金色夜叉 (新潮文庫)

著者 :
  • 新潮社
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  • Amazon.co.jp ・本 (592ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101074016

感想・レビュー・書評

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  • 和漢混合文の金字塔。
    日本語の美しさと心情の描写が、半端ない。

  • 感想というよりも「私は! この日本文学史に残る傑作を! 最初から最後まで! 読み切ったぜ!! ひゃっほう!!」という『やったぜ!』感の方が大きかった。

    流石新聞で連載をやっていただけあって、展開がスピーディかつドラマティック。名前を騙って宮が慣一を訪ねてきたのと、精神を病んだ女が火を放った部分、かつての学友に罵られるシーン、宮の姿が百合に代わるシーンが、印象深かった。

    とりあえず、慣一は『ヴェニスの商人(シェイクスピア)』を読んで欲しい。金貸しだろうとなんだろうと、人間は人間。職業に貴賤無し、という言葉は、この時代にはなかったのだろうか。

    あと、「シャイ」という言葉が出てきてびっくり。

  •  若くして両親を亡くした間貫一は、身を寄せる鴫沢家の一人娘・宮と許婚の関係にあった。しかし、ある日のカルタ会で宮を見初めた銀行家の息子・富山が宮に求婚すると、宮はそれを受け入れてしまう。熱海の海岸で宮の裏切りを知った貫一は宮を罵り足蹴にし、宮との縁を切る。人間不信に陥った貫一はその後高利貸しの手代となり、金銭のみを唯一信じる「金色夜叉」と化していった…。
     地の文は文語体、会話文は口語体という雅俗折衷の文体で描かれた尾崎紅葉の代表作。読売新聞にて明治30年から断続的に6年間連載され一世を風靡した、明治文学を代表するエンターテインメント小説である。

     予想以上に面白く、文学作品でこんなに単純に楽しめる小説は他にないように思う。そこに読み込まれたテーマ性などという小難しいことなどさて置き、ストーリーと登場人物たちの感情のぶつけ合いにハラハラ、ワクワクさせられた。まるで昼ドラを観ているかのよう。主要人物たちのキャラクターの鮮やかさ、そしてわかりやすいストーリー、現代のドラマでもヒットする要素が多く含まれており、明治の人々の趣向も現代とあまり大差ないのだなぁと感じさせられた。
     熱海で貫一が宮を足蹴にするシーンは意外にも序盤の序盤。「金色夜叉」自体が「続金色夜叉」「続続金色夜叉」「新続金色夜叉」と続くのだが、かの名シーンは「金色夜叉」の「前編」「中編」「後編」の内の「前編」の終わり。むしろそのシーンから貫一の「金色夜叉」と宮の苦悩が始まる。熱海の貫一・宮の像は最近「女性蔑視だ」などと叫ばれているそうだが、あれはどう考えても宮が悪い。蹴られて当然。しかし宮の悔悟の念にだんだんと読者が宮を許し始めてしまう作品構造も、人気を博した理由だろう。
     目次を見た時は「なんだか未練がましく続編を出していたんだなぁ」と読む前からうんざりとしていたのだが、一度読みだすともっと続きが欲しくなる。続編、続続編、新続編があることに喜びを感じ、そして著者・尾崎紅葉の死去により未完で書を閉じなければならないことに、戸惑いを覚え、心が置き去りにされる。だが一方で気付く。「金色夜叉」の舞台の幕は下りることなく、上演は続いていることに。熱海の海に浮かぶ1月17日の月は、今でもまだ、貫一の涙により曇り続けているのだ。

  • 娘に「日本文学の古典でGolden Devil」 と謎を問いかけられて考え込んで、「どのくらいの時代か教えて」と口走った直後、「わかった金色夜叉だ!」と大声を出してしまった。
    宮にしてみれば、十年も同居した貫一と夫婦になるという先の知れたコースよりも金田という横恋慕した男に興味を持つのは当たり前。貫一にしてみれば宮を諦めれば鴫沢の家代は相続できる(金田と縁戚にもなれる)というのだから悪い話ではないが《矜持》と宮への恋情が許さなかったか。「僕という夫がありながら」と責めるから既に実事はあっただろうが子は無く、金田とはすぐに子が出来たのは避妊していたのか。その辺を明治の読者はどう推察?明治30年代は資本主義の黎明期だから、金融業は資本次第、開業に追剥的人殺し的なこともあっただろう…

