白い服の男 (新潮文庫)

著者 :
  • 新潮社
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感想 : 67
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  • Amazon.co.jp ・本 (224ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101098128

感想・レビュー・書評

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  • ショートショート10編。未来もの、博士もの、宇宙ものいろいろ。

    ・業が深かった編
    「悪への挑戦」
    実際の犯罪者の追跡と断罪がエンタメになった世界。憎むべき悪を追い詰めるスリル、因果応報を実感できるカタルシスは確かに楽しい。
    それでもTVの前から呟かれる「正義が楽しくて、どうしていけないのかしら」の台詞に「ああそれ言っちゃダメなやつ!!」ってゾっとした。
    そもそも”正義”ってそれぞれの立ち位置によって変わる胡散臭いやつだし、安全な場所から何の犠牲も払わずに楽しむものじゃないし、その牙がこっち向いてこない保証なんてどこにもないし…とか思ってたら案の定な展開にあっちゃーという他なかった。そして一皮めくれば骨の髄まで商業主義。そうよね全ては皆の「見たい」「知りたい」「自分も一枚噛みたい」を叶えるため。
    ”正義”という錦の御旗の下には相手を集団で一方的にボコる快感が潜んでる。(ちなみに暴力を振るう際の万能感は思考力を著しく下げるらしい)。正義と欲望を混同する怖さと集団心理の熱狂を踏まえて考えるとタイトル「悪への挑戦」の”悪”って”流されやすい自分”とも取れて業が深いなーと思った。

  • 筒井康隆、小松左京ときたら、星新一も並べて置こうと思ってエントリーしました。『ボッコちゃん』と迷ったけど、こっちに。
    暴力を抑圧することが暴力的なんだ、とまとめてしまうと単純ですが、星新一にかかれば切れ味鋭いショートショートになります。着想とかプロット自体に真新しさはないんですが、人間の本質をついてる感じがするんですよね。書けそうで書けない、というのが星新一流ショートショート。


    ちなみに余談ですが、著作権を管理してる娘さんが他人の作品にいちゃもんつけてパクリだなんだと騒いでいたのは星新一の名に泥を塗る行為だと思いました。古い話ですけど。

  • ショートショート集…というより短編集。
    ・白い服の男
    ・月曜日の異変
    ・悪への挑戦
    ・老人と孫
    ・テレビシート加工
    ・矛盾の凶器
    ・興信所
    ・特殊大量殺人機
    ・ねぼけロボット
    ・時の渦

    全体的に狂気を含んだ感じ。
    「白い服の男」の世界観などいい感じ。

    • 猫丸(nyancomaru)さん
      今月出る、書籍未収録作品集「つぎはぎプラネット」と「真鍋博のプラネタリウム:星新一の挿絵たち」が楽しみ!
      今月出る、書籍未収録作品集「つぎはぎプラネット」と「真鍋博のプラネタリウム:星新一の挿絵たち」が楽しみ!
      2013/08/07
  • H30.08.10 読了。

    表題作『白い服の男』はショートショートというより短編。
    その分、物語として深さもあり、ブラックさも良い感じに面白い話だった。

    『老人と孫』みたいなショートショートも入っているのが良いクッションかつ、面白い。

    最後の『時の渦』は締めにふさわしいと思える不思議さとオチ。
    なんだか納得できるようなできないような。

    個人的にベストだったのは『悪への挑戦』。
    ブラックな話だけど、最後は救いもあるのがホッとした。

    全体的に読みやすいし、10編という短い編成のおかげでそれぞれがしっかりと濃厚なのがこの作品の良さだと思う。

  • 気楽に読めた短編集。

    白い服の男
    セのつく行為を禁止する社会の話。映画のリベリオンとそっくりや。

    特殊大量殺人機
    完全なる殺人機を作ってしまった話。殺人機から自分を守るのは殺人機を保有する事、核の保有による均衡を想起させられる。国より遥かに小さい組織が恐ろしい兵器を保有する世界、エゴに満ちた世界になりそうで怖い。

