二十四の瞳 (新潮文庫)

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著者 : 壺井栄
  • 新潮社 (2005年4月発売)
  • Amazon.co.jp ・本 (282ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101102016

二十四の瞳 (新潮文庫)の感想・レビュー・書評

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  • とても有名なタイトル。
    不朽の名作と謳われていながら、未読でした。
    時代は昭和初期。自立した芯のある女性と無垢な子どもたちの交流を描いた物語、だと思っていました。
    物語が進むにつれ、忍び寄る戦争の影に、この時代の空気を感じました。貧しくとも明るい、いたずらや意地悪さえも振り返れば懐かしく思えるような毎日が、「戦争」というものによって失われていく。時代の理不尽さを前に、怒るでもなければ、叫ぶでもなく、大事な教え子を慈しむ眼差しに、なんだか泣きたくなりました。

    教え子たちを戦争に取られてしまうのも切ないけれど、平和な時代を知らない自分の息子が、戦地に行きたい、名誉の戦死を誇らしいと思うのを目にするのは、どれだけ辛いことでしょうか。
    自らの命を大事にするという当たり前の価値観さえ揺らがせる、戦争というものが怖くなります。むしろ、自分を、相手を大事にするという価値観を持ち続けていては、戦争はできないのでしょうね。

    戦争は悲愴。それでいて、本書は暗くない。
    あとがきには、「壺井さんの文学にはえくぼがあった」と書かれているけれど、本当にそのとおりで、こんな辛い時代においても、明るさを失わない、人の温かみのようなものがある。これが、戦争を糾弾するような物語であったなら、こんなにも長く人々の間で読み継がれることはなかったと思います。
    戦争はよくない。
    それはもちろんのことですが、そんな時代を逞しくも生き抜いてきた私たちの祖先に想いを馳せることができる、そんな1冊でした。

  • 昭和初期、師範学校を卒業して小豆島の分教場に赴任してきた大石先生と12人の教え子との愛情あふれる物語。(文庫裏表紙説明より)

    読む前は先生と生徒の物語なのかな、と思っていたけどどちらかというと戦争のことを描きたかった作品なのかなと思いました。
    大石先生にすごく感情移入してしまいました。赴任したての大石先生の苦労や戸惑いには私も思わず「あるある」と苦笑(笑)
    子どもは生まれる家や時代を選べないんだなぁ、生まれた環境で、時代で、順応して生きていかなければならないというのは今も昔も変わらないことなのだなぁということを改めて感じました。それを、学校の先生や親含め周りの大人がしっかり理解して子どもたちを伸ばしていってあげないといけないんだなぁと思います。

    あたたかくて、さびしい物語でした。

  • 言わずと知れた不朽の名作。
    実は未読でした。
    読む前は「ヒューマニズムを前面に押し出した感動作」だとばかり思っていました。
    それは短絡的な見方です。
    面白いのです、笑えるのです。
    主人公の大石先生は一本松のある本村から、赴任先である岬のある村の分教場に自転車で通っています。
    往復16キロの道のり。
    ある日、嵐を含んだ風が頬をなぶり、大石先生は橋があればいいのにと空想します。
    海に七色のそり橋がかかります。
    45分も早く着いたものだから、
    「さあたいへんです。わたしのすがたを見た村の人たちは、いそいでとけいの針を四十五分ほどすすめるし、子どもたちときたら、見るも気のどくなほどあわてふためいて、たべかけの朝食をのどにつめ、あとはろくにたべずに家をとびだしました」
    「わたしが学校につくと、いまおきだしたばかりの男先生はおどろいて井戸ばたにかけつけ、手水をつかいはじめるし、年とったおくさんはおくさんで、ねまきも着かえるまがなく、しちりんをやけにあおぎながら、かた手でえりもとをあわせあわせ、きまりわるそうなていさいわらいをし、そっと目もとや口もとをこすりました。目のわるいおくさんは、朝おきるといつも目やにがたまっているのです……」
    吹き出しました。
    こういう思わず笑みを漏らしてしまう場面が随所にあるのですね。
    物語は前半、主人公の大石先生が初めて受け持った小学校1年生12人との、おかしくも心温まる交流が描かれます。
    でも、徐々に戦争と軍国主義が教室の中まで入ってきます。
    やがて男子は兵隊にとられ、女子も身をやつします。
    大石先生も、夫を戦争で失うなど翻弄されます。
    戦後、大石先生の歓迎会に集まった教え子は7人。
    12人のうち男子は3人が戦死、1人が失明(歓迎会には参加)、女子は1人が病死、1人は消息も知れない。
    陰惨な話にしようと思えばいくらでもできるでしょう。
    でも、読んでいて不必要に暗くならないのは、筆者の筆が明るいからです。
    それだけに逆に泣けるんですよね。
    文章は簡易平明、漢字はかなりひらがなに開かれていて、ちょっと読みにくいほど。
    小学生でも読めるでしょう。
    好戦的な発言が違和感なく受け入れられるどころか、喝采をもって迎えられる世の中です。
    「今は平時ではなく戦時なのだ」と喝破するジャーナリストもいます。
    そんな時代だからこそ、心静かに読みたい1冊です。