  • あまりに有名な明治文学の一冊。

    高校で「女に振られた男が復讐の鬼と化す」みたいな話しだと教わったはずだが、実際に読んでみると、そんな単純なものではなかった。

    復讐の話というより、「過ちと赦しの話し」と言った方が適切ではないか。

    現代人からは馴染みの薄い雅俗折衷体で書かれていて、読みにくく感じるかもしれないが、ストーリーだけつかんでいれば楽しく読めるだろう。

    本の解説で、「自分が死んだらお墓に金色夜叉の連載が載った新聞を置いてほしい」と言った女子がいると書いてあったが、現代の私たちでも完成品を読めないのは至極残念だ。

    登場人物たちの幸せを祈らずにはいられない。

    それにしても文体が魅力的だった。文体研究のため再読したい。

  • 大切な人は、失って初めてその人の大切さがわかる。

    途中の夢オチのシーンは圧巻。


    文体難しかったけど面白かった。

  • 文語体にギブアップ 勉強しなおして再チャレンジします

  • 愛と財がテーマ。宮の愛を失って非道な「金色夜叉」となってしまう主人公、貫一。対照的な狭山とお静が後半に登場する。宮と寛一や狭山とお静を見ていると金がいかに大きな力をもって人を苦しめるかということが分かるが、その大きな力をもって寛一が狭山とお静を救うことができたのもまた皮肉だ。

  • 読むのにちょっと骨がおれましたが、人物や服装、風景の描写の鮮やかさに引き込まれました。
    現代アレンジでの舞台や映画とか見てみたいきがします。

  • 「金色夜叉」尾崎紅葉著、新潮文庫、1969.11.10
    583p ¥788 C0193 (2018.04.12読了)(2018.02.06購入)(2014.06.30/49刷)
    「金色夜叉」の新聞連載開始は、1897(明治30)年1月1日、ということで、昨年で120年になります。昨年読みたかったのですが、1年ずれてしまいました。

    解説にあらすじが載っていますので、拝借しておきましょう。
    「この小説のストーリイは、明治時代の閉ざされた男女交際機関の一つの有力な窓ともいうべき正月のカルタ会で、銀行家の子、富山唯継に見染められた鴫沢宮には、許婚第一高等中学校生間貫一がいた。貫一は見よりがなく、鴫沢家に同居していた。しかし富山の宮に対する求婚を宮の両親は承知し、その償いとして貫一を将来洋行させようと云った。貫一はそれを不本意として、熱海の海岸で、宮の本心を確認しようとした。ところが意外にも宮の心も富山にかたむいていたことを知って、貫一は絶望し、その行方をくらました。貫一はすっかり金銭の鬼と化してしまい、高利貸し鰐淵直行の手代となっていた。同業の赤樫満枝に恋されたこともあったが動じない。一方、富山と結婚した宮は夫を愛しえない。貫一の親友であった豪放な荒尾譲介によって貫一の住所を確かめ詫びたが貫一はうけつけない。このように冷酷な金銭の鬼となった貫一であったが、塩原の宿で偶然富山に身請けされることを嫌い、その愛人と死のうとしている芸者をその愛情にうたれて助ける心は保っている。悔恨の宮からは詫び状がとどくが貫一は開封しようともしない。しかし、ある日、またとどいた手紙をふと開いてみると、死を願うあわれな宮の現状が記されてあった。『金色夜叉』はここで未完に終わって紅葉は完成することなく亡くなった」(578頁)
    未完以後の構想については、以下のように記されています。
    「宮は憂悶して、ついに発狂し、別家に幽せられる。本家にその妾をいれた唯継に、ついに宮は棄てられる。そこで貫一は負債に困っている旧友荒尾のため債主を探して借金を返してやり、荒尾は後でこれを知って驚くといった筋である。」(580頁)

    ・登場人物
    間貫一 高等中学、鰐淵の手代
    鴫沢宮 鴫沢隆三の娘
    富山唯継 富山銀行経営者の御曹司
    富山重平 富山銀行
    鴫沢隆三 旧農商務省勤務、宮の父親、貫一を15歳から10年ほど育てた
    赤樫権三郎 高利貸し
    赤樫満枝 権三郎の妻?、貫一にぞっこん
    鰐淵直行 高利貸し、貫一の主人
    鰐淵峯 直行の妻
    鰐淵直道 直行の息子
    田鶴見良春 子爵、鰐淵の後ろ盾
    遊佐良橘
    蒲田鉄弥 法学士
    風早庫之助 法学士
    狭山
    お静

    以下読書メモです。
    「金色夜叉」を読み始めました。
    前編を読み終わりました。
    主な登場人物
    間貫一 高等中学生
    鴫沢宮 鴫沢隆三の娘
    富山唯継 富山銀行経営者の御曹司
    「来年の今月今夜になったならば、僕の涙で必ず月は曇らして見せるから…」(80頁)という、有名なセリフが出てきました。
    なれない文章で苦戦しています。

    中編を読み終わりました。
    間貫一は、大学に入らず高利貸しである鰐淵直行のもとで、手代をしています。前編から4年が過ぎています。
    仕事熱心で、貸したお金をしつこく取り立ててかなり優秀のようです。
    高利貸しは、氷菓子と響きがよく似ているので、氷菓子の英語読み「アイスクリーム」と読み替えて、高利貸しのことをアイスと言うのだそうです。今のサラ金ですね。世の中に必要とされるものは、続いているんですね。
    (アイスクリームの意味で「氷菓」米澤穂信著、という題名の本もありますね。)

    後編を読み終わりました。
    後編で終わりかと言うと、そうではなくて、続、続々、新続が続いています。5分の3ぐらい終わったところです。
    間貫一は入院中です。色んな人が見舞いにやってきます。赤樫満枝、鰐淵直行、鴫沢隆三、等。
    宮は、何故富山唯継と結婚したのか、貫一は、何故高利貸しをやっているのか?後編でその気持ちが述べられています。
    さてこれからどう展開するのでしょうか?

