- Amazon.co.jp ・本 (315ページ)
- / ISBN・EAN: 9784101097039
感想・レビュー・書評
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「戦争はなかった」小松左京著、新潮文庫、1974.05.25
315p ¥240 (2019.10.12読了)(2019.10.03借入)(1976.03.10/5刷)
Eテレの100分de名著「小松左京スペシャル」宮崎哲弥著、で紹介されていた
「日本沈没(上)」小松左京著、小学館文庫、2006.01.01
「日本沈没(下)」小松左京著、小学館文庫、2006.01.01
「ゴルディアスの結び目」小松左京著、角川書店、1977.06.30
「虚無回廊(Ⅰ)」小松左京著、徳間書店、1987.11.30
「虚無回廊(Ⅱ)」小松左京著、徳間書店、1987.11.30
「虚無回廊(Ⅲ)」小松左京著、ハルキ文庫、2008.10.18
を読みました。もう一冊の「地には平和を」も読みたかったのですが、図書館になかったので「地には平和を」と対比して紹介していたこの本を借りて読みました。
12の短編が収録されていますが、戦争関連のものは、「戦争はなかった」「くだんのはは」「四月の十四日間」の3作品です。
話の内容は、解説の田辺聖子さんが書いているように
「ユーモア小説あり、怪奇小説あり、評論小説あり、推理小説あり、さながら、染物屋の色見本をぶちまけたようなものである。」(312頁)
というところです。
【目次】
影が重なる時
四次元ラッキョウ
青ひげと鬼
釈迦の掌
生きている穴
完全犯罪
木静ならんと欲すれど……
失業保険
運命劇場
戦争はなかった
くだんのはは
四月の十四日間
解説 田辺聖子 1974年4月
・影が重なる時
津田、野村、ユリ子、
自分にしか見えない自分の幽霊が出た、という現象が多くの人に起きました。
「そこにあるその空間―それはもう一人の野村が占めている。そこには野村がはいりこめない。その野村がつけている衣服類も、はいりこめない。」(16頁)
多くの人は、自分の部屋で見ているのですが、主人公の津田の幽霊は、会社の玄関の真正面にいました。
幽霊現象は、電車や自動車にも起こっているらしい。
幽霊がはめている時計の時刻を確認してもらったら7時20分ということだった。
「スーパー・ノヴァ」が事故を起こした!
・四次元ラッキョウ
ボス猿〝ハゲ〟、次代のボス〝アカ〟、
いくら皮をむいても大きさのかわらないラッキョウ
地球のものではない四次元ラッキョウ
その秘密を探ろうとした実験が大変なことに!
・青ひげと鬼
弁護士、医師、美沙子、純子、青ひげ、
六人の奥様がみんな妊娠中毒でなくなった
七人目の奥さんも妊娠した。
男は新人類で、七人目の奥さんは、妊娠中毒にならずに無事に新人類の子供を産む方法を見つけた。その方法は?
・釈迦の掌
特殊機械販売店の店員は女性アンドロイド、オカモト氏、
オカモト氏は、同時に二か所に存在する事のできる方法または装置を求めている。
特殊機械販売店の店員はテレポーターを提案した。
「次元転換によって、一つの物体を、ほとんど一瞬間に、空間上のある一点から他の一点に移動させる装置です」(77頁)
オカモト氏の女房は、美貌の持ち主だった。結婚してから25年経っている。女房のおかげで社長にまで上り詰めた。完璧すぎる顔に飽きたオカモト氏は、個性的な顔のヨシコ惹かれ交際を始めた。ヨシコと夜を共に過ごしたいが夜は女房と一緒にいないといけない。
自宅の居間とヨシコの部屋の家具の配置を同じにしてテレポーターを作動させた。
オカモト氏は、両方の家で同じ会話同じ動作をすることになるので、女房には、会社の懇親会でやる芝居の練習だと言ってごまかしていたが、夫人ともヨシコと同じことをやることを思いつき実行した。
ヨシコは、お金がたまったので過去に帰るとオカモト氏に告げた。時間旅行で、この時代に出稼ぎに来たのだと言う。過去に帰って整形手術をするのだと……。
・生きている穴
小島、
小島の家の地下室に穴が……。
・完全犯罪
年老いた囚人、
老人は、色んな完全犯罪をしてきたという。
ニセ札、モナリザの像のにせもの、最後に宇宙人に地球を売り飛ばした。
代償に刑務所を作ってもらって入れてもらった…。
・木静ならんと欲すれど……
都会生活で鈍った精神に喝を入れるために家族で過疎地に引っ越した。
それを取材に来た友人が、…。
・失業保険
一定期間働くと、失業保険で暮らせる権利がもらえるという。
・運命劇場
場末の町のアパートから郊外の団地に引っ越した、親子四人。
念願の団地生活が始まったけど、通勤距離が長くなったのが難点だった。
車をもち、マイホームも考え始めた。
実験ドキュメンタリーの主役だった?
