宣告 下 (新潮文庫 か 7-16)

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  • Amazon.co.jp ・本 (496ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101067162

感想・レビュー・書評

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  • 加賀乙彦さんの作品、ブクログ登録は5冊目。

    著者、加賀乙彦さん、どのような方か、ウィキペディアで再確認しておきます。

    ---引用開始

    加賀 乙彦(かが おとひこ、男性、1929年4月22日 - 2023年1月12日)は、日本の小説家、医学者(犯罪心理学)、精神科医。勲等は旭日中綬章。学位は医学博士(東京大学・1960年)。日本芸術院会員、文化功労者。本名は小木 貞孝(こぎ さだたか)。本名でも著作がある。

    ---引用終了

    で、先頃亡くなっています。


    本作の内容は、次のとおり。

    ---引用開始

    一人の青年の精神の軌跡を通して、迷える魂の救済を追及した「感動の大作」完結!
    入獄16年目、ついに「お迎え」のきた楠本に、精神医の近木は、刑執行現場への同行の承諾を得た。その日の朝、心のなかに喜びが立ち昇るのを感じた楠本は、1年間文通を続けた女子学生・恵津子に最後の手紙を書く。「きみのおかげでぼくの死は豊かになりました。ありがとう。そして、さようなら」。一人の青年の精神の軌跡を通して、魂の救済と人間の愛を追及した感動の大作。全三巻。

    ---引用終了


    本作の死刑囚、楠本のモデルは、正田昭。
    どのような方かというと、ウィキペディアには、次のように書かれています。

    ---引用開始

    正田 昭(しょうだ あきら、1929年4月19日 - 1969年12月9日)は日本の刑死者(元死刑囚)、小説家である。

    ---引用終了


  • 構成に雑多な部分はあるものの、ページ数以上にブ厚く凄みのある作品だった。
    現行死刑制度に対する読者の考えが浮き彫りにされる構造になっていて、“殺されても仕方の無い犯罪者”という思いが根底にある自分には、確定者達に最後まで同情はし得なかった。
    ただ、下巻での確定者楠本による女子学生に宛てた100pに及ぶ文通に、作者の深い意図を感じ、
    判決後確定者は依然人間であるという事に気付かされる。
    医師の視点による最後の畳みもこれ以上無いものだった。

  • ちょっと陳腐な言い方になってしまいますが、「ものすごい」小説でした。中公新書の「死刑囚の記録」と併せて読むとなおのこと生々しく迫るものがあります。死刑に反対する人も死刑存続に賛成する人も法律を学ぶ人も犯罪心理学を学ぶ人も、この小説は必読だと思います。

  • 刑務所の中の死刑囚と看守、監獄医の日常を描き方だけでもすごいリアリティでせまってくるが、そこから死刑制度、人の生き死にについてまで広がっていく。私は死刑囚ではないが、死を受け入れるという意味では、死が明確に見えているか、遠くにぼんやり見えているか、の違いでしかない。哲学的な議論が問答で進んでいくのは王道で、そこだけ小説とは少し毛色が変わるが、個人的には、死刑囚が事件を起こすまでの半生を追っていく文章のボリュームがよかった、もっとあってもいいくらい。小説の醍醐味は、人生を描くところなんだなぁと、改めて思った。

    • nasunonasuoさん
      これはちょっと面白そうな題材だね、おれも読んでみたい。そこの境地ってすごく覗いてみたくなる。
      これはちょっと面白そうな題材だね、おれも読んでみたい。そこの境地ってすごく覗いてみたくなる。
      2017/08/28
  • 垣内(死刑囚)の独白から、
    その後主人公の楠本が死刑執行を告げられてからの、楠本の日誌(手紙?)や精神医の近木の思い…最終的な執行の様子が描かれている下巻となります。

    作者が死刑廃止論者と知っていてこちらを読みつつ、
    尚、死刑は必要とは思っていますが、
    色々な人に読んで欲しい書だと思った。


  • なんという壮大な死刑監獄の物語だろう。
    死刑について、その監獄についてわたしは何も知らなかった。分かろうとも思わなかった。まるでそこに存在していないものだった。そこには人間の生と死が最も純粋に存在する。壮絶な葛藤がある。

    この物語はいつ起こるかわからないが確実に近い将来の死、という特殊な状態の人間のライフスタイルを描く。それがとても生々しくリアルで、時にそこにいるような錯覚に陥る。下巻は、他家雄と恵津子との文通内容があり、読むうちにまるで自分が監獄にいるような気持ちになっていた。彼の文体は今までの印象とは全く違い、柔らかく優しく子供のような茶目っ気を持つ。最初はなにか嘘くさく思えたが、読み進めるうちにそれもまた彼の本心で彼自身であり、母親への嫌悪が愛に変わったことも伺えた。

    1ページづつ進めていくうちに、鼓動が早くなるのが分かる。なにか犯してはいけない罪を行う感じに似ている。もう戻れないのだと思い焦る感覚。何か重要なことを見落とすのではないかとずっと目が離せない。時が流れるのが早く、しかし凝縮された時間がそこにあった。

    わたしたちは、何か大切なものを忘れて生きているのかもしれないと思う。知らないことが多すぎる。この小説はそんなことを気づかせてくれる。

  • 死刑制度は、執行までの定めのない刑期により、死刑囚に甚大なる精神的拷問を与えるもの。もって、被害者とその家族等の限りない無念をいくらかでも払うもの。いや、刑罰が何より犯罪の抑止を求めるなら、一義的に国民すべてに対し、非情なる殺人を犯した末の恐怖を与えんとするものか。

  • 上、中、下巻と大作でした。途中飽きてしまったところもあったが、読み終えた後は読んで良かったと思った。
    死刑囚の心情のみならず、この国の死刑制度、精神医学、宗教観など盛り沢山。

  • 死刑制度というものをあらためて考えさせられた。

  • 面白い。坂口安吾の『堕落論』みたいになってきました。
    まだ、中・下巻ありますので、大事に読みます。

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著者プロフィール

1929年生れ。東大医学部卒。日本ペンクラブ名誉会員、文藝家協会・日本近代文学館理事。カトリック作家。犯罪心理学・精神医学の権威でもある。著書に『フランドルの冬』、『帰らざる夏』(谷崎潤一郎賞)、『宣告』(日本文学大賞)、『湿原』(大佛次郎賞)、『錨のない船』など多数。『永遠の都』で芸術選奨文部大臣賞を受賞、続編である『雲の都』で毎日出版文化賞特別賞を受賞した。

「2020年 『遠藤周作 神に問いかけつづける旅』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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