文章読本 (新潮文庫 な 8-3)

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  • Amazon.co.jp ・本 (220ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101071039

感想・レビュー・書評

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  • 生誕100年を迎へた中村真一郎。ここでは、たまたま入院中に読んだ『文章読本』を取り上げます。
    谷崎読本以来、色色な作家が『文章読本』を執筆してをりますが、丸谷才一氏は、各作家の『文章読本』は、少なくともその作家の最上のものではないと指摘してゐます。
    特に川端康成による『新文章読本』は、何だか貧弱な感じさへします。尤も、これは代作ともいはれてゐるので、川端氏の著作とするには抵抗がある人もゐるでせう。

    しかし丸谷氏は同時に、中村真一郎による本作については、(特に前半)示唆に富む内容であると述べてゐました。
    確かに目次からして、他の読本とは違ひます。
    即ち、「口語文の成立」「口語文の完成」「口語文の進展」「口語文の改革」の四章であります。
    つまり、日本に於ける「口語文」の成長の推移を概観するのでした。なるほど、丸谷氏が褒めるのが分かる筆力であります。
    その都度、例文をかなり長く引用します。実際、薄いこの書物にしては、かなり例文の分量が多いと申せませう。

    筆者本人も述べてゐるやうに、文学志望の若い人向けではなくて、極極一般的な人々に対しての文章指南となつてゐます。これは掲載誌が文芸誌ではなくて、「ミセス」といふ既婚者婦人向けの雑誌であることも関係してゐると思はれます。
    始めから文章力上達を期待せずに読むと、実に興味深い一冊であります。

    http://genjigawa.blog.fc2.com/blog-entry-759.html

  • 図書館

  • 読後に自然な日本語というものは存在しないと思わされましたね(^_^*)

  •  物書き志望者必読書その3。

     明治維新から現代にかけて、日本語の語彙や文体がいかに整備されていったか、ということが、目からウロコのボロボロ落ちるような事実の連続でつづられていて、思わずチビりそうなほど面白い。
     とはいえ、自分の文体を模索している人でないと、実用性は感じられないかもしれない。

    > 現代口語文の革新は(中略)日本の歴史を西洋の世界史につなぐものであり、物質文明の歩調にあわせて、日本の言語を改革しようとするものでありました。その恩恵をわれわれはいま深く蒙っているのであります。
     これは三島由紀夫の『文章読本』からの引用文だが、それがくわしく面白く書かれているのが、この中村真一郎版『文章読本』というわけである。

  • 井上ひさしの『自家製 文章読本』 http://booklog.jp/users/sukeki/archives/1/4101168199 で紹介されていたので読んだ。

    目次が「口語文の成立」「口語文の完成」「口語文の進展」「口語文の改革」であることからも分かるとおり、明治大正昭和期の文学者が如何に言文一致への脱皮を試みたか、その過程が豊富な引用と共に解説されている。文章を学ぶためのイロハをこの本に期待するのは間違っている。文学史解説書であり、文体の小辞典である。

  • “口語文”という概念を意識する必要もない現在、そこに至るまでの近代日本文学史。物心ついたときから口語≒文語だった人間として、単純に好き嫌いで判断していた純文学を見る目が大きく変わりそうです。

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著者プロフィール

中村真一郎(なかむら・しんいちろう)1918年、東京生まれ。東大仏文科卒。42年、福永武彦、加藤周一らと「マチネ・ポエティク」を結成し、47年、『1946文学的考察』を刊行する一方、『死の影の下に』で戦後派作家として認められる。以後、小説、詩、評論、戯曲、翻訳と多分野で活躍。王朝物語、江戸漢詩にも造詣が深い。作品に『回転木馬』、『空中庭園』、『孤独』、『四季』四部作、『頼山陽とその時代』、『蠣崎波響の生涯』他多数がある。

「2019年 『この百年の小説 人生と文学と』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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