楽隊のうさぎ (新潮文庫)

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  • 新潮社
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  • Amazon.co.jp ・本 (352ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101072319

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  • 「「君、吹奏楽部に入らないか?」「エ、スイソウガク!?」-学校にいる時間をなるべく短くしたい、引っ込み思案の中学生・克久は、入学後、ブラスバンドに入部する。先輩や友人、教師に囲まれ、全国大会を目指す毎日。少年期の多感な時期に、戸惑いながらも音楽に夢中になる克久。やがて大会の日を迎え…。忘れてませんか、伸び盛りの輝きを。親と子へエールを送る感動の物語。」

    「学校にいる時間はなるべく短くする。それが小学生のときいじめられていた克久が身に着けた知恵であ。くさいと言われたり無視されたりしたら、心を灰色に塗り固める。だが近くの公園でウサギを見つけてから、心にウサギがすみついた。澄んだ目をして、耳をピンと立てている。克久はウサギに導かれるように、中学で吹奏楽部に入学し、打楽器の担当になる。ーおびえていた少年が、背筋を伸ばし決然と歩きだす。すがすがしい風がふきぬけていくようだ。」
    (『いつか君に出会ってほしい本』田村文著 の紹介より)

  • 昔々センター試験に出題されていた記憶があり、手に取った。

    高校で吹奏楽部に所属していたがコンクールの空気感や忘れ物などよく描かれている。中学に高校生のOBが来るのはおそらく高校でも吹奏楽をやっているはずなので少し現実的ではない気がした。
    吹奏楽以外にも思春期特有の親子の難しい関係も描かれている。

    中学時代に出会いたかった本。
    いじめられていたカッチンが成長と共に強くなる姿も良かった。

    大丈夫、大学生になっても演奏会本番にタンバリンを忘れる。

  • 吹奏楽部に所属していなかったから、それぞれのパートの役割とか毎日遅くまでどんな練習をしているのかとか、大事な大会で忘れ物をして他の学校に借りるなどというのが想像できない部分があって読み込めなかった。
    主人公の克久は、とっても流されやすくて自己主張なんて出来ない性格。対して、母親と父親は自己主張が強めのようで、振る舞いに違和感を感じたが、中学生くらいになると、親より友だちと過ごす時間の方が長くなって、子どもにとって親はただの同居人になってしまうのかもしれないなと思った。

  • よかった。
    学校にいる時間をできるだけ短くしたい少年が、ひょんなことから一番活動時間の長い吹奏楽部に入ってしまう物語。ティンパニを叩いて、仲間と触れ合い、親とたまにギクシャクしながら成長していく。

  • 一年前に逃してしまった全国大会への切符を逃してしまったと言う苦しさを生かして、先輩となった克久たちが頑張っている姿を見て感動した

  • ★克久は最初の一音を(p.325)

    無感情でいられるよう心を塗り固める左官屋とゆたかな感受性のうさぎが同居している克久をはじめ登場人物たちはさまざまな個性を持つ中学生でありパーツとしての音である楽器であり最初はバラバラだったものが単調で長い練習のなかしだいに全体の音を奏でられるようになっていく。新聞連載中に(いくつかの地方紙に使われていたようですがぼくはたしか神戸新聞でだったような気がします)あるていど読んでましたがちゃんと読んどきたいとは思ってました。まぶしいです。

