室生犀星詩集 (新潮文庫 (む-2-6))

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著者 : 室生犀星
  • 新潮社 (1968年5月14日発売)
  • Amazon.co.jp ・本 (280ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101103075

室生犀星詩集 (新潮文庫 (む-2-6))の感想・レビュー・書評

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  • 詩人と聞いて、どんな人物をイメージするだろう。紅顔白皙の美少年?はたまた、痩せて神経質そうな病身の男?Google画像検索によれば、室生犀星は、そのどちらにも程遠い。そして、誰よりも詩人であった。

    この詩集に収録された『けふといふ日』という詩は、一見、今日という一日のはかなさを歌っているかに見える。真夜中には、今日と明日の境目がある。十二時、時計が最後の鐘を打ったその瞬間に、今日という日は永遠に失われてしまう。地球上のどこを探しても、もう見つかりはしない。嬉しいことがあった日も、悲しいことがあった日も、遠ざかり、忘れられ、なんでもない日になっていく。それは誰にもとめることができない。ただ、時間は流れていく。一切は空虚であるかに見える。

    けれど、最後の一行をもって、その虚しさは生への駆動力に転化される。「けふ一日だけでも好く生きなければならない。」ここに、詩人の思想を見る思いがする。

    犀星という男は、強い男であった。恵まれない家庭に育ち、貧困に苦しみ、女には相手にされず。しかし彼はどんな苦境にあっても二本の足をしっかりと地につけて立ち、「われはかの室生犀星なり」と叫んだ。彼の詩に通底するのは生きることに対する覚悟であり、生への限りない賛歌である。とかく憂鬱やら哀愁やらに傾きがちな他の詩人であったなら、なかなかこうはいかないだろう、と思う。最晩年の作品である『今日といふ日』、その最後の最後にこの一行を堂々と叩きつけることのできるところが、犀星の犀星たる所以であるように思われる。

  • 情熱を持って詩を書き続け、その人生を生き抜いた人なのだというのが解った。
    生きることの暗く悲しいこと。でもそこにはユーモアもあり、愛が溢れている。
    ふるさとの時雨や雪の感じがすごく自然に心に映ってきた。
    孤独や不安や、冷たい冬に、気持ちが塞ぎそうになったら、いつでも手にとって読みたいと思う。
    編者である福永武彦さんの解説も良かったです。

  • 「詩は詩を求める熱情あるよき魂を有(も)つ人にのみ理解される・・・・・・はじめから詩について同感し得ない人や、疑義を有つ不信者らにとって、詩は存在し得ない」
    おやおや、室生犀星に私は不信者扱いされてしまった。
    さだまさし氏を彷彿させる室生犀星

  • 〇以下引用

    銀の時をうしなへる
    こころかなしや
    ちよろちよろ川の橋の上
    橋にもたれて泣いてをり



    わが霊のなかより
    緑もえいで
    なにごとしなけれど
    懺悔の涙せきあぐる
    しづかに土を掘りいでて
    ざんげの涙せきあぐる


    わが朝のすずしきこころに
    あざやかなる芽生のうすみどり
    にがかれど
    うれしや沁みきたる
    こよなきいそしみをもて
    青くしつかなる洋紙をこそのべにけれ
    そは巡礼のうたごゑをきくごとき
    わがきさらぎの哀調にして
    わかれむとするふるき都に
    とどまりもえぬ心なり
    ああ よく晴れあがりし空のもと
    わが旅のをはりにや
    小鳥すくみごゑして消えも
    ゆくなり



    麦のみどりをついと出て
    ついともどれば雪がふり
    冬のながさの草雲雀
    あくびをすれば
    木の芽吹く


    なにといふ虫かしらねど
    時計の玻璃のつめたきにはひのぼり
    つうつうと啼く
    ものいえぬむしけらものの悲しさに


    旅にいづらば
    はろばろと心うれしきもの
    旅にいづらば
    都のつかれ、めざめ行かむと
    緑を見つむるごとく唯信ず
    よしやおはれて旅すこことなりとも
    知らぬ地上に印す
    あらたなる草木とゆめと唯信ず
    神とけものと
    人間の道かぎりなければ
    ただ深く信じていそぐなりけり

