麦ふみクーツェ (新潮文庫)

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  • Amazon.co.jp ・本 (496ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101069227

感想・レビュー・書評

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  • 素敵な素敵な童話


    いいこと わるいこと みんなおなじさ

    大きい小さいは距離の問題

    へんてこはじぶんのわざをみがかなきゃならない

  • 小学三年生の夏、ぼくは、海辺の町に住んでいました。
    自転車や物干しの金具はあっという間にさびつくし、お世辞にも綺麗な海じゃなかったから、
    潮風のにおいは清々しいものとはあんまり言えなかったかもしれない。

    だけど、テトラポッドに登って、遠くの方を眺めていたり、
    どこかから流れ着いた得体のしれないごみなんかがテトラポッドに
    挟まっているのを観ると、空想が広がって、世界はとても広いものだ、と思ったりしていました。

    その夏は、毎日、図書館に通いつめて、司書の人に顔を覚えられるくらいに
    本を借り続けて物語の世界に浸っていました。

    本そのものとはあまり関係はないのだけれど、
    麦ふみクーツェを読むと、ぼくはそんな頃を思い出します。

    良質な物語は、その人の心の面積をほんの少し拡張してくれる気がします。

    主人公はねこと呼ばれる少年で、彼は誰よりもうまく猫の鳴き声を真似することができた。
    彼はものすごく大きな体を持っていて、母親が亡くなってしまったのも、
    大きな体の自分を産んだからだと思っています。

    彼はある日、自分にだけ聞こえる麦ふみの音を聞くことになります。
    とん、たたん、とんというリズムは物語を通して響き続けることにもなる。

    お父さんは数学の美しさにに魅せられた変わり者、
    おじいさんは吹奏楽の王様として、ティンパニを操りながら、
    港の倉庫で街の人たちの吹奏楽団の指導役をしている。

    この作品にはへんてこなひとたちばかりが登場します。
    お父さんは数字に取りつかれ、おじいさんは音楽に取りつかれている人たちだし、
    目の見えない元プロボクサー、玉虫色スーツのセールスマンや、
    色盲なのに、みどり色と名付けられた女の子などなど。

    へんてこな人たちは、そのへんてこさ故に、目立ってしまう。
    でも、へんてこさを持った人たちは、そのへんてこさを磨いていくしかないのです。
    それが、へんてこであるということに誇りを持てるたった一つのことだから。

  • いしいしんじさんの作品を読むのは初めてだったので、最初はひらがなと漢字の独特な使い方が少し読みにくいと思ったけれど、ストーリーがおもしろくてどんどん読んでしまった。読後感も爽やかでよかった。
    ただ、仲間を求めてさまよう恐竜の話はレイ・ブラッドベリにほぼ同じ設定の話があるし、全体になんとなくポール・ギャリコの「ほんものの魔法使」を思い起こさせるなど、「どっかで見たような感」は否めない気はする。

  • 体が大きく、ねこの鳴き真似の得意な「ねこ」と音楽の話。日本の作家さんなのに、翻訳のような感じのする文体。現実にファンタジーが紛れ込んでいるが、全てが優しく、違和感なく流れていく感じ。
    どこがどうおもしろいとは表現しがたいが、音や香りが目に見えるようで、ほっこりした気分になった。

  • なんだかへんてこだなぁと思う、すべての人へ

  • お話の中で書かれているへんてこさに誇りを持てる方法、なんとなくだけどわかる気がする。

  • 群れるの苦手で休憩時間にポツンと『ぶらんこ乗り』読んでたら、先輩に声をかけられて貸していただいた。
    師走のざわめきに負けず読みきれるかな…
    電話が鳴ってる。陽が翳りだす。
    外が騒がしい…

  • どうしても読み進められなくて、
    レビューを見て、最後まで読んだ方がいいんだろうな…と思いながら、
    途中でやめてしまいました。

  • 合奏は楽しい
    大変なこともあるけど、やっぱり楽しいよね!
    て気持ちになった。
    悲しかったり、切なかったりするけど、でも最後はなんだか安心する終わりだった。

  • 音楽にとりつかれた祖父と、素数にとりつかれた父と慎ましく暮らす、とびぬけて大きなからだをもつぼくの物語。

    どこか遠い国の童話かおとぎ話のようなこの世界観に最後まで入り込めなかった気がするのだが、気がつくと読み終えてた。

    正直面白かったかと言われればそうでもなく、かと言って面白くなかったかと言われればそういう訳ではない。

    なんとも不思議で難しい作品。

    終盤までは、不思議な世界の中、悲しい話で埋め尽くされるが、決してネガティブではない。

    「麦は、つぶされることで強く成長する。それで成長せずにくさってしまった種があったとしても、それは畑の肥やしになる。どんなことも、無駄だったということは何ひとつない」

    悲しい出来事や理不尽な出来事も無駄なことは何一つない、それを独特の世界観で描こうとしているのかも知れない。

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著者プロフィール

いしい しんじ:作家。1966年、大阪生まれ。京都大学文学部卒業。94年『アムステルダムの犬』でデビュー。2003年『麦ふみクーツェ』で坪田譲二文学賞、12年『ある一日』で織田作之助賞、16年『悪声』で河合隼雄物語賞を受賞。そのほか『トリツカレ男』『ぶらんこ乗り』『ポーの話』『海と山のピアノ』『げんじものがたり』など著書多数。趣味はレコード、蓄音機、歌舞伎、茶道、落語。

「2024年 『マリアさま』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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