    ▼簡単なメモ

    【一行目】花の木公園にはうさぎが棲んでいる。

    【相田守】小学校で同じクラスだった。《クサいを相田は営利な刃物みたいに使う。》p.41
    【梓和代】トロンボーン。通称「アズモ」。
    【有木】クラリネット。克久は刺股と思った。部長になった。部長連との打ち合わせで「まあまあ」と「だから」と「それから」と「どうしよう」と「困ったね」の五つしかしゃべれない。《有木は苦情を乾いたスポンジみたいに吸い込んでしまう部長だった。》p.152
    【魚勝】魚屋のカッちゃん。克久の二歳年上で同じ保育園だった。森勉をカッコいいと言った。
    【うさぎ】花の木公園で見かけるうさぎ。いつのまにか克久のココロに棲みついた。このうさぎは生であり活発な感受性だったろう。
    【克久/かつひさ】主人公。奥田克久。市立花の木中学に入学した。小学校ではいじめられていたらしい。対抗策として《何も考えない。何も感じない。》(p.15)という方針で心のなかの左官屋が心を塗り固めた。吹奏楽部ではパーカッションに振り分けられた。彼の性分に合っていた。
    【克久の世代】なかなか言うことを聞かない強い個性の持ち主が大勢いる。ふだんの年は一人とか二人とかしかいないのだが。それ自体はブラバンにとっていいことだがコントロールは難しい。先輩たちは態度がでかいと思っていた。
    【川島】チューバ。克久は山賊のようだと思った。
    【黒木麻利亜】パーカッションの一年上の生徒。「マア」と呼ばれている。ルイジアナに行く。
    【小泉雅恵】パーカッション。祥子や克久よりすこし遅れて入部した。克久は彼女はあまり音楽が好きではないのかもと思った。あるとき部内でいじめられていると言い出したらしい。
    【左官】克久の心の中には左官がいて外部との間の壁を塗っていく。ブラバンは石を積み上げていく石工だったりする。
    【佐藤美和】コントラバス。
    【指揮棒】消耗品だが神聖なもの。
    【しょうちゃん】パーカッション。祥子。谷崎弓子と仲がいい。克久とともに打楽器パートに入った。最初からパーカッション志望で彼女がなにか叩くとあたりが明るくなる。《しょうちゃんの容姿は、人間が胸の中に隠している悪意や嫉妬を簡単に引き出してしまう》p.71
    【真剣】《うまい演奏とか深い演奏はこれからもできるけど、こんな真剣な音はきっとこれが最後だと。》p.151
    【鈴木】オーボエ。有木の次の部長。
    【瀬野良子】克久二年のときのパーカッションのパートリーダー。とてものんびりしている。
    【宗田】トランペット。克久の一年上。克久は知能犯っぽいと思った。トランペットを手にしていないときは冷静沈着。
    【田中】フルート。ピアノも弾ける。親と森勉が言い合いになって退部するかもしれない。克久と親しくなった。
    【チューバ】地の底から沸き上がる怒りのような音。
    【長井恵理】ホルン。
    【花の木中学吹奏楽部】克久入学時では二年連続で全国大会出場を果たしていたものの三年に一度あるという伝説のある深刻な部員不足に悩んでいた。学校にいる時間が最も長い生徒たち。
    【久夫】克久の父。中学生は身体を鍛えた方がよいので運動部に入るべきだとなんとなく考えている。自分はバレー部に入っていたが母親からは団体競技は他人の責任を負わねばならないからダメと言われていた。自分がバレー部だったとは誰にも言わない。
    【一人】《一人きりというのは、気持ちがいい。》p.40
    【広田】森勉の友人らしい。克久がティンパニを教えてもらう。
    【藤尾】パーカッションのリーダー。克久の適正を見抜いた? いつも背筋を伸ばして澄ましている。部員全員らお師匠さんと呼ばれている。ちょっと変人的要素があるらしい。
    【部長連】たぶん吹奏楽部の中のパートリーダーたちのことだと思う。
    【星】サックス。
    【本当】《百合子も久夫も克久も、ちょっとずつだけ、ほんとうのことを言わないでいた。》p.264
    【町屋智弘】チューバ。
    【丸川繁】パーカッション。克久の一年下。通称「マルちゃん」。
    【ミズ・スーザン】AET。本業は音楽でサックスを吹く。
    【水野良枝】トロンボーン。
    【路村】トロンボーン、ユーフォニアム。通称「ミンミン」。
    【森勉】吹奏楽部顧問。通称「ベンちゃん」。廊下をとても速く歩く。眉毛でじろりと睨む。
    【谷崎弓子/やざき・ゆみこ】克久に「おはよ」とあいさつした。
    【山村正夫】トランペット。克久と同学年。しょうちゃんと谷崎弓子と山村正夫は陽気なトリオ。
    【百合子/ゆりこ】克久の母。陶器の店を持つという夢がある。

  • みんなで音楽を作るっていいな。小学生でブラスバンドをしていた私は何もわかっていなかった。こんな風に音楽をしてみたい。打ち込めるものがあるって強い。それを共有する仲間ってのもちょっと他とは違かったりする。尊いね。大事にね。

  • 自分も学生の頃から吹奏楽部で共感できるところがたくさんあり、中学生の頃から何度も読み返していて表紙がボロボロになるほどです。

    本番の緊張感や演奏の描写がわかりやすく、文面で音が聞こえなくても演奏を聴いているようでした!

    吹奏楽部経験者はぜひ読んでほしい!!
    あと、中学や高校の現代文の問題に使われるのをよく見ます。

  • 小学校でいじめられていて、心を灰色に塗り固めるのがうまくなった克久は、中学生になり、何故かブラスバンド、吹奏楽部に入部することになる。
    子供から、少しずつ大人に成長していく。克久の心のなかで、いつのまにかウサギが踊り出す。
    少年、少女達は、全国大会で、素晴らしい音色を奏でるよう、成長していく。
    素直に、心が晴れ晴れとするいいお話です。

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著者プロフィール

中沢けい(監修)
1959年神奈川県横浜市生まれ。小説家。法政大学文学部日本文学科教授。一般社団法人K-BOOK 振興会代表理事。明治大学政治経済学部卒業。1978年第21回群像新人賞を『海を感じる時』で受賞。1985年第7回野間新人賞を『水平線上にて』で受賞。
代表作に『女ともだち』『楽隊のうさぎ』『月の桂』などがある。

「2021年 『茶をうたう 朝鮮半島のお茶文化千年』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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