室生犀星詩集 (新潮文庫)

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  • Amazon.co.jp ・本 (288ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101103075

感想・レビュー・書評

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  • 著者、室生犀星さん、どのような方かというと、ウィキペディアには次のように書かれています。

    室生 犀星(むろう さいせい、本名: 室生 照道〈てるみち〉、1889年〈明治22年〉8月1日 - 1962年〈昭和37年〉3月26日)は、日本の詩人・小説家。別号に「魚眠洞」、「魚生」、「殘花」、「照文」。石川県金沢市生まれ。別筆名に「秋本健之」。

    で、今回手にした、『室生犀星詩集』の内容は、次のとおり。(コピペです)

    “愛と土とを踏むことはうれしい"生後間もなく生母の懐ろを離れ、貧しい養家で育てられた犀星は、一人の生活人として自ら苦しみ、自ら求め、その感情を詩に託して赤裸々に告白し続けた。短い詩型に凝縮された抒情は、口語と文語との融和の上に生れた独特のリズムに乗って、詩を愛する人の心に静かに沁み入る。生涯に公刊された24冊の詩集から代表的な作品187編を収める。

    17ページに書かれた詩の一節。

    ふるさとは遠きにありて思ふもの
    そして悲しくうたふもの

    ここは有名ですね。

  • 室生犀星の詩をしっかりまとめて読んだのははじめてかもしれない。
    健全潔癖な、生まれたての無垢な自然主義的ヒューマニズムが苦手な私には、室生犀星はとっつきにくい文学者だなんて、そんな先入観があったから。それは半分は当たっていて半分は間違っていた。

    解説で編者の福永武彦が書いているように、犀星は武者小路実篤みたいな「楽天的自然主義」とはあきらかに距離を置いている。ひねた自虐表現のような、まっすぐ実直ながらやはりペーソスと言わざるを得ないような、そんな苦みが彼の詩にはあって、しかもそれが年経るにしたがって良い感じに熟成されていく。

    若い頃の詩より、私はだんぜん晩年の詩のほうが好き。たぶん、50年前のひとならそうは言うまいが。

  • 室生犀星は言葉がぶきっちょでガタゴトしている。そこに時折胸を締め付けるような情感が現れる。「現在」がどんどん過ぎ去って過去になることへの郷愁。

  • 昨年の金沢旅行にもっていった読んだ一冊。
    『五月』『みやこへ』『かもめ』が特に好き。室生犀星が愛した故郷の情景が豊かに綴られていて、金沢という街が何割増しにも素敵に感じられました。
    元日の能登半島地震による被害は甚大な爪痕を残していったけれど、一刻も早い復興を願うばかりです。必ずまた訪れたい。

  • なんと優しい心の持ち主かと思う。小さな命や自然への憧憬に溢れた作品が多い。
    私の好きな作品をあげたい。
    小景異情
    三月
    寂しき春
    青き魚を釣る人
    凍えたる魚
    夕の歌
    燃える

    高麗の花
    野の花

  • 酣燈社が出てこなかったのでとりあえず

    なんだか酷く大人びた悲しさだなと胸が痛くなりながら、また、美化されていない等身大の自然や故郷の美しさにこころ震わせながら読みすすめた。

    漫画「月に吠えらんねえ」で、友人たちがそれぞれの見方で風景を眺めている中、犀はただありのままの風景を目にしていた。世界の形をそのままに見ていた。
    その表現が限りなく室生犀星像に近接していて、凄いなあとただおもった。

    序文で、詩作が何の足しになったのかと書いている。それがマイナスな思いからくる言葉だったのか、私には量りかねる。

  • 詩を書くことは、孤独と向き合う作業だなと思う。「永日」という詩が心に残った。

  • 情熱を持って詩を書き続け、その人生を生き抜いた人なのだというのが解った。
    生きることの暗く悲しいこと。でもそこにはユーモアもあり、愛が溢れている。
    ふるさとの時雨や雪の感じがすごく自然に心に映ってきた。
    孤独や不安や、冷たい冬に、気持ちが塞ぎそうになったら、いつでも手にとって読みたいと思う。
    編者である福永武彦さんの解説も良かったです。

  • 詩人と聞いて、どんな人物をイメージするだろう。紅顔白皙の美少年?はたまた、痩せて神経質そうな病身の男?Google画像検索によれば、室生犀星は、そのどちらにも程遠い。そして、誰よりも詩人であった。

    この詩集に収録された『けふといふ日』という詩は、一見、今日という一日のはかなさを歌っているかに見える。真夜中には、今日と明日の境目がある。十二時、時計が最後の鐘を打ったその瞬間に、今日という日は永遠に失われてしまう。地球上のどこを探しても、もう見つかりはしない。嬉しいことがあった日も、悲しいことがあった日も、遠ざかり、忘れられ、なんでもない日になっていく。それは誰にもとめることができない。ただ、時間は流れていく。一切は空虚であるかに見える。

    けれど、最後の一行をもって、その虚しさは生への駆動力に転化される。「けふ一日だけでも好く生きなければならない。」ここに、詩人の思想を見る思いがする。

    犀星という男は、強い男であった。恵まれない家庭に育ち、貧困に苦しみ、女には相手にされず。しかし彼はどんな苦境にあっても二本の足をしっかりと地につけて立ち、「われはかの室生犀星なり」と叫んだ。彼の詩に通底するのは生きることに対する覚悟であり、生への限りない賛歌である。とかく憂鬱やら哀愁やらに傾きがちな他の詩人であったなら、なかなかこうはいかないだろう、と思う。最晩年の作品である『今日といふ日』、その最後の最後にこの一行を堂々と叩きつけることのできるところが、犀星の犀星たる所以であるように思われる。

    • 抽斗さん
      私は詩を読むのがとても下手で、そのせいか詩集はほとんど読まないのですが、ratsさん の感想を読んで室生犀星という「人」を読んでみたいなぁ、...
      私は詩を読むのがとても下手で、そのせいか詩集はほとんど読まないのですが、ratsさん の感想を読んで室生犀星という「人」を読んでみたいなぁ、と思いました。
      2012/12/01
    • ratsさん
      詩に興味を持ったのは私もここ数年のことで、気ままに、少しずつ読んでいます。犀星は今どきの本屋さんになかなか置いていなくて、もっといろんな人に...
      詩に興味を持ったのは私もここ数年のことで、気ままに、少しずつ読んでいます。犀星は今どきの本屋さんになかなか置いていなくて、もっといろんな人に知ってもらえたらなぁと思いつつこのレビューを書きました。抽斗さんのコメント、とても嬉しいです。
      2012/12/06
  • 初版は昭和43年と長く発行され、私の手元にあるのは46版。
    本当にたくさんの方々が知り、読み、手にしたのだと思う、
    彼のその言葉の世界をぎゅっと綴じ込めた187篇。

    どこか粗野にも感じる言葉の端々にも、
    煌めきがあるようで。
    断片的に触れる彼の世界は、
    リズムを感じる、言葉の連なりが心地よい。

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著者プロフィール

詩:詩人・小説家。本名、照道。金沢生まれ。北原白秋・萩原朔太郎らと交わり、抒情詩人として知られた。のち小説に転じ、野性的な人間追及と感覚的描写で一家を成す。「愛の詩集」「幼年時代」「あにいもうと」「杏つ子」など。


「2013年 『児童合唱とピアノのための 生きもののうた』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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