楼蘭 (新潮文庫)

著者 :
  • 新潮社
3.55
  • (24)
  • (45)
  • (75)
  • (4)
  • (3)
本棚登録 : 506
感想 : 48
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・本 (384ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101063140

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • タクラマカン

  • シルクロード好き

  • 匈奴などの西狄の話は歴史でもなかなか出てこないので面白かったが、後半の日本の話はいらなかったな…。もっと騎馬民族や砂漠の民の歴史が読みたいなぁ。

  • 目次
    ・楼蘭
    ・洪水
    ・異域の人
    ・狼災記(ろうさいき)
    ・羅刹女国(らせつにょこく)
    ・僧伽羅国縁起(そうからこくえんぎ)
    ・宦者中行説(かんじゃちゅうこうえつ)
    ・褒姒(ほうじ)の笑い
    ・幽鬼
    ・補陀落(ほだらく)渡海記
    ・小磐梯(こばんだい)
    ・北の駅路

    表題作を読みたいと、ずっと思っていた。
    中学校の国語の教科書にスウェン・ヘディンの『さまよえる湖』が載っていて、それに関してこの作品を先生から紹介されたので。
    大きくなったら探検家になりたい!と熱い思いを抱かせるヘディンの行動を読んで、この『楼蘭』もさぞや熱い思いがあふれているのだろうと思っていたら、ノンフィクションのルポルタージュかってくらい冷静な筆致に、逆にのけ反る。

    事実を淡々と連ねる文章は、ともすれば歴史の専門書を読んでいるようで、これが小説であることを忘れてしまう。
    何百年にもわたる、ロブ湖のほとりの楼蘭という国の歴史。

    しかし、これはヘディンが発掘した楼蘭の遺跡からインスパイアされた、れっきとした小説なのだ。
    誰がこのような想いを持って行動したかなどと、どんな歴史書にも書いてはいない。
    特定の主人公がいなくても、語り手の心情が声高に言われなくても、これはあくまでも作者が創作したものがありなのだ。

    だけど、司馬遼太郎の小説でさえ、事実のように受け止めてしまう人が多い昨今、これを史実ととらえる人が多いのだろうと思う。
    次の『洪水』なども、歴史書から引っ張ってきたのかと思われるほど、具体的な記述が続く。

    でも、よく読んでみると、『洪水』に似たようなエピソードはヤマトタケルとオトタチバナヒメにもある。
    そういえば 『羅刹女国』などはセイレーンのようでもあるし。
    『狼災記』も、『山月記』の変奏曲のようである。

    『三国志』よりも古い時代の歴史。
    もう神話に片足を突っ込んでいると言っていい。
    日本の神話、インドの神話、西洋の神話。

    『宦者中行説』と『補陀落渡海記』は、年をとればとるほど沁みてくるのではないだろうか。
    『狼災記』は、『山月記』よりもなお容赦ない。
    『幽鬼』以降は日本を舞台にした作品。
    光秀を主役とした『幽鬼』を読んで、三成を主役とした尾崎士郎の『篝火』を思い出す。
    どちらも敗戦の将だが、光秀の謀反に対する腹の座らなさが際立つ。

    次は『天平の甍』を読みたい。
    時間が許せば『おろしや国粋夢譚』も。

  •  楼蘭の1つの国の趨勢、異域の人の班超の生涯、宦者中行説の匈奴で得た夢、何れも真に迫っていて、そこに西域や匈奴の風土を感じるかの様でした。班超が歿する前、故国に西域との繋がりを見、彼が「胡人」と呼ばれた描写には、彼の一生の軌跡が表れている様に思います。

     狼へと変わった陸沈康とカレ族の女が出る狼災記、羅刹の棲む島を書いた羅刹女国では、言い伝えや伝承を基にした不可思議な出来事が現実味を帯びて書かれていて惹かれました。狼災記で狼となった2人が、獣の掟に従い獣として生きる様が、人の姿を喪い人で無くなった彼等が、既に人としての生き方が出来ないのだと訴えかけて来ている様に思われました。

  • 楼蘭、洪水、宦者中行説、補陀落渡海記、のみ読了。榎本泰子「敦煌と日本人」に導かれるように。中学生から大学生ぐらいの時に何度か読んだ記憶。「楼蘭」は漢と匈奴の境界に位置し、どちらかに属せばどちらかに攻められることを繰り返したあげく、漢の指令で250マイル南に移住することに。なのに、のちになってそれを知らぬと言わぬばかりに、援助してこなくなった漢への楼蘭の人々の怒りといったら。小国ゆえに翻弄され、砂の中にあとかたもなく消えていったひとびと。「宦者中行説」は匈奴に降嫁される公主について派遣された宦官がいつの間にか匈奴の単于に心酔し、漢を打倒し匈奴を強くするための献策をしていく一編。「補陀落渡海」は、紀州の寺の僧侶が、いく人も補陀落を目指して片道切符の航海に出る話。人々もそれをありがたがり、繰り返されてきたが、その覚悟が定まらないまま渡航を迎えた僧の苦悩とのその顛末。助けてくれ、という声を聞こえなかったかのように周囲の人が再渡海をすすめていくシーンの切なさとむごたらしさと。

  • 12の短編集。多くが古代中国の歴史物語。著者の作品はジャンル幅広く、文章もしっかりして、読んでる最中でもじっくり熟読したくなる、本棚にずっと取っておきたくなる。「浪災記」、「山月記」に似ている。2021.1.22

  •  井上靖再読第二弾。敦煌ときたら次はこれだろう。短編集だが不思議なもので50年たってもよく覚えているものとほとんど覚えていないものがある。さまよえる湖ロブ・ノールの表題作は今でも印象が強いが、その他はなぜか西域ものよりも幽鬼とか補陀落渡海記の方が記憶に残っている。それはともかくいずれの作品も坦々とした筆致で間然するところがない達人の技というしかない。時代が違うのかもしれぬが、現代作家に比肩すべき人はいるのだろうか。

  • 挫折

  • ファムファタルがお好き

全48件中 11 - 20件を表示

著者プロフィール

井上 靖 (1907~1991)
北海道旭川生まれ。京都帝国大学を卒業後、大阪毎日新聞社に入社。1949(昭和24)年、小説『闘牛』で第22回芥川賞受賞、文壇へは1950(昭和25)年43歳デビュー。1951年に退社して以降、「天平の甍」で芸術選奨(1957年)、「おろしや国酔夢譚」で日本文学大賞(1969年)、「孔子」で野間文芸賞(1989年)など受賞作多数。1976年文化勲章を受章。現代小説、歴史小説、随筆、紀行、詩集など、創作は多岐に及び、次々と名作を産み出す。1971(昭和46)年から、約1年間にわたり、朝日新聞紙面上で連載された『星と祭』の舞台となった滋賀県湖北地域には、連載終了後も度々訪れ、仏像を守る人たちと交流を深めた。長浜市立高月図書館には「井上靖記念室」が設けられ、今も多くの人が訪れている。

「2019年 『星と祭』 で使われていた紹介文から引用しています。」

井上靖の作品

この本を読んでいる人は、こんな本も本棚に登録しています。

  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×