恋の巣 (新潮文庫 た 15-8)

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著者 : 立原正秋
  • 新潮社 (1978年12月発売)
  • Amazon.co.jp ・本 (222ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101095080

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恋の巣 (新潮文庫 た 15-8)の感想・レビュー・書評

  • 30歳になる新劇女優の小牧梓は、62歳の尾山祐太郎という男の庇護を受けて暮らしていました。そんな彼女の前に、38歳になる小説家の秋篠弘毅という男が現われます。

    梓は、しだいに秋篠に惹かれていきますが、秋篠は彼女の情熱をはぐらかすような態度をとり続けます。そればかりか、秋篠は梓の使用人として働いている上村冨美子という女性と関係を結ぶことになります。冨美子は、夫を裏切ったことに罪悪感を抱きながらも、秋篠のことを忘れることができません。さらに、秋篠と冨美子の関係が梓に露見してしまい、梓は嫉妬に苦しむことになります。

    そんな中、梓が主演する舞台の脚本を、秋篠は書き継いでいきます。「恋の巣」というタイトルのその脚本は、梓と秋篠の関係がそのまま描かれており、最後に女主人公が自殺するというものでした。秋篠の心が理解できない梓は、自分の人生を自分自身で演じることに悩みます。じつは秋篠は、梓が劇中で自殺を選んだ女主人公の運命を超えて、女優としての才能を開花させることを目論んでいたのでした。

    梓は苦しみながらもついに劇を演じきって、「女優」としての成熟を見せるようになります。しかし彼女が選んだ道は、女主人公の選んだ「女」としての道を超えることにほかなりません。「女」よりも「女優」の道を選んだ梓に、秋篠は別れを告げることになります。

    かなりドロドロした愛憎劇かと思って読み始めましたが、むしろ梓の女優としての生き方に焦点が当てられており、おもしろく読めました。

  • 女優と女を使い分ける。
    舞台と現実を使い分ける。

    ただ、演じるだけなら誰でもできる、
    現実を生きながら舞台をいきる
    その二つを昇華させながらいきる

    自分の私生活を自分のものだけにとどめおいておくのでなく、それを公の生活あるいは仕事でも意味のあるものに生まれ変わらせてゆく。どちらに逃げることも甘えることも出来ないし、いつも自分への覚悟がいる。

    そういうことの難しさと葛藤や迷いをひたすら描きながら、最後はそこに生まれてくるその人自身からの旨味を、その明るさを示してくれたのではないかと思う。

    梓が金沢の生家の前で秋篠に呼び止められ振り返るシーンが好きだ。

    解説を読んでまたびっくり。

    作品の中に同じ「恋の巣」という舞台を登場させていること。さらには、自身の作品「剣が崎」の公演とこの作品の公演日程が重なっているとのこと。
    読者は「剣が崎」を見ても、この「恋の巣」を読んでも、これは実話だったのだろうか?と勘ぐる心を刺激される。このふたつのパラレルワールドを描き出した作者はほんとに凄いなと思う。。

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