    こひしや東京浅草夜のあかり
    けさから飯もたべずに
    青い顔してわがうたふ
    わがうたごゑの消えゆけば
    うたひつかれて死にしもの

    けふは浜べもうすぐもり
    びよろかもめの啼きいづる



    したたり止まぬ日のひかり
    うつうつまはる水ぐるま
    おをぞらに
    越後の山も見ゆるぞ
    さびしいぞ

    一日もの言はず
    野にいでてあゆめば
    菜種のはなは波をつくりて
    いまははや
    しんにさびしいぞ


    ひとりあつき涙をたれ
    海のなぎさにうづくまる
    なにゆえの涙ぞ青き波のむれ
    よせきたりわが額をぬらす
    みよや濡れたる砂にうつり出つ
    わがみじめなる影をいだき去り
    抱きさる波、波、哀しき波
    このながき渚にあるはわれひとり
    ああわれのみひとり
    海の青きに流れ入るごとし


    砂山に雨の消えゆく音
    草もしんしん
    海もしんしん
    こまやかなる夏のおもひも
    わが身うちにかすかなり
    草にふるれば草はまさをに
    雨にふるれば雨もまさをなり
    砂山に埋め去るものは君が名か
    かひなく過ぐる夏のおもひか
    いそ草むらはうれひの巣

  • 無骨でありながら拭えぬ喪失感を感じさせる詩人だと思う。「小景異情」の『ふるさとは遠きにありて思うもの』はすごく美しくて何度も読み返ししまった。
    「秋の終り」「人を思へど」「昨日いらしってください」が好き。

  • 初めて全詩読み切れた詩集。
    優しい言葉と少し物悲しい雰囲気が、読んでて心地よかった

  • 金沢旅行中に読んだ本 その三
    犀星は「ふるさとは遠きにありて思ふもの」を詠んだ人。情景が鮮やかに思い浮かぶ詩が多い。
    旅と季節を詠んだ詩が沁みた。お気に入りは「旅途」と「月草」。

  • 犀星の代表作は有名なフレーズ、「ふるさとは遠きにありて思ふもの/そして悲しくうたうもの」を収めた「抒情小曲集」なんだろうけど、なかなかどうして、戦後2作目に出版された『逢ひぬれば』以降から遺作となった「老いたるえびのうた」を収めた『晩年』に至るまで、なかなか読み応えがあるものが多かった。いま読むと、「抒情小曲集」などの大正期の作品は、哀切を極めた調子の良さで、口あたり良く平板な印象にとどまってしまう。むしろ汲めども汲めども尽きぬ、悲しみを地ならししたところで展開する、戦後作品の方が以前にはないような凄味と妙味の相貌を帯びて、おもしろく感じた。

  • 詩集は厭きるので好まないが、1991年頃購入。
    「故郷は遠きにありて思うもの…」の続きが気になったのと、
    幼少時の教科書記載の詩を手元に置きたかったため。
    「埃(ほこり)の中」という、通りの楽隊について歩いていた娘の、成長を思う詩。
    なんてことはない、たった8行の詩でしたが、なんとなく年月を感じて
    「逞しき埃の中に成人し」
    の、ラストの凜(りん)としたたたずまいが好きでした。

  • この人の詩、むしろ人生によこたわる「喪失感」が私をひきつけるのかもしれない。
    物心もつかないころに喪ったものをもとめつづけ、いつもどこかへ打つかりつづけている感じ。
    それは吉井和哉の歌詞とどこか通ずるものがあって、大好きです。だから室生犀星はロックンローラーです。私にとっては。

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