    読み終わりました。7日かかりました。年齢のせいか読書スピードが落ちてきました。
    宮さんの年齢は、多分、十代半ばだと思います。両親の勧めもあり、いい生活をしてみたかったのだと思います。
    前編では、宮さんの気持ちが書かれていないので、何とももどかしい感じです。
    「金色夜叉」は、著者がなくなったために未完に終わっています。でも、なんとなく、先が見えそうなところで終わっているので、いいかな、と思います。

    【目次】
    前編
    中編
    後編
    続金色夜叉
    続続金色夜叉
    新続金色夜叉
    注解  三好行雄
    解説  福田清人

    ●宮との別れ(58頁)
    自ら穢れたりと知りて自ら穢すべきや。妻を売りて博士を買う! これ豈穢れたるの最も大なる者ならずや。
    ●来年の今月今夜(80頁)
    可いか、宮さん、一月の十七日だ。来年の今月今夜になったならば、僕の涙で必ず月は曇らして見せるから、月が……月が……月が……曇ったならば、宮さん、貫一は何処かでお前を恨んで、今夜のように泣いていると思ってくれ
    (一年後の月がどうだったかは書いていません。)
    ●人間の幸福(84頁)
    人間の幸福ばかりは決して財で買えるものじゃないよ。幸福と財とは全く別物だよ。人の幸福の第一は家内の平和だ、家内の平和は何か、夫婦が互いに深く愛すると云う外は無い。お前を深く愛する点では、富山ごときが百人寄っても到底僕の十分の一だけでも愛することはできまい、富山が財産で誇るなら、僕は彼等の夢想することも出来んこの愛情で争って見せる。夫婦の幸福は全くこの愛情の力、愛情が無ければ既に夫婦は無いのだ。
    ●金銭の方が(121頁)
    人間よりは金銭の方が夐(はる)か頼みになりますよ。頼りにならんのは人の心です!
    ●高利の術(166頁)
    凡そ高利の術たるや、渇者に水を売るなり。渇の甚だしく堪え難き者に至りては、決してその肉を割きてこれを換うるを辞せざるべし。この急に乗じてこれを売る、一杯の水もその値玉漿を盛るに異なる無し。
    ●面白い(237頁)
    お前の学問するのが面白い如く、俺は財の出来るのが面白いんじゃ。お前に本を読むのを好え加減に為い、一人前の学問が有ったらその上望む必要は有るまいと言うたら、お前は何と答える、あ。
    ●宮(255頁)
    宮は既に富むと裕なるとに饜きぬ。抑も彼がこの家に嫁ぎしは、惑い深き娘気の一図に、栄耀栄華の欲するままなる身分を願うを旨とするなりければ、始より夫の愛情の如きは、有るも善し、有らざるも更に善しと、殆ど無用の物のように軽めたりき。今やその願足りて、しかも遂に饜きたる彼は弥よ夤(まつは)らるる愛情の煩きに堪えずして、寧ろ影を追うよりも儚き昔の恋を思いて、私(ひそか)に楽しむ味あるを覚ゆるなり。
    ●哀別離苦(506頁)
    久しく住み慣れしこの世を去りて、永く返らざらんとする身には、僅かに一杯の酒に対するも、また哀別離苦の感無き能わざるなり。
    ●惚れる(554頁)
    女の惚れるには、見惚れに、気惚れに、底惚れと、こう三様有って、見惚れと云うと、ちょいと見たところで惚れこんでしまうので、これは十五六の赤襟盛りに在る事で、唯綺麗事でありさえすれば可いのですから、まるで酸いも甘いもあった者じゃないのです。それから、十七八から二十そこそこのところは、少し解って来て、生意気になりますから、顔のいいのや、扮装の奇なのなんぞには余り迷いません。気惚れと云って、様子が好いとか、気合が嬉しいとか、何とか、そんなところに目を着けるので御座いますね。
    何でも二十三四からにならなくては、心底から惚れると云う事は無いそうで。それからが本当の味が出るのだとか申しますが、そんなものかも知れません。

    ☆関連図書(連載中)
    「黄金夜界」橋本治著、読売新聞、2017.09.30より連載中(「金色夜叉」のリメイク版)
    (2018年6月11日・記)
    (「MARC」データベースより)amazon
    女に棄てられ、高利貸になって復讐する主人公貫一の恨みの生まじめさ、不器用さ。それに対する女の業、若さゆえにモノに惑わされた宮のもろさ、悔い、そして悲劇。-現代にも通じるところのある尾崎紅葉の名作「金色夜叉」。

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