってから前半部を思い返すと、主人公が科挙試験に失敗したことや、売られていた異国の、命を奪われても辱めを受けない誇り高い女を救ったこと、砂漠をさすらって駱駝の列を連れていたこと、男惚れするような部隊長に仕えたこと、などすべて、この運命を匂わせる巧妙な伏線だったのか、と気づかされる。

    ただ、ちょっと自分にとっての名作ではなかった。

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著者プロフィール

井上 靖 (1907~1991)
北海道旭川生まれ。京都帝国大学を卒業後、大阪毎日新聞社に入社。1949(昭和24)年、小説『闘牛』で第22回芥川賞受賞、文壇へは1950(昭和25)年43歳デビュー。1951年に退社して以降、「天平の甍」で芸術選奨(1957年)、「おろしや国酔夢譚」で日本文学大賞(1969年)、「孔子」で野間文芸賞(1989年)など受賞作多数。1976年文化勲章を受章。現代小説、歴史小説、随筆、紀行、詩集など、創作は多岐に及び、次々と名作を産み出す。1971(昭和46)年から、約1年間にわたり、朝日新聞紙面上で連載された『星と祭』の舞台となった滋賀県湖北地域には、連載終了後も度々訪れ、仏像を守る人たちと交流を深めた。長浜市立高月図書館には「井上靖記念室」が設けられ、今も多くの人が訪れている。

「2019年 『星と祭』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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