    時の渦
    時間の流れが止まってしまった世界でのお話。その世界で人は未来がみえず、過去を深掘り追求する。時間観念の変化が人の考え方を変えてゆく。


  • もう10編も一気読みしてしまうと、しばらく頭の中は、星新一ワールドが炸裂し続けます。どうしたらああいうストーリーが思いつくのかと、驚愕したり、尊敬したり、… 
    そして、何と言うんでしょう…… きちんと答を出しつつストーリーが進んで行くので、読んでいて不安感を抱かせない、安心できるというか。例えばヘビの短編で、ヘビがいるのかいないのか不安になって来て、ほら、こういう奴だと、最後に登場さてくる。いっきにもやもやが解消する。一般的な展開はそこまで分析、予想、推理をしてしまうと、シリツボミ的にアヤフヤになりそうなんですよね。あやふや感がない、不安感がいっきに解消。よかったです(v^-゚)

  •  読んでいて爽快感がなく、むしろ不快感・嫌悪感を抱かせるような展開で、結末も腑に落ちません。一体この作品は、何を表しているのか分かりません。
     ウィキペディアにも「星の真意は不明であるが」との記述があります。
     言葉狩りのような偽善行為を批判しているのでしょうか。
     言葉狩りを批判して一時期断筆宣言されていた筒井康隆の作品だとしたら、納得できたのかもしれません。
     そういえば「特殊大量殺人機」「老人と孫」は、筒井康隆のショートショート風ブラックな展開です。(というようなことを書くと、熱心なファンの方に「それは違う」と批判されそう。所詮私のレベルはこの程度なんです。失礼ご容赦下さい)

        
     しかしよく考えれば、「白い服の男」的展開は、実は2014年の日本で進行中なのではないかと。
     一新聞社による一つの証言の撤回によって、日本の政権及びその御用マスゴミによる、歴史的事実全てをなかったことにし・歴史を都合よく改竄しようとする試みが開始され、強力に進行中です。
     歴史教育や歴史教科書の介入から始まり、過去の政府見解まで、全てが書き換えられようとされています。
     それに呼応するかのように、大き目の書店に行けば、そういった本がコーナーを作って嫌というほど並んでいます。そのコーナーだけ日本の軍国主義独裁制を先取りしているようです。いずれはその風潮が他のコーナーに広まっていくのでしょうか。
     この苛烈な思想統制・思想弾圧は「白い服」に象徴されるのではなく、「黒い服」「灰色の服」「茶色の服」「灰色の服」「カーキ色の服」「迷彩色の服」でしょう。
     それとも、「安倍色の服」でしょうか。

     
     星新一さんが本書を執筆された時代、戦後民主主義の風潮が強かった時代だったのでしょう。
     しかし世の中の風潮は大きく変わり、本作品とは正反対の状況で「白い服の男」的状況が実現しているのではないでしょうか。
     もし今の時代星新一さんが存命であったら、もっと違った内容の作品を描かれたのかもしれません。
      http://sfkid.seesaa.net/article/407910669.html

  • 『特殊大量殺人機』各人が所有しているだけで相手を牽制できる点が面白い。

    新潮文庫版『午後の恐竜』と作品名の載せ方のレイアウトや作品の収録数に似通ったところがあるなと気付いたが、早川書房版『午後の恐竜』の後半10編を収録したから、新潮文庫版『午後の恐竜』と同じレイアウトにしたのかなと思案。

  • 過去の過ちは後世に語り継ぐべきなのか,弾圧して忘れ去らせるべきなのか.ものすごく壮大なテーマをさらっとまとめる星新一はやっぱりすごい.

  • 星新一のディストピア。
    簡潔な文章ながら、それだけに怖い。

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著者プロフィール

1926 - 1997。SF作家。生涯にわたり膨大な量の質の高い掌編小説を書き続けたことから「ショートショートの神様」とも称された。日本SFの草創期から執筆活動を行っており、日本SF作家クラブの初代会長を務めた。1968年に『妄想銀行』で日本推理作家協会賞を受賞。また、1998年には日本SF大賞特別賞を受賞している。

「2023年 『不思議の国の猫たち』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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