- Amazon.co.jp ・本 (199ページ)
- / ISBN・EAN: 9784101071077
感想・レビュー・書評
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福永武彦、加藤周一とともに「マチネ・ポエティク」をつくり、日本語による押韻定型詩に挑戦した著者が、近世および近代の俳句について論じた本です。
「俳句ロココ風」と題された章では、近世の俳句が紹介されています。芥川龍之介の『芭蕉雑記』によって俳句の魅力を教えられ、「あの芥川さんの本によって、私のなかで日本の近世の特殊な詩が、世界のポエジーの領域のなかに迎え入れられる思いがしたものである」と語る著者は、「日常の情景や心理のスナップ・ショット」であるという点に俳句の魅力を認め、加舎白雄などの作者たちを「小詩人」(minor poet)と呼びます。そして、「私は近代俳句より、これらの十八世紀の小詩人たちの可愛い俳句の方が、遥かに感受性になじみやすいし、嬉しい気がする」と述べています。
一方、漱石や芥川、荷風といった近代の小説家たちの俳句を紹介している「文士と俳句」では、それらが小説家によってつくられたという点に著者のまなざしは向けられています。また「樹上豚句抄」と題された章では、主として堀辰雄との交流を振り返りつつ、著者自身の句が提出されています。
近世日本の俳句を「世界のポエジー」という観点から評価するという著者の着眼点はおもしろいのですが、普遍的な「世界文学」という枠組みに依拠した見方であるような気がしないでもありません。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
句の本意は詠んだ本人にしからからぬ。解釈は解釈する人の数だけある。そして解釈に正誤はない。読み誤っても解釈は生きる。その句から何かを感じたらその句はその価値がある。