夜の声 (新潮文庫 い 7-25)

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  • Amazon.co.jp ・本 (288ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101063256

感想・レビュー・書評

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  • ――結構衝撃でした、この本。 「ある夜主人公は、夢の中で人間の愚かさと自分に課せられた使命を神

    から告げられる。翌朝主人公は、使命感にかき立てられ、孫娘と一人の女性を連れて街を飛び出す」井上

    靖さんはどんな気持ちでこの作品を書いたんでしょうね。相変わらず文体が新鮮です。 前半は読んでて

    ちょっと憂鬱でした。人間がどんなに愚かで無責任な生き物か。そんなことばっかりなんですもん。事実

    ですけど。 でもそれだけじゃない。ここにいる孫娘のように、美しいものを美しいと感じる心を持った

    人間がいるじゃないか。 そういうことに、徐々に主人公は気付いていくんですね。 まったく自分を振

    り返らずにはいられませんでした。どうだろう。自分は濁った考え方をしていないだろうか。 読み終わ

    ってもまだ小説の中にいる感じで、しばらくそんな事を考えてました。でも結局はっきりした答えは出ま

    せんでしたけど。 重い内容なのに、ここまで清々しく書ききってしまう井上靖さん、凄いと思います。

    人の愚かさと美しさ、両方を感じさせてくれる素晴らしい作品。ありがとうございました――

著者プロフィール

井上 靖 (1907~1991)
北海道旭川生まれ。京都帝国大学を卒業後、大阪毎日新聞社に入社。1949(昭和24)年、小説『闘牛』で第22回芥川賞受賞、文壇へは1950(昭和25)年43歳デビュー。1951年に退社して以降、「天平の甍」で芸術選奨(1957年)、「おろしや国酔夢譚」で日本文学大賞(1969年)、「孔子」で野間文芸賞(1989年)など受賞作多数。1976年文化勲章を受章。現代小説、歴史小説、随筆、紀行、詩集など、創作は多岐に及び、次々と名作を産み出す。1971(昭和46)年から、約1年間にわたり、朝日新聞紙面上で連載された『星と祭』の舞台となった滋賀県湖北地域には、連載終了後も度々訪れ、仏像を守る人たちと交流を深めた。長浜市立高月図書館には「井上靖記念室」が設けられ、今も多くの人が訪れている。

「2019年 『星と祭』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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