天国からの道 (新潮文庫)

著者 :
  • 新潮社
3.50
  • (44)
  • (83)
  • (178)
  • (13)
  • (0)
本棚登録 : 1043
感想 : 66
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・本 (288ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101098517

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • 星新一のショートショート集。まだ未収録作品がこんなにもあったなんてびっくりした。

    しかし初期の星氏の切れ味豊かなショートショートはここにはもう、ない。結構読者を突き放した形で終わる話が多く―これは後期星作品の特徴だったが―、ポイッと放り出されてどうしたものかと逡巡することが多かった。

    収録作の中で気に入ったのは表題作の『天国からの道』、『火星航路』、『収穫』、『大宣伝』、『禁断の命令』、『疑惑』あたりか。

    『天国からの道』は天使たちが二手に分かれて天国の会社を作り、死者の誘致合戦が行われ、次第にエスカレートするもの。結末は映画『マトリックス』の世界観を髣髴とさせ、ちょっとゾッとする。

    『火星航路』は火星に調査に行く男女の団体の物語。てっきり火星に行き着くまでのSF冒険ファンタジーかと思いきや、さにあらず、2ヶ月に渡る宇宙船での暮らしぶりを語る辺り、星氏独特の着想が光り、しかもラヴ・ストーリーに着地するのが意外だった。これがベストかな。

    『収穫』、『大宣伝』、『禁断の命令』、『疑惑』は初期星作品を想起させるオチもついて楽しめた作品。

    宇宙を旅する謎の生命体が集める銀色の粒の正体が実は衛星核兵器だったというアイロニーが光る『収穫』。

    社運を賭けて開発した新調味料を世間に広めるべく大宣伝作戦を打って出た結果がユニークな『大宣伝』。

    隣人のロボットを預かった男が「命令をしてはいけない」という約束を破るとどうなるかを描いた『禁断の命令』。

    霊媒を商売にすることになった男が妻の関心を惹くために行った霊媒がある疑惑をもたらすことになる『疑惑』。

    この辺は良質のショートショートだ。

    今回の特徴はいやにドライな性表現が多発すること。『平穏』と『解放の時代』がそれ。
    前者はいきなり親が性教育をし出すし―しかもアブノーマルなものも含めて―、後者は異性・同性・獣の種類を問わず、道行くたびにセックスを交わす世界の話でいささか困惑を禁じえなかった。

    あと冒頭にも述べた読者を突き放す形で物語が閉じるというのは、『つまらぬ現実』や『担当員』などを読むと物語を紡ぎすぎた結果の行く末、物語作家の視点が達観している感があり、仙人の境地にいるかのように思わせられた。

    これをどう理解するかが鍵なのだろうが、やはりまだこの境地までには自分は至っていないようだ。

  • 星新一の短編集が好きなので旅行の際に持っていった。
    面白くて、チケットを買う列な並んでいた時に読んでいたら前が進んでいた。
    話の中では天国への道が一番。

  • 『火星航路』が新鮮でした。星氏はこうゆうお話も書いていらっしゃったのですね…

  • 星新一のショート・ショート集。

    前にも書いたかもしれませんが、随分と昔にこんなことを既に書いていたんだ、というのがちらほらあって面白かったです。

    果たして星新一が卓越した眼を持っていたのか、それとも人間が変わらないだけなのか……なんて考えるだけ野暮ですね(^_^;)

  • 「解放の時代」はばかばかしくて笑えた。

  • 短編集。そのうちの1編「火星航路」が良い意味でらしくなくて面白い。きっとあなたもラブレターを書いてみたくなります。

    【九州大学】ペンネーム:たけ

  • 「禁断の実験」は好きですがそれ以外はあまり印象に残りませんでした。

  • 【出会い】
    出張用の暇つぶしに、同居人の本棚から

    【概要】
    没後の単行本未収録ショートショート集

    【感想】
    たいへん久しぶりに星新一作品を読んだ。
    さらっと楽しむにはよいし、そうさせてくれるのはさすがの手腕。

  • これまで読んできた星さんの作品は全部面白かったんですが、今作は、話によって好き嫌いが分かれた一冊。それでも夢中になって読みました。

  • きまぐれロボットから始まって、星新一を愛読していた小学生時代。当時講談社文庫から出ていたものが今新潮からでているような・・。久しぶりに読んでみて、まず冒頭で笑った。前例がない、とか言っている「役人臭を帯びてきた」天使という発想は星新一ならではのもの。官吏に悩まされた経験かな、とも。今の時代このタイプのショートショートがブクログ読者にどのくらい受け入れられているのかわからないけれど、何となく懐かしい馴染みの店に来たような安心感と、星新一らしい皮肉とひねりの効いた結末。いつ読んでも古びないためにこらされた数々の工夫と推敲を思うと、もっと知って欲しいような気持ちになる。

全66件中 1 - 10件を表示

著者プロフィール

1926 - 1997。SF作家。生涯にわたり膨大な量の質の高い掌編小説を書き続けたことから「ショートショートの神様」とも称された。日本SFの草創期から執筆活動を行っており、日本SF作家クラブの初代会長を務めた。1968年に『妄想銀行』で日本推理作家協会賞を受賞。また、1998年には日本SF大賞特別賞を受賞している。

「2023年 『不思議の国の猫たち』 で使われていた紹介文から引用しています。」

星新一の作品

  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×