額田女王 (新潮文庫)

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  • Amazon.co.jp ・本 (624ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101063195

感想・レビュー・書評

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  • 大海人皇子押しの自分にとって、額田女王を横取り?した中大兄皇子は強欲そのものに写ってしまいますね
    他にも嫌いな理由はありますけど…
    ただ、この作品での三角関係は、何故か三人ともいじらしく感じられていいかな

  • 額田王は主人公のわりにそんなに出てこない。
    出展・根拠があまりないからだろうけど、
    だからこそ、兄弟に愛された女として
    もっと大胆に書いてほしかった。
    かなりの消化不良。

  • 巫女として神の声を聞き、神の心を歌う額田女王。大海人皇子との間に十市皇女をもうけてからも、神の声を聞くためにその心は誰にも渡すまいと誓っているが、有間皇子や中大兄皇子への想いは結構人間的だと思う。神の心を歌うとしながら、いつしか中大兄皇子の心を歌うことに喜びを見出していくあたりも、「あなたの心は私だけが知っている」「あなただけは私の言おうとしていることわかるでしょ」的な気持ち、それを喜ぶ気持ちも、結局中大兄皇子に恋する人間の女性の気持ちに他ならない。神の嫁としての巫女的性格は、人に恋する以前の、男と関係を持つ前の乙女にこそふさわしい。そんな巫女のあり方は折口を彷彿とさせる。しかし、ある意味こじらせた?女心の書き方うまい。

  • 昔の人の呼び名はどこそこの長女などといった現代の名前の感覚から離れていると思うので、愛人にあたる人々が「額田」と呼んでいるのに不自然なものを感じながら読んだ。

    が、この時代の小説を初めて読んで、ようやく古事記や日本書紀を編纂するため詔するのが天武天皇というのが腑に落ちて私とっては架空の人物感あふれた歴史上の人物たちがかつて存在した歴史上の人物たちとなった。

    天皇の歴史は神話に満ち満ちてるからやっぱり天武天皇のせいだな。

    万葉など恋の歌を自然におおらかに読むのがこの国の素晴らしさであり、教養でもある。この時代から文学活動に女性も加わっていたというのが素晴らしい。天皇すら冒せない神事を取り仕切る女のプライド。政の駒とされながらも心だけは誰にも侵させない女の心意気。日本の女性は古い時代から一筋縄ではいかぬ。

    古の時を額田通して表現するというのも額田王が巫女だったことと一致していていとおかし。

  • 額田女王は、万葉集の歌人であり巫女でもあり、そして中大兄皇子と大海人皇子に愛された女性です。
    有名な「茜さす~」がどんな背景でうたわれたのかが知りたいな、という気持ちで読み始めたのですが、額田を中心に置きながら、この頃の頻繁な遷都の意味や、戦までの流れが分かるように書かれており、期待以上に収穫の多い本でした。
    特に、額田の登場場面と、百済を再興するために唐との戦を覚悟しながら船が出航する場面は鳥肌ものでした!

  • 久しぶりに噛み応えのある小説を読んだ感じがする。

    どちらかというと歴史とか、いわゆる社会科の内容は得意ではない。大化の改新も壬申の乱も、ギリギリ試験のための勉強をしたくらいで、とうの昔に大概のことは忘れてしまってる。井上靖さんの作品も『しろばんば』辺りは読んだけど、この作品や『天平の甍』や『敦煌』は歴史への苦手意識があって読んでなかった。『敦煌』は西田敏行さんが出た映画は見たけど・・。
    そういえば、この作品も読んでいて、『敦煌』で描かれてたような壮大な景色を連想した。映画を見ているような、鮮やかに場面が展開される感じがした。

    万葉集は好きな(興味のある)部分とか関連本を読んだりしてるんで、その部分の人物関係くらいは頭に入ってるけど、その人たちがどういう風にその時代を構成していたかは、実はそこまで気にしていなかった。まあ、詩歌の鑑賞なんて、背景を無視して純粋にその歌に向かい合って味わうこともできるから。

    それが今回、額田王、大海人皇子だけではなく、別個に鑑賞していた有間皇子についても、さまざまに入り乱れる人間模様を加味するとこんな風に読めるんだと、正直、今まで読まなかったことをちょっと後悔した。

