姨捨 (新潮文庫 い 7-16)

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著者 : 井上靖
  • 新潮社 (1967年9月発売)
  • Amazon.co.jp ・本 (276ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101063164

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姨捨 (新潮文庫 い 7-16)の感想・レビュー・書評

  • 『姨捨』『胡桃林』『グウドル氏の手套』『湖の中の川』『大洗の月』『孤猿』『蘆』『川の話』『湖上の兎』『俘囚』『花粉』『四つの面』の短編12編を収録。

    「棄老伝説を持つ姨捨山のイメージを作品の中心に据えて、著者の一族のなかに世襲の血として流れる<出家遁世の志>とでもいうべき現実離脱の心を探った表題作。
    ほかに、男まさりで狷介なひとりの女性の孤独な生涯を鮮やかに浮かび上がらせた『湖上の兎』、
    川に寄せる著者の愛着がにじみ出た『川の話』、
    あるいは自伝的要素の強い『グウドル氏の手套』『蘆』など、多彩な短編全12編。」(作品紹介より)

    『姨捨』は遁世の志や厭世観という言葉がぴったり。筆者やその母、妹らもそうだけれど、「本当に一人きりだけになって、一切の煩わしいことから離れ、心から、どこかの山奥へ棄てられたい」と思ったことのある人は多いんじゃないかしら。どこか共感できる感じがしました。険しい斜面を超えた姨捨山から見る月は、美しくて、孤独だけれど、一切のしがらみを断ち切った潔さが感じられそう。

    『胡桃林』は、結局他人しか頼れる者のいなくなった孤独な老婆が、唯一最愛の孫を自殺で亡くした後に車の窓硝子に顔を押し付けて泣く様子が印象的。
    『グウドル氏の手套』は、曾祖父の妾であったお婆さんの、神聖な記憶の記念碑。
    『湖の中の川』は、自分の偽物に会う旅というのが面白かったです。
    『大洗の月』は、坂本紫水と斎藤紫水の紫水ちがいだったけれど、滅びの予感を感じさせる作家と月が良いです。
    『湖上の兎』は、隣の病室で亡くなった見知らぬ女性の、烈しさと哀しさの入り混じった生涯を聞き伝えで記したもの。

    『俘囚』は、様々な噂の後、アフリカの富豪の後妻となって異国へ旅立った同級生をめぐる出来事と複雑な想いを描いた作品。大豪邸に住み豪華な宝石を身につけて現れた彼女は、陽気にはしゃいだかと思うと部屋でヒステリーを起こしたり。彼女が不幸だとも幸福だとも必ずしも言い切れないけれど、何かの「俘囚(とりこ)」になっている、でも一体何の俘囚になっているかは誰にも正確には判らない…というのが印象的でした。

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