麦ふみクーツェ (新潮文庫)

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  • Amazon.co.jp ・本 (496ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101069227

感想・レビュー・書評

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  • 「自分は周囲から浮いてる、変わり者なんだ」と悩んでいる子どもたちに、是非読んでほしい。あなたは「へんてこ」だから独りかもしれない。でも、大きくなって世界が広がれば、「へんてこ」の仲間や理解者が必ず集まってくる。そして、これまでのことはすべて繋がって、大きなことを成し遂げることができる。だから、それまで「へんてこ」なところを磨いておいてね。「ねこ」と呼ばれる主人公の男の子の成長を通して、著者はそんなふうに語りかけているのかもしれない。

  • 漢字の開き(ひらがな)が多いので
    読み切るのに少し時間がかかりました。

    前半にあるのは穏やかで停滞した世界。
    後半に訪れるのは残酷で優しい世界。

    後半に物語がどんどん加速するので、
    途中で断念してしまった人も、
    ゆっくり休み休みで良いので
    読み進めて欲しいなぁと思う作品でした。

    終盤に主人公のバックグラウンドが
    靄が晴れるように一気に明らかになっていき、
    それはそれなりに鬱蒼になる内容だけれども、
    根底には思いやる気持ちが流れているので深く沈み込むことなく、
    読後には柔らかな余韻に包まれます。

    所々散らばる一見意味不明なパーツたちが組み合わせっていく様も読みどころです。

    人生には救いのないことがままありますが、
    この作品に悲劇は数あれど、本当の悪は描かれていません。
    それが現実との境界線であり、いびつで愛おしい童話たる秘訣なのかもしれません。

  • スカーンと抜け渡る感じに震えます。圧倒的祝福の音楽、て帯の表現が的確すぎる

  • #麦ふみのいいもわるいも同じ音風吹く大工と指揮者と素数

  • 音楽に取りつかれた祖父と素数に取りつかれた父と、ねこの鳴きまねが上手い「ぼく」が3人で慎ましく暮らすというあらすじから、ほのぼのした童話を連想した。でもそうではなかった。悲劇が次々に降りかかり、それでも希望をつかもうとする話だった。この世に起きる悲劇も喜劇も些細な出来事も、実はどこかでつながっている。へんてこな存在は目立つから、真っ先に火の粉が降りかかる。だから一人でも生きて行けるように、技を磨かなければならない。抽象的で哲学的な、生きることに少し疲れた人を優しく受け入れてくれるような本だった。

  • 用務員さん、ちょうちょおじさん、先生、ねこ少年が行く町々で通じ合う人たちが魅力的。

  • 思ったよりスケールの大きな物語。
    人の死や「やみねずみ」、悪意、硬直化した心など、目を背けたいものもしっかり描かれている。

    「ねこ」と呼ばれる大柄な少年と、数学者の父、自称ティンパニ奏者の祖父。
    物語の後半はねこがそんな家族のもとを離れ、成長していく。
    そこから物語のテンポがよくなってきて、だんだん読むのが楽しくなっていった。
    そこで「クーツェ」が何者かがもわかる。

    この本は十年位前、当時十代だった知人に教えてもらった本だ。
    私もその頃読んでいたら、もっと多くのものを感じとれたかな…。

  • 読むのに時間がかかった一作。
    前半があまりに暗くて辛い。
    その分後半があったかくて幸せ

    へんてこはあつまらなくちゃ生きていけない
    へんてこさに誇りを持つためにわざを磨かなくてはならない

    この言葉で星が2つ増えた

  • 再読。体は大きいけど虚弱、猫の鳴きまねが得意で指揮者の勉強をしている「ねこ」、変わり者の数学教師のお父さん、町の楽団を指導しているお祖父ちゃん、スクラップが趣味で作曲もする用務員さん、切手収集が趣味の郵便局長さん、その妹でねこを下宿させてくれる料理上手なおばさん、盲目の元ボクサーちょうちょおじさん、その親友の盲目のチェロの先生、娘のみどり色、どのキャラクターも優しく魅力的で、本筋とは無関係なちょっとしたエピソードに、ふいに涙が出そうになる。ブラッドベリの「霧笛」を思わせる恐竜、色の名前のついた三匹の盲導犬、水夫とオウムなど、動物がらみの挿話も好き。変人のお父さんがどうしてオムレツだけ上手に作れるのか、最後の最後でわかったときにグッときました。

  • 完全な空想の世界。
    とてもあったかい想像に支えられた、不思議な世界の話です。
    色々な事に傷つきながら、色々な人に出会いちょっとずつ成長していく主人公が素敵です。
    何があっても自分なりの一定のリズムでまえに歩いていく、そんな生き方をしたいです。

著者プロフィール

いしい しんじ:作家。1966年、大阪生まれ。京都大学文学部卒業。94年『アムステルダムの犬』でデビュー。2003年『麦ふみクーツェ』で坪田譲二文学賞、12年『ある一日』で織田作之助賞、16年『悪声』で河合隼雄物語賞を受賞。そのほか『トリツカレ男』『ぶらんこ乗り』『ポーの話』『海と山のピアノ』『げんじものがたり』など著書多数。趣味はレコード、蓄音機、歌舞伎、茶道、落語。

「2024年 『マリアさま』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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