・戦争はなかった
自分以外のすべての人の記憶から大東亜戦争の記憶が消えてしまった。
歴史の本にも大東亜戦争についての記述は一切ない。
・くだんのはは
お咲さん、良夫さん、
題名は、「九段の母」ではなかった。
くだんは「件」と書く。人牛を一つにしてくだんと読ませる。(254頁)
作者は、この文字にヒントを得てこの物語を思いついたのでしょう。
阪神間大空襲のころの話です。
お咲さんは、元主人公の家で家政婦をしていた。
主人公の少年(中学三年)の家は、空襲で焼けてしまった。母と妹は疎開している。父は、会社の用事で出張しないといけないので、少年は、お咲さんが今働いているお屋敷で暮らすことになった。この屋敷には、食糧が豊富にあり、おいしい料理をたらふく食べさせてもらった。少年は離れに住まわせてもらった。母屋の二階には、子供の病人がいるそうだ。時々泣き声が聞こえる。
この家には、ラジオもないし新聞も取っていない。空襲警報が出ても逃げようとしない。
「この家には守り神がいるのです。」(245頁)
守り神の正体は?
・四月の十四日間
日本が自明党政権から社正党政権になった。デモが頻発し、アメリカ大使館を焼き討ちにした。米軍基地にデモ隊が突入した。
さらに爆撃機のない日本は、民間機(日本国際航空)をチャーターして真珠湾爆撃を行った。
誰が何のためにこのようなことを行ったのか?
この事態をどう収拾するのか?
よく考えるもんですね。風刺小説でしょうか?
☆関連図書(既読)
「小松左京スペシャル」宮崎哲弥著、NHK出版、2019.07.01
「日本沈没(上)」小松左京著、小学館文庫、2006.01.01
「日本沈没(下)」小松左京著、小学館文庫、2006.01.01
「ゴルディアスの結び目」小松左京著、角川書店、1977.06.30
「首都消失 上」小松左京著、徳間書店、1985.03.31
「首都消失 下」小松左京著、徳間書店、1985.03.31
「虚無回廊(Ⅰ)」小松左京著、徳間書店、1987.11.30
「虚無回廊(Ⅱ)」小松左京著、徳間書店、1987.11.30
「虚無回廊(Ⅲ)」小松左京著、ハルキ文庫、2008.10.18
(2019年10月15日・記)
(表紙カバーより)
ある日突然、すべての日本人の頭脳から大東亜戦争の記憶が消え去った。そもそも、あの戦争は本当にあったのか……『戦争はなかった』。壁にあいた小さな穴が次第に大きくなって、家をのみ込み、空間をのみ込んでいく『生きている穴』。都会生活から逃れ、廃村に新天地を見つけた男の顛末記『木静ならんと欲すれど……』。あらゆる分野の知識を総動員しSFの醍醐味を満喫させてくれる12編。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
私を小松左京の世界に引き込んだ作品。おどろおどろしく、陰気な素晴らしい作品群である。