  • 8月も終りであります。まだまだ暑いですが、確実に夏は終焉を迎へやうとしてゐます。
    それにしても、今年はつくつく法師の鳴き声が聞こえない。
    先日、若林駅の周辺へ行く用事がありましたが、その時今年初めて鳴き声を聞きました。
    一方わたくしの住む豊田市中心部ではまだ鳴き声を確認できません。去年までは鳴いてゐたのに。なぜだ。

    毎年つくつく法師の声とともに、夏の終りを実感するのに、これでは秋を迎へることが出来ないではありませんか。
    ところで豊明市に住んでゐる中国人の友人によると、中国ではつくつく法師の鳴き声を「スキヤー、スキヤー」と表現するさうです。本当かね。他の人からの証言求む。

    『二十四の瞳』も、夏の終りに相応しい名作と申せませう。いや、わたくしが勝手に思つてゐるのですが。
    わたくしの周辺には、本作を敬遠する人が結構ゐます。喰はず嫌ひはいけません。
    さういふ人は、何か難しいことを考へてしまふのですね。単純に、物語を味はへばいいのに。その後で、いろいろと言ひたいことは言へばいいのであります。

    みなさま、頭でつかちになつては不可ません。自戒を込めて。

    http://genjigawa.blog.fc2.com/blog-entry-114.html

  • とても良い作品でした。
    あまりこのテーマの作品は苦手で好んで読まないのだけど、
    (むなしくなるなど、何とも言えない気持ちになるので…)
    ほんのり優しい雰囲気の内容でよみやすかったです。

    特に222ページからの数ページは
    ちょっとうるうるきそうになったり…

  •  教師を目指す身でありながら未読なのはいかがなものかと思い手に取った次第ですが…予想よりもはるかに素晴らしい小説でした。
     社会という荒波に巻き込まれ、翻弄されていく命。小学一年生の十二人の人生が戦争によって左右されていく様が、大石先生の教師としての濃やかな視点から語られます。悔しさ、無念さ、怒り、そして震えるような悲しみ…教師以前に人として、大石先生は社会をまっすぐ見つめ、現代の私たちにまで訴えかける。
     特にこのラストシーンはたまりません。嗚咽が止まりませんでした。

  • 時代は戦前から戦後貧しい頃。主人公である教師が小さな村に赴任してから、40歳を越えてから再び教職に就くまでの話を描いたもの。文体自体はあまり難しくなくすらすら読めるのに、いろんなことに心打たれたり強い気持ちを感じたり、盛りだくさんな印象を受けた。
    戦前から戦後間もない貧しい時代での出来事を書いているからか、登場人物の生きなければならないという強い気持ちと苦しさと日常の小さな出来事に対する喜びなどがぎゅっと詰まっている。
    主人公である先生はよく涙を流す。しかし、話によってその涙の意味は違う。はじめはわかってもらえない周りの大人への悔し涙。家の事情で、学校に通うこともできなくなったりした子供たちに対する先生のかわいそうという同情心を超えたもっと強い思いから出る涙。子供も産み、家族や教え子を失うことへの悲しみや憤り。そして、再び岬へ戻ってきたときのかつての教え子の面影への懐かしさと変化、それでも生きている姿を見た時の涙。個人的に一番心打たれたのは最初の、そういうつもりじゃないのにわかってもらえなかったときの涙(他はただ圧倒された)。いつの時代も、そういうことは頻繁にあるんだな(皆経験してることなのに、どうして自分も他の人にそう当たるのであろうか。不思議だ)。
    これを読んでも主人公が特別芯が強いとは思えない(弱いわけでもないが)。村の人に勘違いにより冷たくされれば涙を見せるし、家に帰れば母親に愚痴を言う(しかし唯一の味方になりえる存在の母も、共感してくれずそれどころか反論さえする)。夏休みも明けて今日から授業となると憂鬱になる。戦時中の貧しさは別にして、現代社会で生きる女性は多くがこのような感じではないだろうか。時代背景は違えど、下手な恋愛小説や感動ものの話なんかよりも個人的にはこの話のほうが共感できると感じた。

  • 昔、読んだことあったような・・・と思っていたけど、多分途中までしか読んでなかったのかな。12人の子どもたち、自転車、洋服のハイカラな先生、というところまでは知っていたんだけど。こんなにつらく悲しい話だったなんて。戦争は、あんな田舎の小さな村まで不幸にしてしまう。先生も、子どもたちも、不幸すぎて最後どうやって終わるのか、と思ったけど、解説にもあった「壷井栄の、明るさとえくぼ」で、キラキラ明るく終わった気がする。

  • 初めて読んだ。昭和初期の海辺の寒村の子供たちと女教員の物語。ほのぼのと描写される、日々の暮らしの中に貧困と戦争が影を落とすが、夢中に次はどうなるんだろう、と読んでいけた。
    文体も読みやすく、とても優しい気持ちになれた。

  • 大石先生と12人の生徒たち。12人の生徒たちの成長過程が描かれていて、
    子どもの頃に何度も読みました。この他にも、アンデルセンやグリムの童話、 
    椋鳩十の動物物語をよく読んでいました。

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