    ちなみに、今回はなるべく丁寧に読んだ。何しろ、人物名だけでも振り仮名が外れると読めなくなる人が多いんで、メモ用紙を傍において、人物名や時代、地名等、気になったことは書きとめた。なじみのない言葉は、すぐに辞書を引き、確認した。現代ではあまり使われなくて、辞書にはちゃんと載っている言葉がこんなにあるかと驚いた。
    そうやって言葉の一つ一つを紐解いたことも、今回、じっくり楽しめた要因にもなったかもしれない。

    いや、でも今だから、ここまでじっくり読み込めた部分もあるんじゃないかという気もしている。
    去年から、私の苦手分野だった政治について自分なりに目を向けるようになってきて、ある時は憤り、ある時は胸を熱くし、そして最近は胸を痛めたりも・・。
    そういう気持ちをいろいろ味わってきたおかげで、この小説に描かれている、遠い1300年も昔のお話に、より感情移入できたこともあるんじゃないかと。もしかしたら、こういうところから逆に学べることもあるんじゃないかとも思った。

    そういう意味で、もっともっと今の人に読まれていい本だと思う。

  • 井上靖さん作品初読
    中大兄皇子、大海人皇子ふたりの兄弟天皇に愛された万葉随一の才媛、美しき歌人である額田女王
    三人を中心に、古代国家形成の動乱の世を描いた歴史小説


    好きな者と一緒になることができなくても、皇子に愛せられること、皇子の妃になることで
    皇子の愛人として、妃として生きていく覚悟をきめ、その時その時の状況に応じて寄り添おうとする
    古代史の女性の覚悟と強さに感服

    日本の古代史を舞台にしたお話しはロマンがあって好き♡

    【覚書】
    645年孝徳天皇(軽皇子) 白雉(はくち)~
    斉明天皇(寶女王(たからのおおきみ))
    (在位期間は、皇極天皇として皇極天皇元年1月15日(642年2月19日) - 4年6月14日(645年7月12日)、斉明天皇として斉明天皇元年1月3日(655年2月14日) - 7年7月24日(661年8月24日)。
    舒明天皇の皇后で、天智天皇・間人皇女(孝徳天皇の皇后)・天武天皇の母である。推古天皇から一代おいて即位した女帝(女性天皇)になる。)
    天智天皇(中大兄皇子)
    天武天皇(大海人皇子)

  • 飛鳥時代の万葉歌人、2人の天皇から愛された上になんか挑戦的な歌を詠んだすごい美人、というイメージの額田王。でもこの小説では、それだけではない額田王の姿を描いている。
    2人の男性に翻弄されたり、翻弄したりする恋多き女というイメージ、あるいは、高貴な人に求められたら拒むことのできない身分制度の中の女性の悲哀、というのでもない。もちろん、拒むことができず、奪われ、譲られ、扱われ方に自己を通すことができない悲しみはあるけれど、巫女として絶対に譲れないところを通し続ける凛とした強さが美しかった。
    王朝ロマン文学らしく美しい文体でするする読ませてとても楽しかった。

  • 2023.3.18

  • 1964年刊行.もう50年以上前の小説.
    飛鳥,奈良の時代を舞台にした小説は珍しいのではないか.
    万葉集にある額田女王の歌を里程標に,史実と作家の創作が交錯して物語はすすみ,壬申の乱で終わる.

    SDGs の今の時代になって読むと,素直な評価は難しい.万葉の時代が身近に感じられるというのは素晴らしい.しかしこれが完全に男性の視点から描かれているという批判もまた十分説得力がある.
    なんだか娯楽として楽しめないのだ,こういうのは.もう.

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著者プロフィール

井上 靖 (1907~1991)
北海道旭川生まれ。京都帝国大学を卒業後、大阪毎日新聞社に入社。1949(昭和24)年、小説『闘牛』で第22回芥川賞受賞、文壇へは1950(昭和25)年43歳デビュー。1951年に退社して以降、「天平の甍」で芸術選奨(1957年)、「おろしや国酔夢譚」で日本文学大賞(1969年)、「孔子」で野間文芸賞(1989年)など受賞作多数。1976年文化勲章を受章。現代小説、歴史小説、随筆、紀行、詩集など、創作は多岐に及び、次々と名作を産み出す。1971(昭和46)年から、約1年間にわたり、朝日新聞紙面上で連載された『星と祭』の舞台となった滋賀県湖北地域には、連載終了後も度々訪れ、仏像を守る人たちと交流を深めた。長浜市立高月図書館には「井上靖記念室」が設けられ、今も多くの人が訪れている。

「2019年 『星と祭』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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